転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

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第一章 魔法士学校編

第十二話 ベガとアトリア

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 目が覚めると俺は二段ベッドの下の方に横になっていた。

 そうか、そういえばミラ先生の授業を受けていたら熱が出て、先生にお姫様抱っこで運ばれたんだっけ。

 思い出しただけで恥ずかしさが全身を駆け巡っていく勢いだ。ミラ先生に顔を合わせ辛い……

 熱はどうやら引いているみたいだ。頭が楽でスッキリしている気がする。

 この部屋には二段ベットの他に机が二つ、それからクローゼットのような家具が綺麗に並べられている。おそらく二人部屋だろう。

 不意に鏡があることに気がついた。ここに来て、と言うか異世界に来てまだ自分の姿を見たことがなかったので、もしかしたら異世界で別人の姿になっているのではないか、という不安にかられた。

 いや、そんなまさか、いくら魔法が使える世界とはいえ姿は変わってないよな……

「ちょっと見てみるか」

 怖さ半分、好奇心半分で恐る恐る鏡を覗いてみることにした。

「……ん? ちょっと若い……か?」

 見たところ間違いなく自分の姿ではあったものの、顔は高校三年生くらいの感じになっている気がする。そもそも生前が若かったせいか、あまり違いが分からずリアクションに困ってしまった。

「彼方ぁ! 熱は治ったか、治ったならこれからすぐに教室で授業だ! 急げ」

 突然部屋のドアがものすごい勢いで開いたかと思えば、ドアの開いた音をかき消す程の大声をあげながらミラ先生は部屋に入ってきた。

 病人に対してのお見舞いの仕方としてはあまりにも相応しくない。

「おはようございます。今から授業ですか?」

「当たり前だ。時間がないからな。貴様には二ヶ月で魔法の基礎を叩き込んで卒業してもらう」

「え? にっ、二ヶ月ですか?」

 短すぎるだろ、そんな短期の学校とか聞いたことがない。それに魔法が二ヶ月で使えるようになるとは到底思えない。

「たった二ヶ月で魔法が使えるようになるのでしょうか」

「使えるようになるのかどうかは貴様次第だ。本来なら三年は学ぶべきだが、ルナがどうしても二ヶ月で卒業させて欲しいと言うから仕方ないだろ」

 ルナさん……そんな大事なことは先に言っておいてくれよ。

「まぁ安心しろ、魔法が使えなくても卒業はさせてやるつもりだがこの私が教えるからな、いくら貴様に才能がなくても体に叩き込んでやる」

 全く安心できない……身の危険を感じるのは気のせいではないよな。できるだけ危なくない方法で教えてくれよ。

「ちなみに魔法士学校卒業後は魔法士の資格を取得できる。この国では何をするにもこの資格が必要になるから二ヶ月で取得できるのは幸運なことだぞ」

「それなんですけど、ルナさんは魔法士の資格を取得して欲しいと言ってました。魔法士って一体何なのですか?」

 この疑問を解消しておかないとモチベーションを保ちながらミラ先生の授業を受けることができない。

「魔法士はだな、この国が定めた資格で魔法がある程度使える者に与えられるものだ。ランクが四つあって一番下が魔法士学校を卒業した者に与えられる三級魔法士の資格だ」

「と言うことは俺が目指すのは三級魔法士ということでしょうか」

「その通りだ。だが三級の上には二級、一級、そして一番上に大魔法士というものが存在する。上に行けば行く程待遇が良くなるからそこを目指すのもいいだろう」

 なるほど、上級の資格になればそれだけ異世界で過ごしやすくなるということか。これは大魔法士を目指したいところだな。

「ちなみにミラ先生の魔法士のランクはなんですか?」

「私か? 私はこの国に八人しかいない大魔法士だ。どうだすごいだろう、私みたいになりたいだろう?」

 よし、大魔法士は諦めよう。ミラ先生みたいな化物クラスの人でないとなれないのなら俺には無理ゲーだからな。

 ミラ先生って本当にすごい人なんだなぁ。こんな人に魔法を教わるのだからそこそこ出来る人になれそうだな。

「質問は終わりか? では今から教室に向かうぞ、私についてこい」

 そう言うとミラ先生は部屋を出て早足でスタスタと歩き出した。

 後をついて廊下を歩きながら周りを見渡すと、校舎が木造建築で意外と古いことに気がついた。木造建築の学校は俺のいた世界にもあったが、魔法が使えるこの世界にもあるのか。ミラ先生の趣味だったりして。

 廊下の窓から外を見ると、この学校の学生と思わしき子供たち、およそ三十人程がグラウンドで遊んでいた。

 なんだ、普通の学校みたいで楽しそうじゃないか。安心安心。

「着いたぞ、ここが貴様の教室だ。さぁ中に入るぞ」

 ミラ先生の足が止まったかと思ったら、いつの間にか教室の前に到着していた。

 急に緊張していく俺をよそに、ミラ先生は俺に深呼吸をする間も与えず、教室のドアを物凄い勢いで開けた。

「おはよう! 貴様ら今日も元気そうでなによりだ」

 先生が挨拶をしながら教室に入って行き、俺はすかさずその後ろをついていく形で恐る恐る教室に入り、そして唖然としてしまった。

 中には生徒と思わしき人が二人しかいなかった。男の子と女の子、それから机は三つ。他は前にいた世界の一般的な学校の教室となんら変わりはなかった。

「あーーー!! あの時の貴族の人ーーー!!」

 急に教室にいた女の子が俺を指差しながら大声をあげた。貴族の人って俺のことじゃないよな?

「なんだ貴様ら知り合いなのか?」

 いや知らない。この世界で人に会ったこと自体少ないし忘れるはずはないのだが、もし忘れているのだとしたら大人として、いや人として失礼だぞ。

「もしかして覚えてないですか? 先日私のお店でまんじゅうを買ってくれたじゃないですか、あの時はありがとうございました!」

「…………あーーっ! あの時の店員さん!」

 ようやく思い出した。泣きまんじゅうを買いに行かされた時の店員さんか。あの時はルナさんのせいで意識が朦朧としていたから思い出すのに時間がかかってしまった。

「あのー実は俺、貴族ではないんです」

「そうなんですか? でもあの時確か太陽紋の金貨を持っていたような……」

「あれにはちょっとした事情がありまして……」

 すると会話を遮るようにミラ先生は教壇の机を両手で二回叩いた。

「とりあえず席につけ。彼方の席はベガとアトリアの間の席だ」

 言われるがままに着席すると、俺の左隣の席に座っている男の子が話しかけてきた。

「俺はベガ・ストロング、よろしく。気軽にベガって呼んでくれ」

 すかさず右の女の子も話しかけてきた。

「私はアトリア・カンデラです。よろしくね」

 ベガとアトリアか。生徒が二人しかいない教室を見た時はどうなるかと思ったが、二人とも社交的で良かった。これから二ヶ月間頑張っていけそうだ。

「こちらこそよろしく」

「自己紹介は済んだな。ではこれより授業を始める」







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