転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

文字の大きさ
上 下
14 / 19
第一章 魔法士学校編

第十三話 魔力容量測定

しおりを挟む
「授業を始める前に彼方、貴様の魔力容量を測定しておかなければならない」

「魔力容量って確か魔法を使うための魔力を体内に貯めておくことができる容量のことでしたっけ?」

「その通りだ。ベガとアトリアは彼方よりも二年以上早くこの学校で学んでいるから測定していないのは彼方だけだ」

 そうだったのか、ということはベガとアトリアはこの学校では先輩ということだな。今後は是非魔法についての極意などを、先輩方にご教授していただきたいところだ。

「わかりました。それで、どうやって測定するのですか?」

「とりあえず服を脱げ」

「分かりま……ええっっ!? 裸になるんですか?」

 ミラ先生は至って真面目な顔でとんでもない事を言い出した。

 こんな会って間もない人達の前で、まぁミラさんには全裸を見られているが……恥ずかしすぎるだろ公開処刑かよ。

「何を恥ずかしがっている、全裸になれとまでは言ってないだろ。上だけでいい、さっさとしろ」

 いやいや、待って下さいよ。ベガはいい、こいつは男だ。だがアトリアは女の子だよ、アトリアの前で脱ぐのはまずいでしょ。

「彼方さぁ、お前昨日ミラ先生に全裸でお姫様抱っこされながら運ばれていくのを結構な人数の生徒に見られているんだから、今更恥ずかしがることないんじゃね?」

「最悪だあぁぁぁーーーー!!」

 ベガのとんでもないカミングアウトに思わず絶叫してしまった。あれ見られてたのかよ……もう死ぬしかないじゃん、死んでるけど。

 まさか、アトリアには見られてないよな……

「あのーアトリアさん、昨日の事ーー」

 言い切る前にアトリアは目を逸らした。これは完全に終わったということか……

「まぁ俺もアトリアも測定の時にみんなの前で脱いだし、すぐ終わるから彼方も気にすんなって」

「確かに測定の時に私も脱いだけど、上だけだったしそれに私の時はベガの目は潰してたから」

 アトリアが脱いだことよりもさらっと目潰しをしたという発言が怖すぎる。一応目潰しの魔法は後で教えてもらおう。

「はぁ、脱ぐか……」

 上だけだと言われたので嫌々服を脱ぐと、その様子を見ながらベガがにやついている。

「なんだよ」

「彼方、お前女みたいな体だな。もうちょい鍛えたほうがいいぜ」

 そういえば前に、ミラさんにも同じような事を言われた気がする。俺ってそんなに貧弱な体なのだろうか……

「では魔力容量の測定を始める」

 ミラ先生が近寄ってきて、俺の胸に手を当てて目を瞑った。どうでもいい事だがミラ先生ってヒールを履いていたんだな。ただでさえ背が高いのにより高くなってて圧がすごい。

 目を閉じている先生の体が突然光りだすと、それは二十秒くらい続いた。光が止むと先生は俺の胸に当てていた手を下ろし、ゆっくりと目を開けた。

「……彼方、二ヶ月間しっかり毎日しごいてやるからな。まぁあれだ……元気を出せ」

 ミラ先生が申し訳なさそうに俺の肩に手を置いて言った。反応から察するに恐らくよろしくない数値だったのだろう。だが恥ずかしい思いで測定したんだ。聞かずにいられるはずがない。

「先生、気を遣わなくてもいいので測定結果を教えてください」

「知りたいか。いや、自分の事だ。今後のためにも知っておくべきだな。すまない」

「彼方よ、貴様の魔力容量は……ゼロだ」

 先生は間髪入れずに言い放った。

 ゼロって0だよな? 無いってことか? でも言われてもよく分からないなぁ。今から勉強していく訳だし流石に最初は誰でもゼロだよな。そう心の中で言い聞かせていると、

「はっはっはっ、あーなんだよ彼方お前魔力容量ゼロって、聞いたことねーよそんな奴! なんの冗談だよ、おかしすぎて腹よじれるっつーの」

「え? ミラ先生冗談なんですか?」

「冗談ではない」

 冗談じゃないってよベガ、笑うことねーだろ。

「ベガはどうなんだよ、どうせ俺よりちょっと良いくらいだろ」

 ベガは笑い涙を袖で拭きながら自慢げに答えた。

「俺は38万ちょいだったな。それも一年くらい前の話だけどな」

「え? まじで、なんか桁おかしくない?」

「それくらいで驚くなよ、アトリアなんて44万もあるんだぜ」

 嘘だろ……ベガの数値でも驚きなのにアトリアがそれ以上とかマジかよ。こんな可愛いらしい女の子にも負けているのか。

「ベガ! もーそれくらいにしなよ。彼方くんはこれから先生に指導してもらって数値が上がっていくはずなんだから」

 アトリアさん、君は天使ですか? ベガは笑いっぱなしだがアトリアは真剣な顔でベガに注意をしている。その姿はさながら典型的なクラスの委員長のようで、少し心がホッとした。

 それと同時に、同世代の女の子にフォローされたことに若干のやるせなさというか、不甲斐なさを痛感した。

「ごめんごめん、悪かったよ。まぁ卒業まで二ヶ月あるんだろ? 大丈夫だって、俺たちも色々フォローしてやるからさ」

 お前のフォローはいらん、と言いたいところだが、今はベガとアトリアに甘えるとしよう。いつか絶対ベガは抜いてやるからな。気合いを入れるぞ!

「よし! ミラ先生、二ヶ月間みっちり特訓をお願いします!!」

「気合い十分なところ悪いが、彼方は実技より先に勉強からだ」

 えぇぇ……

しおりを挟む

処理中です...