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13、英雄辺境へ旅立つ
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ーー小さくなった俺は、しばらくの間、《親を亡くした子供》として、スチュワート・アーヴァイン伯爵の家で世話になることになった。
何から何までお世話になりっぱなしだ。
しかも、小さくなったせいで舌足らずになって言葉がつたなくなってるのに、きちんとお話ししてくれてる。
これは人の親なら皆そうなのだろうか?
それとも彼がそうなのか。
……ホント、お世話になりっぱなしだ。
腕を組んで一人頷いていると、
「小さくなった間の《名前》はどうするのですか?」
とカルロスに聞かれた。
「(そう言えば、そうか……《名前》か……)」
腕を組んだまま、《小さくなった自分の名前》を考える。二人はじっと待ってくれていた。
ーーふと、《ある名前》が頭に思い浮かぶ。
少し考えたのち、
「ちぃみゅにしみゃしゅ(《ティム》にします)」
と言いながら、同時に『ティム』と空中に名前を書いた。
「……うん。『ティム』か。言い名前だね。そうなると、『ティム・アーヴァイン』……うん。言い名前だ」
名前を誉めながら、何かの書類を用意して何かを書き込んだ伯爵。
「ここに今の君の名前を書いてくれるかな? ……と言うか、書けるかな?」
伯爵の名前の下に名前を書くように言われて、
「ひゃい。きゃいちぇみみゃしゅ(はい。書いてみます)」
自分には大きなペンで名前を書いてみる。
ーーうん。綺麗な文字ではないが、一応文字は書けるようだ。
「……これで、君と『養子縁組』ができるよ」
とニッコリ笑った伯爵。
「ふえっ!?」
思わぬ伯爵の言葉に驚いてしまう。
ーーただ、親を亡くした子供としてお世話になるだけでは!?
目をパチパチとさせて驚いていると、
「きちんと手続きしていないと、君を好きなだけ預かっていられないからね」
とウインクしていたずらっ子のように明るく笑った伯爵。
「正式に養子縁組をしていないと、あなたをどこかの施設に預けることになってしまう恐れもあるので、こういう手続きは素早く済ませる方がいいのですよ」
と、カルロスが補足説明してくれた。
「(そういえば、そうか)」
ーー確かにあくまで《親を亡くした子供》だから、本来なら孤児院に預けられるのが普通だ。危ないところだった。
「(あ! そうだ)」
俺はあることを思い出して、部屋の隅で眠っていたフェイを念話で呼ぶと、すぐに気が付いて駆け寄ってきてくれる。
「きょにょふぇいもいっちょにいいでちゅきゃ?(このフェイも一緒にいいですか?)」
とフェイも一緒に連れていっていいかと確認すると、伯爵は快く許可してくれた。
「(一応、念のために)」
『このフェイは《フェンリル》ですが、大丈夫ですか?』
とおずおずと空中に文字を書いてみると、さすがに驚いていた二人。
「勿論、人間に危害をくわえないと言うならいいですよ。」
とその笑顔から見て、始めからそんなことはないとわかっているように微笑んだ伯爵。
「よりょりきゅおねぇぎゃいしみゃしゅ(よろしくお願いします)」
と俺は改めて心からペコリと頭を下げたのだった。
ーーはあ。本当に伯爵には世話になりっぱなしだ。そのうち小さい体を問題なく扱えるようになったら、恩返ししないと。
俺は心の中でそう決意するのだった。
「にゃあ、りゅしゅをちゃのんじゃよ(じゃあ、留守を頼んだよ)」
小さい箱を手にもってルルとララに声をかけると、小さく微笑んだ二人は眠るように目を閉じた。
空間魔法で小さい箱をしまうと、表に止めていた伯爵の馬車に乗り込む。馬車で門の外にでると、自動的に結界が強化されて屋敷が閉じられた。
「……本当に凄いな」
屋敷の様子や結界を見て感心した伯爵が呟いていた。
「それでは行って参ります」
手続きに向かったカルロスを見送ると、馬車は辺境に向けて出発する。
ーーこうして、辺境の地にあるスチュワート・アーヴァイン伯爵の領地で親を亡くした子供として、伯爵の養子になってお世話になるために、胸を踊らせながら旅立ったのだった。
何から何までお世話になりっぱなしだ。
しかも、小さくなったせいで舌足らずになって言葉がつたなくなってるのに、きちんとお話ししてくれてる。
これは人の親なら皆そうなのだろうか?
それとも彼がそうなのか。
……ホント、お世話になりっぱなしだ。
腕を組んで一人頷いていると、
「小さくなった間の《名前》はどうするのですか?」
とカルロスに聞かれた。
「(そう言えば、そうか……《名前》か……)」
腕を組んだまま、《小さくなった自分の名前》を考える。二人はじっと待ってくれていた。
ーーふと、《ある名前》が頭に思い浮かぶ。
少し考えたのち、
「ちぃみゅにしみゃしゅ(《ティム》にします)」
と言いながら、同時に『ティム』と空中に名前を書いた。
「……うん。『ティム』か。言い名前だね。そうなると、『ティム・アーヴァイン』……うん。言い名前だ」
名前を誉めながら、何かの書類を用意して何かを書き込んだ伯爵。
「ここに今の君の名前を書いてくれるかな? ……と言うか、書けるかな?」
伯爵の名前の下に名前を書くように言われて、
「ひゃい。きゃいちぇみみゃしゅ(はい。書いてみます)」
自分には大きなペンで名前を書いてみる。
ーーうん。綺麗な文字ではないが、一応文字は書けるようだ。
「……これで、君と『養子縁組』ができるよ」
とニッコリ笑った伯爵。
「ふえっ!?」
思わぬ伯爵の言葉に驚いてしまう。
ーーただ、親を亡くした子供としてお世話になるだけでは!?
目をパチパチとさせて驚いていると、
「きちんと手続きしていないと、君を好きなだけ預かっていられないからね」
とウインクしていたずらっ子のように明るく笑った伯爵。
「正式に養子縁組をしていないと、あなたをどこかの施設に預けることになってしまう恐れもあるので、こういう手続きは素早く済ませる方がいいのですよ」
と、カルロスが補足説明してくれた。
「(そういえば、そうか)」
ーー確かにあくまで《親を亡くした子供》だから、本来なら孤児院に預けられるのが普通だ。危ないところだった。
「(あ! そうだ)」
俺はあることを思い出して、部屋の隅で眠っていたフェイを念話で呼ぶと、すぐに気が付いて駆け寄ってきてくれる。
「きょにょふぇいもいっちょにいいでちゅきゃ?(このフェイも一緒にいいですか?)」
とフェイも一緒に連れていっていいかと確認すると、伯爵は快く許可してくれた。
「(一応、念のために)」
『このフェイは《フェンリル》ですが、大丈夫ですか?』
とおずおずと空中に文字を書いてみると、さすがに驚いていた二人。
「勿論、人間に危害をくわえないと言うならいいですよ。」
とその笑顔から見て、始めからそんなことはないとわかっているように微笑んだ伯爵。
「よりょりきゅおねぇぎゃいしみゃしゅ(よろしくお願いします)」
と俺は改めて心からペコリと頭を下げたのだった。
ーーはあ。本当に伯爵には世話になりっぱなしだ。そのうち小さい体を問題なく扱えるようになったら、恩返ししないと。
俺は心の中でそう決意するのだった。
「にゃあ、りゅしゅをちゃのんじゃよ(じゃあ、留守を頼んだよ)」
小さい箱を手にもってルルとララに声をかけると、小さく微笑んだ二人は眠るように目を閉じた。
空間魔法で小さい箱をしまうと、表に止めていた伯爵の馬車に乗り込む。馬車で門の外にでると、自動的に結界が強化されて屋敷が閉じられた。
「……本当に凄いな」
屋敷の様子や結界を見て感心した伯爵が呟いていた。
「それでは行って参ります」
手続きに向かったカルロスを見送ると、馬車は辺境に向けて出発する。
ーーこうして、辺境の地にあるスチュワート・アーヴァイン伯爵の領地で親を亡くした子供として、伯爵の養子になってお世話になるために、胸を踊らせながら旅立ったのだった。
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