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14、辺境への道
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辺境貴族であるスチュワート・アーヴァイン伯爵の領地に親を亡くした子供としてお世話になることになったティムこと英雄ヘンリー。
しかも、養子としてなので、子供のように過ごさなくてはならない。
今のところ、伯爵と彼の側近である侍従のカルロスだけが事情を知っている。
子供として過ごす。
確かに不安でしかないけど、見た目だけでもすっかり幼児なヘンリー。
それでいて言葉も舌足らずときている。
どこからどう見ても小さな子供だ。
魔力にだけ気を付ければ、おそらく大丈夫……なはず。
まだまだ未知数なのでもうやるしかない。
「……少し打ち合わせしておこうか」
アーヴァイン伯爵の言葉に向かいに座っていた俺は、落ちないようにクッションで固められた中でビシッと姿勢を正す。
ーーものすごーーく、温かい目で見られてる気もするが、気にしない方がいいな。うん。
「お屋敷でも話した通り、親を亡くした子供と出会った私は、同情と使命感から引き取る決意をしてすぐに養子縁組をして連れ帰ることにした……ここまではよろしいですね?」
伯爵に確認されて、うんうんと頷く。
「ヘンリー様の今の見た目からして、亡くした親のことはほとんど覚えていないのが普通でしょう」
そう言われてみて、確かに幼児がそんなに覚えていたらおかしいかもしれないと同意する。
『じゃあ、思い出そうとしたら、とにかく悲しくて、ちょっとうるうるしてしまう……くらいがいいでしょうか?』
と空中に文字を書いて、提案してみる。
「そうですね。それでいいと思います」
頷いてくれた伯爵を見ていて、ずっと感じていたことに気付く。
『あの、伯爵も言葉遣いを気を付けた方がいいです。今の俺は……ボクは子供なんで……』
それを見た瞬間、伯爵自信も言葉遣いが、まだ《英雄ヘンリー相手の言葉遣い》だったことに気付いた。
「確かにそうですね……いや、確かにそうだ。今から気を付けることにするよ」
と砕けた言葉に変えてくれた。
「さっきも言った通り、妻には時期がきたら、子供たち……しいては、屋敷の使用人たちにも《様子を見てから》、それぞれ話すことにする」
はいと返事して頷こうとした時、急に外が騒がしくなった。
「……何の騒ぎだ!?」
伯爵が御者に問いかけると、
「……どうやら魔物が出たようです」
と平然と答えたのは、さっきまではいなかった侍従のカルロスだ。
「(いつの間に!?)」
さすがに驚いた。
「数は?」と驚く俺には気にも止めずに伯爵は当然のようにカルロスに状況を確認している。
「数匹程度ですが、狼型なので素早いかと」
二人でこそこそと確認し合ってるので、俺は自分で調べてみることにする。
広範囲索敵を作動させて、周辺の状況を調査。
離れた場所にも何かいるが……まあ、今はこれは無視してもいいだろう。
……と言うことは、と俺は接近してきているのを調べてみる。
「(お。確かにいるな)」
広範囲索敵に馬車の近くに魔物の反応があることに気付く。
さらに詳細を調べてみると、
「(……なるほど、シルバーウルフか)」
人によっては厄介なようだが、まあ、俺にはまったく問題ない。
「(ちょうどいい……これはいいな。シルバーウルフならば魔法のいい練習相手になる)」
ーーよし!と俺はさっそくそのことを伝えるためにいまだにこそこそ二人だけで話している伯爵とカルロスに声をかける。
「あにょ! りぇんちゅうみょきゃにぇちぇおりぇぎゃみゃひょうをちゅかっちぇみょいいでちゅか?(あの! 練習も兼ねて俺が魔法使ってもいいですか?)」
と言うと、二人が驚いたように振り返る。
「……ご自分で戦うと言われるのですか?」
と驚いたカルロスに聞かれて、ちゃんと伝わってたことにホッとしながら頷く。
「ひゃい!(はい!)」
俺が立ち上がって大きく返事をすると、
「「ダメだ! 危険すぎる!!」」
と二人に止められてしまう。
「(ん? 何でこんな反応?)」
俺が不思議そうにすると、すぐに思い出した。
俺が幼児の姿だからだ。
でも、さっきは子供扱いしてなかったのに……。
「(まあ、とにかく)」
『大丈夫です! 魔力は元のままなので!』
と今度は空中に文字を書いてちゃんと伝える。
あ、それでも……と、
『馬車からは出ません!』
と安全圏から魔法を使うことを約束した。
幼児の姿だから心配をかけているようなので、現時点での最善策を提案する。
それでも躊躇していた二人も、何とか納得してくれて、動く馬車の扉を開けて、カルロスに抱き抱えられたまま両手をかざした。
視線の先にシルバーウルフを確認すると、とりあえず雷撃系の呪文を使った。
ーー次の瞬間、想定以上の大きさの稲妻がシルバーウルフに目掛けて落ちていた。
物凄い爆音に衝撃が馬車まで伝わってきて驚いた御者が安全のために馬車を止めた。
カルロスにだっこされたまま、伯爵と3人で確認にいくと、そこには魔法の衝撃でくぼんだ大きな穴と丸焦げのほぼ炭になってるシルバーウルフの死体が3体あった。
「(うげぇぇぇ~~、やりすぎたかな?)」
俺は《最小の力》で行った呪文の《実際の火力》に思わず引いてしまう。
「(何か威力がおかしい)」
今度は伯爵に抱っこされたまま、後処理をしているカルロスを見ていた。
「……ティム……魔法のこともあとで話し合いましょう」
真面目な顔をした伯爵の提案に、ただただ俺は頷いたのだった。
しかも、養子としてなので、子供のように過ごさなくてはならない。
今のところ、伯爵と彼の側近である侍従のカルロスだけが事情を知っている。
子供として過ごす。
確かに不安でしかないけど、見た目だけでもすっかり幼児なヘンリー。
それでいて言葉も舌足らずときている。
どこからどう見ても小さな子供だ。
魔力にだけ気を付ければ、おそらく大丈夫……なはず。
まだまだ未知数なのでもうやるしかない。
「……少し打ち合わせしておこうか」
アーヴァイン伯爵の言葉に向かいに座っていた俺は、落ちないようにクッションで固められた中でビシッと姿勢を正す。
ーーものすごーーく、温かい目で見られてる気もするが、気にしない方がいいな。うん。
「お屋敷でも話した通り、親を亡くした子供と出会った私は、同情と使命感から引き取る決意をしてすぐに養子縁組をして連れ帰ることにした……ここまではよろしいですね?」
伯爵に確認されて、うんうんと頷く。
「ヘンリー様の今の見た目からして、亡くした親のことはほとんど覚えていないのが普通でしょう」
そう言われてみて、確かに幼児がそんなに覚えていたらおかしいかもしれないと同意する。
『じゃあ、思い出そうとしたら、とにかく悲しくて、ちょっとうるうるしてしまう……くらいがいいでしょうか?』
と空中に文字を書いて、提案してみる。
「そうですね。それでいいと思います」
頷いてくれた伯爵を見ていて、ずっと感じていたことに気付く。
『あの、伯爵も言葉遣いを気を付けた方がいいです。今の俺は……ボクは子供なんで……』
それを見た瞬間、伯爵自信も言葉遣いが、まだ《英雄ヘンリー相手の言葉遣い》だったことに気付いた。
「確かにそうですね……いや、確かにそうだ。今から気を付けることにするよ」
と砕けた言葉に変えてくれた。
「さっきも言った通り、妻には時期がきたら、子供たち……しいては、屋敷の使用人たちにも《様子を見てから》、それぞれ話すことにする」
はいと返事して頷こうとした時、急に外が騒がしくなった。
「……何の騒ぎだ!?」
伯爵が御者に問いかけると、
「……どうやら魔物が出たようです」
と平然と答えたのは、さっきまではいなかった侍従のカルロスだ。
「(いつの間に!?)」
さすがに驚いた。
「数は?」と驚く俺には気にも止めずに伯爵は当然のようにカルロスに状況を確認している。
「数匹程度ですが、狼型なので素早いかと」
二人でこそこそと確認し合ってるので、俺は自分で調べてみることにする。
広範囲索敵を作動させて、周辺の状況を調査。
離れた場所にも何かいるが……まあ、今はこれは無視してもいいだろう。
……と言うことは、と俺は接近してきているのを調べてみる。
「(お。確かにいるな)」
広範囲索敵に馬車の近くに魔物の反応があることに気付く。
さらに詳細を調べてみると、
「(……なるほど、シルバーウルフか)」
人によっては厄介なようだが、まあ、俺にはまったく問題ない。
「(ちょうどいい……これはいいな。シルバーウルフならば魔法のいい練習相手になる)」
ーーよし!と俺はさっそくそのことを伝えるためにいまだにこそこそ二人だけで話している伯爵とカルロスに声をかける。
「あにょ! りぇんちゅうみょきゃにぇちぇおりぇぎゃみゃひょうをちゅかっちぇみょいいでちゅか?(あの! 練習も兼ねて俺が魔法使ってもいいですか?)」
と言うと、二人が驚いたように振り返る。
「……ご自分で戦うと言われるのですか?」
と驚いたカルロスに聞かれて、ちゃんと伝わってたことにホッとしながら頷く。
「ひゃい!(はい!)」
俺が立ち上がって大きく返事をすると、
「「ダメだ! 危険すぎる!!」」
と二人に止められてしまう。
「(ん? 何でこんな反応?)」
俺が不思議そうにすると、すぐに思い出した。
俺が幼児の姿だからだ。
でも、さっきは子供扱いしてなかったのに……。
「(まあ、とにかく)」
『大丈夫です! 魔力は元のままなので!』
と今度は空中に文字を書いてちゃんと伝える。
あ、それでも……と、
『馬車からは出ません!』
と安全圏から魔法を使うことを約束した。
幼児の姿だから心配をかけているようなので、現時点での最善策を提案する。
それでも躊躇していた二人も、何とか納得してくれて、動く馬車の扉を開けて、カルロスに抱き抱えられたまま両手をかざした。
視線の先にシルバーウルフを確認すると、とりあえず雷撃系の呪文を使った。
ーー次の瞬間、想定以上の大きさの稲妻がシルバーウルフに目掛けて落ちていた。
物凄い爆音に衝撃が馬車まで伝わってきて驚いた御者が安全のために馬車を止めた。
カルロスにだっこされたまま、伯爵と3人で確認にいくと、そこには魔法の衝撃でくぼんだ大きな穴と丸焦げのほぼ炭になってるシルバーウルフの死体が3体あった。
「(うげぇぇぇ~~、やりすぎたかな?)」
俺は《最小の力》で行った呪文の《実際の火力》に思わず引いてしまう。
「(何か威力がおかしい)」
今度は伯爵に抱っこされたまま、後処理をしているカルロスを見ていた。
「……ティム……魔法のこともあとで話し合いましょう」
真面目な顔をした伯爵の提案に、ただただ俺は頷いたのだった。
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