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第2章
【18】オルキス・オンシジウムの場合 その2!
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――翌日。
昼休み、教室でくつろいでいたヒロさんと私の元に、オルキスがやってきましたわ。
「おい! お前たち! あの例のアレはどうしたんだ!?」
……『あの例のアレ』とは何のことでしょう?
「オルキス、『あの』とか『アレ』じゃ解らないよ!」
ヒロさんにも意味が通じていない様でしたわ。
「だ・か・らっ! あーもう!」
苛立ちながらオルキスは急に小声になって言いました。
「あの子猫たちのことだよ……! いつも通り林に行ってもどこにもいねぇ! お前たちがどうかしたんだろ!?」
「ああ、あの例のアレのことですの?」
私は気を使って返事をしようとしましたわ。しかしヒロさんが――
「子猫ちゃんたちなら、代わりに育ててくれる方を見つけたからもう大丈夫だよ! 安心してオルキス!」
キラキラとした笑顔で、ハキハキと答えましたわ――
それから、オルキスはヒロさんと私を以前よりもあからさまに避けるようになってしまいましたの……。
※
更に翌日の放課後。
ヒロさんと私とメガネ委員長のエルゼンと庶民派騎士のキースのいつものメンバーで校舎裏の休憩所に集合していましたわ。
「さて。今日の議題はこれよ!」
ヒロさんが声を張り上げましたわ。
――議題? この集まりはヒロさんの魔法の練習のための集まりではなくて? まあ、かわいい主人公のヒロさんが言うならなんでもよろしいですけど。
「じゃーん! 『オルキスとお友達になりたい』っ!」
キースは通常運行で剣の素振りをしながら言いましたわ。
「ヒロ、本当に友達作り好きだなー」
エルゼンは眉をしかめて言いましたわ。
「……ヒロは友達になりたいのかもしれないが、きっとオルキス自身が希望しないだろう」
私は……。
「よ、よろしいのではなくて? オルキスも孤立しているよりは友好的な仲間が居たほうが学院生活を過ごしやすいでしょう――」
「しかしどうやってオルキスに近付くんだ? あいつは常に独りだし近付く隙きも無いぞ」
エルゼンの言うことは至極真っ当でしたわ。
「隙きが無いかぁ……隙きが無いなら勝負してみてえなあ……」
「キース、オルキスは攻撃魔法系じゃクラス、いいえ学年でトップだよ」
「いいなそれ。やっぱり対決してみてえ!」
キースとヒロさんはどこかへ話が脱線しそうになっていますわ……。
コホン、と私が咳払いで路線修正を促しますわ。
「オルキスは孤立してはいますが、決して人間や生き物が嫌いなわけでは無いと思いますわ――」
私の前世からのこの世界知識が唸りますわ!
「恐らく、嫌いなのは人間ではなくその身分制度――つまり私やエルゼンのような貴族がお嫌いなのでしょうね」
オルキスは孤児で、育ての親たちが経営する孤児院を安定させるために立派な魔法使いを目指しているの。彼は子供の頃から貧しい世界で育ったので、何ひとつ苦労無く育った貴族層には当たりがキツいのがこの世界の設定よ。
もちろん、実際に貴族になってみれば貴族なりの苦労が付きまとうのですが、そこはオルキスの置かれた環境と比べるものでは無いでしょう。
「それじゃあ、オルキスはカレンちゃんやエルゼンとは特にお友達になりたくないってこと!? そんなの嫌よ!」
ヒロさんが焦って言ったわ。
「――まあ、俺たち貴族層を毛嫌いする者が居るのも仕方ないことだ。むしろこうやって一般人のヒロを囲んで騎士、子爵、公爵の家柄が揃うほうが珍しい」
……そう言えばそうですわね。
それもこれもヒロさんの素晴らしい人格のおかげなんでしょうけれど!
更に先生は大公閣下なんて、絶対にあり得ないわ。
「だからやっぱりここは力づくで勝負じゃねーのか?」
キースが考えながら発言しましたわ。
「喧嘩じゃ何も解決しないでしょ! キースったらいつも腕っぷしで解決しようとするんだから!」
―――あ。そう言えば。ニーハイムス様と一昨日、あんなやりとりが有りましたわ。
『ありがとうございます。それでは、学院で何か有れば協力していただけますか?』
『ええ、もちろん!』
「ニース先生にも相談してみましょうか……?」
考える人は多ければ多いほど、活路が見いだせるかもしれませんわ……!
※
私たちは、魔法理論学の職務室のニーハイムス様こと、ニース先生を訊ねたわ。
「やあ、みんな仲良くお揃いでどうしたんだい?」
ニース先生は執務室に優しく迎え入れてくださったわ。
職務室は教員一人ひとりに与えられた専門のお部屋ですの。私たち4人でお邪魔したら狭いかと思いましたが、案外広くて皆すんなりと座れましたわ。
「ニース先生! 実はかくかくしかじか~」
ヒロさんが手短にお話しを纏めてくださったわ。
「なるほど。それでオルキスとの関係をどうにかしたいと……」
ニース先生は一瞬、私の方を流し見ましたわ。目と目が合いました。
「……まずはオルキスのことを直接、よく知ろうか?」
ニース先生はごくごく普通の意見を仰ったわ。
「私たちはオルキスのことはこの学院のことしか知らないからね」
「……確かに。私生活は謎に包まれていますね……! この前の子猫ちゃんの一件くらいしか私たちは知らないわ」
ヒロさんが話に乗り出してきたの。
そう言えばそうね。私のオルキスに対する知識は前世でプレイした『花と嵐と恋の華~魔法学院でドキドキ☆スクランブル~』の世界の中での知識であって、この現世での知識ではありませんわ。
「――知ってみたくもありますわね」
「そうだなー、俺もアイツの性格よく知らねーし」
「……同感だ。俺もヒロとカレンから噂には聞いたが、直接この目で何かを見たわけではないからな」
キースとエルゼンもその気になってきたわ。
かくして、私たちはオルキスのことをよく知る為に動き始めたのですわ――
昼休み、教室でくつろいでいたヒロさんと私の元に、オルキスがやってきましたわ。
「おい! お前たち! あの例のアレはどうしたんだ!?」
……『あの例のアレ』とは何のことでしょう?
「オルキス、『あの』とか『アレ』じゃ解らないよ!」
ヒロさんにも意味が通じていない様でしたわ。
「だ・か・らっ! あーもう!」
苛立ちながらオルキスは急に小声になって言いました。
「あの子猫たちのことだよ……! いつも通り林に行ってもどこにもいねぇ! お前たちがどうかしたんだろ!?」
「ああ、あの例のアレのことですの?」
私は気を使って返事をしようとしましたわ。しかしヒロさんが――
「子猫ちゃんたちなら、代わりに育ててくれる方を見つけたからもう大丈夫だよ! 安心してオルキス!」
キラキラとした笑顔で、ハキハキと答えましたわ――
それから、オルキスはヒロさんと私を以前よりもあからさまに避けるようになってしまいましたの……。
※
更に翌日の放課後。
ヒロさんと私とメガネ委員長のエルゼンと庶民派騎士のキースのいつものメンバーで校舎裏の休憩所に集合していましたわ。
「さて。今日の議題はこれよ!」
ヒロさんが声を張り上げましたわ。
――議題? この集まりはヒロさんの魔法の練習のための集まりではなくて? まあ、かわいい主人公のヒロさんが言うならなんでもよろしいですけど。
「じゃーん! 『オルキスとお友達になりたい』っ!」
キースは通常運行で剣の素振りをしながら言いましたわ。
「ヒロ、本当に友達作り好きだなー」
エルゼンは眉をしかめて言いましたわ。
「……ヒロは友達になりたいのかもしれないが、きっとオルキス自身が希望しないだろう」
私は……。
「よ、よろしいのではなくて? オルキスも孤立しているよりは友好的な仲間が居たほうが学院生活を過ごしやすいでしょう――」
「しかしどうやってオルキスに近付くんだ? あいつは常に独りだし近付く隙きも無いぞ」
エルゼンの言うことは至極真っ当でしたわ。
「隙きが無いかぁ……隙きが無いなら勝負してみてえなあ……」
「キース、オルキスは攻撃魔法系じゃクラス、いいえ学年でトップだよ」
「いいなそれ。やっぱり対決してみてえ!」
キースとヒロさんはどこかへ話が脱線しそうになっていますわ……。
コホン、と私が咳払いで路線修正を促しますわ。
「オルキスは孤立してはいますが、決して人間や生き物が嫌いなわけでは無いと思いますわ――」
私の前世からのこの世界知識が唸りますわ!
「恐らく、嫌いなのは人間ではなくその身分制度――つまり私やエルゼンのような貴族がお嫌いなのでしょうね」
オルキスは孤児で、育ての親たちが経営する孤児院を安定させるために立派な魔法使いを目指しているの。彼は子供の頃から貧しい世界で育ったので、何ひとつ苦労無く育った貴族層には当たりがキツいのがこの世界の設定よ。
もちろん、実際に貴族になってみれば貴族なりの苦労が付きまとうのですが、そこはオルキスの置かれた環境と比べるものでは無いでしょう。
「それじゃあ、オルキスはカレンちゃんやエルゼンとは特にお友達になりたくないってこと!? そんなの嫌よ!」
ヒロさんが焦って言ったわ。
「――まあ、俺たち貴族層を毛嫌いする者が居るのも仕方ないことだ。むしろこうやって一般人のヒロを囲んで騎士、子爵、公爵の家柄が揃うほうが珍しい」
……そう言えばそうですわね。
それもこれもヒロさんの素晴らしい人格のおかげなんでしょうけれど!
更に先生は大公閣下なんて、絶対にあり得ないわ。
「だからやっぱりここは力づくで勝負じゃねーのか?」
キースが考えながら発言しましたわ。
「喧嘩じゃ何も解決しないでしょ! キースったらいつも腕っぷしで解決しようとするんだから!」
―――あ。そう言えば。ニーハイムス様と一昨日、あんなやりとりが有りましたわ。
『ありがとうございます。それでは、学院で何か有れば協力していただけますか?』
『ええ、もちろん!』
「ニース先生にも相談してみましょうか……?」
考える人は多ければ多いほど、活路が見いだせるかもしれませんわ……!
※
私たちは、魔法理論学の職務室のニーハイムス様こと、ニース先生を訊ねたわ。
「やあ、みんな仲良くお揃いでどうしたんだい?」
ニース先生は執務室に優しく迎え入れてくださったわ。
職務室は教員一人ひとりに与えられた専門のお部屋ですの。私たち4人でお邪魔したら狭いかと思いましたが、案外広くて皆すんなりと座れましたわ。
「ニース先生! 実はかくかくしかじか~」
ヒロさんが手短にお話しを纏めてくださったわ。
「なるほど。それでオルキスとの関係をどうにかしたいと……」
ニース先生は一瞬、私の方を流し見ましたわ。目と目が合いました。
「……まずはオルキスのことを直接、よく知ろうか?」
ニース先生はごくごく普通の意見を仰ったわ。
「私たちはオルキスのことはこの学院のことしか知らないからね」
「……確かに。私生活は謎に包まれていますね……! この前の子猫ちゃんの一件くらいしか私たちは知らないわ」
ヒロさんが話に乗り出してきたの。
そう言えばそうね。私のオルキスに対する知識は前世でプレイした『花と嵐と恋の華~魔法学院でドキドキ☆スクランブル~』の世界の中での知識であって、この現世での知識ではありませんわ。
「――知ってみたくもありますわね」
「そうだなー、俺もアイツの性格よく知らねーし」
「……同感だ。俺もヒロとカレンから噂には聞いたが、直接この目で何かを見たわけではないからな」
キースとエルゼンもその気になってきたわ。
かくして、私たちはオルキスのことをよく知る為に動き始めたのですわ――
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