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第4章
【36】優しい皆に囲まれて!
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――月の曜日。
私は朝、エルゼンたちにご挨拶と感謝とお詫びをする為にいち早く学院に赴きましたの。
まず最初にクラスにやって来たのはエルゼンでしたわ。
「エルゼン、おはようございます――」
「ああ、カレン! 金の曜日は無事なようで良かった。俺の伝えた情報のせいだろう? 本当に済まな――」
「受け取り方が悪かった私のせいですわ。エルゼンは何も謝ることはありません。それどころか、あなたの行動には感謝しかありません……!」
「カレン――」
「俺とニー…ニース先生の他には、ヒロとにキースとオルキスとシオン神父が一緒にカレンを捜索してくれていた。そちらにもひとこと伝えるといいだろう」
「ありがとうございます。ニース先生には昨日、感謝をお伝えしましたわ」
「――……そうか。良かったな」
とりあえず、クラスの中で唯一、ついにニース先生の正体を知ってしまったのがエルゼンで良かったですわ。他の皆さんにもそのうち、騙すこと無くお伝えできたら嬉しいのですが――――
「あーっ! カレンちゃん来てる! 良かったぁ!!」
次に教室に来たのはヒロさんとベルさんでした。
ヒロさんが私に抱きついて来ましたわ! 私もしっかり受け止めて、抱き返しました。
「ヒロさん……! 一昨日はごめんなさい! ヒロさんにも心配を掛けてしまったようね……」
「ううん、いいのよ。誰だって何処かに行きたくなる時って有ると思うわ! カレンちゃんはそれがたまたま一昨日だっただけでしょう?」
「ヒロさん……ありがとう」
ヒロさんも何処かに行きたくなる時があるのかしら? こんなに明るいのに?
次に教室にやって来たのはキースとオルキス、ほぼ同時でしたわ。
「キース、オルキス、金の曜日の放課後はご迷惑をお掛けしました。ありがとうございます」
キースは言いましたわ。
「いいってことよ! それにカレン捜索、ちょっとした学院探検みたいで面白かったぜ。それでチャラな!」
オルキスはと言えば。
「キース。それはいくら何でもカレンに無礼だろう。……皆で探した。良かった、カレン」
「おふたりとも、ありがとうございます……!」
とりあえず、クラスの皆様にはお礼が出来て良かったですわ。
皆、優しい心で私を迎えてくださって……感謝しかありません。
――昼休み。
私は昼食もそこそこに、シオン神父様に会いに校舎裏の教会に向かいました。
「おや、カレンさんではないですか」
教会の目の前で、シオン神父様とたまたま居合わせましたわ。
「シオン神父様、こんにちはごきげんよう。」
「はい、ごきげんよう」
「先日は、私の捜索に加わってくださったとの事で、誠に申し訳有りませんでした。そして、ありがとうございました」
「いいえ。よろしいのですよ。どうせニースだかニーハイムスだかが原因でしょう?」
「……その通りなのですが、それでも行動に移してしまったのは自分なので、自分をもっと律するべきでしたわ」
「恋の病には色々な症状が有りますからね。仕方が有りません」
「まあ!『恋の病』……!」
私は顔が赤くなってしまいましたわ。
「あれだけ学院中を捜索しても見つからなかったのです。きっとリュオン様に『神隠し』でも使われていたのでしょう――?」
すごいわ。シオン神父様、何でもお見通しね。
「シオン神父様もリュオン様にお会いしたのですか?」
「はい。ですがリュオン様は私より誰よりも、真っ先にニーハイムスに向かっていき、そのまま林に消えてしまいました。きっとニーハイムスに説教でもしないと気が済まなかったのではないでしょうか?」
シオン神父様は苦笑しておられるわ。
「ほら、次の授業が始まってしまいますよ。今日はしっかり出席しないと、ね?」
「――……はい!」
私は、教室へと急ぎ足で向かったのでした――
そうだわ、リュオン様にもご挨拶しておかなくては。
放課後には林の泉へ向かいましょう。
――放課後。
無事(?)、午後の授業を終えて、私は真っ先に林の泉へひとりで向かいました。
ヒロさんたちは学院裏の休憩所で魔法の練習をしているはずですわ。
「リュオン様。いらっしゃいますか? カレンです」
泉の側でリュオン様に聞こえるように声を出しました。
リュオン様は光の球になって小さなサイズで私の元へ飛んで来てくださいました。その後、いつもの人間サイズに戻って。
「おお、カレン、わざわざ来てくれたのか。あの後は……大丈夫なようじゃのう?」
「はい、リュオン様のおかげですわ! あの時、リュオン様がお家に招いてくださっていなければ私は皆さんに泣き崩れた姿を晒してしまっていたことでしょう――」
「たまにはそれでもいいんじゃよ」
「嫌ですわ。恥ずかしい」
「ふはは。あれだけ泣いておいて、まだ意地を張るかカレン」
「――……そう言えば、シオン神父様にお聞きしましたけれど、ニーハイムス様にも何か仰られたとか?」
「……なぁに。大したことでは無いよ。少しだけ、カレンの事で心を揺さぶっただけじゃ」
……『少しだけ』? 『揺さぶる』? このリュオン様がニーハイムス様にそんな手加減をするようには見えませんけれど……。
「カレンは知らんでもいいことじゃよ」
リュオン様は終始笑顔でしたわ。
※
――夜。私の屋敷、私室にて。
今夜もニーハイムス様がやって来てくださいましたわ。
私が学院で、皆さんと上手くご挨拶出来たのかご心配だったみたい。
「――それでは全員と顔を合わせることが出来たのですね。良かった」
「はい! 皆さん、深い懐で私を受け止めてくださいましたわ――」
「……カレンの周りには優しい者たちが集まりますね」
……それは『悪役令嬢の私の周り』ではなくて『主人公のヒロさんの周り』なのですけれど……。
この際、そのことは置いておきましょう。
「……中でもニーハイムス様は、特別私にお優しいですわ」
「えっ」
瞬間、ニーハイムス様の美しい表情が緩んで頬が赤くなったのを見逃しませんでした。
「――あら、ニーハイムス様、お可愛い……!」
「――……やめて下さいカレン! 男性に向かって『可愛い』なんて――」
「ふふっ。私は正直に感想を述べたまでですのよ」
「可愛さなら貴女が一番でしょう――!」
今度は横を向いてむくれてしまいましたわ。
そんなところも少し、子供っぽくて可愛いですわ。と言ったら更にむくれてしまうかしら?
ニーハイムス様は私の手を取り仰ったわ。
「これでまた、とりあえずは平穏な日々が訪れますね――」
「ええ、そうですわね――」
あら? 何か大切なことを忘れている気がします。
「…………ちょっと待ってください、ニーハイムス様」
「どうしましたカレン?」
「ベルさんですわ――」
「ベルがどうかしましたか?」
「ベルさんが『聖女』に伴う『聖飛竜』なら、この国に何らかの『厄災』――おとぎ話では『悪魔』――が襲いかかるということではありませんの?」
「それは――――」
流石にニーハイムス様もお気付きの様子でしたわ。
「しかし、今はその予兆が有りません。我々王家も念入りに調査を続けています」
「……私たち、落ち着いて婚前生活を送っている場合ではなくなるかも知れませんね……」
「せめてカレンとふたりきりの時は、こうしてのんびりして、貴女に癒やされたいのですけどね」
そうしている間にも、私たちの知らぬ間に『厄災』――『悪魔』――は徐々にこの国に近付いていたのです――――
私は朝、エルゼンたちにご挨拶と感謝とお詫びをする為にいち早く学院に赴きましたの。
まず最初にクラスにやって来たのはエルゼンでしたわ。
「エルゼン、おはようございます――」
「ああ、カレン! 金の曜日は無事なようで良かった。俺の伝えた情報のせいだろう? 本当に済まな――」
「受け取り方が悪かった私のせいですわ。エルゼンは何も謝ることはありません。それどころか、あなたの行動には感謝しかありません……!」
「カレン――」
「俺とニー…ニース先生の他には、ヒロとにキースとオルキスとシオン神父が一緒にカレンを捜索してくれていた。そちらにもひとこと伝えるといいだろう」
「ありがとうございます。ニース先生には昨日、感謝をお伝えしましたわ」
「――……そうか。良かったな」
とりあえず、クラスの中で唯一、ついにニース先生の正体を知ってしまったのがエルゼンで良かったですわ。他の皆さんにもそのうち、騙すこと無くお伝えできたら嬉しいのですが――――
「あーっ! カレンちゃん来てる! 良かったぁ!!」
次に教室に来たのはヒロさんとベルさんでした。
ヒロさんが私に抱きついて来ましたわ! 私もしっかり受け止めて、抱き返しました。
「ヒロさん……! 一昨日はごめんなさい! ヒロさんにも心配を掛けてしまったようね……」
「ううん、いいのよ。誰だって何処かに行きたくなる時って有ると思うわ! カレンちゃんはそれがたまたま一昨日だっただけでしょう?」
「ヒロさん……ありがとう」
ヒロさんも何処かに行きたくなる時があるのかしら? こんなに明るいのに?
次に教室にやって来たのはキースとオルキス、ほぼ同時でしたわ。
「キース、オルキス、金の曜日の放課後はご迷惑をお掛けしました。ありがとうございます」
キースは言いましたわ。
「いいってことよ! それにカレン捜索、ちょっとした学院探検みたいで面白かったぜ。それでチャラな!」
オルキスはと言えば。
「キース。それはいくら何でもカレンに無礼だろう。……皆で探した。良かった、カレン」
「おふたりとも、ありがとうございます……!」
とりあえず、クラスの皆様にはお礼が出来て良かったですわ。
皆、優しい心で私を迎えてくださって……感謝しかありません。
――昼休み。
私は昼食もそこそこに、シオン神父様に会いに校舎裏の教会に向かいました。
「おや、カレンさんではないですか」
教会の目の前で、シオン神父様とたまたま居合わせましたわ。
「シオン神父様、こんにちはごきげんよう。」
「はい、ごきげんよう」
「先日は、私の捜索に加わってくださったとの事で、誠に申し訳有りませんでした。そして、ありがとうございました」
「いいえ。よろしいのですよ。どうせニースだかニーハイムスだかが原因でしょう?」
「……その通りなのですが、それでも行動に移してしまったのは自分なので、自分をもっと律するべきでしたわ」
「恋の病には色々な症状が有りますからね。仕方が有りません」
「まあ!『恋の病』……!」
私は顔が赤くなってしまいましたわ。
「あれだけ学院中を捜索しても見つからなかったのです。きっとリュオン様に『神隠し』でも使われていたのでしょう――?」
すごいわ。シオン神父様、何でもお見通しね。
「シオン神父様もリュオン様にお会いしたのですか?」
「はい。ですがリュオン様は私より誰よりも、真っ先にニーハイムスに向かっていき、そのまま林に消えてしまいました。きっとニーハイムスに説教でもしないと気が済まなかったのではないでしょうか?」
シオン神父様は苦笑しておられるわ。
「ほら、次の授業が始まってしまいますよ。今日はしっかり出席しないと、ね?」
「――……はい!」
私は、教室へと急ぎ足で向かったのでした――
そうだわ、リュオン様にもご挨拶しておかなくては。
放課後には林の泉へ向かいましょう。
――放課後。
無事(?)、午後の授業を終えて、私は真っ先に林の泉へひとりで向かいました。
ヒロさんたちは学院裏の休憩所で魔法の練習をしているはずですわ。
「リュオン様。いらっしゃいますか? カレンです」
泉の側でリュオン様に聞こえるように声を出しました。
リュオン様は光の球になって小さなサイズで私の元へ飛んで来てくださいました。その後、いつもの人間サイズに戻って。
「おお、カレン、わざわざ来てくれたのか。あの後は……大丈夫なようじゃのう?」
「はい、リュオン様のおかげですわ! あの時、リュオン様がお家に招いてくださっていなければ私は皆さんに泣き崩れた姿を晒してしまっていたことでしょう――」
「たまにはそれでもいいんじゃよ」
「嫌ですわ。恥ずかしい」
「ふはは。あれだけ泣いておいて、まだ意地を張るかカレン」
「――……そう言えば、シオン神父様にお聞きしましたけれど、ニーハイムス様にも何か仰られたとか?」
「……なぁに。大したことでは無いよ。少しだけ、カレンの事で心を揺さぶっただけじゃ」
……『少しだけ』? 『揺さぶる』? このリュオン様がニーハイムス様にそんな手加減をするようには見えませんけれど……。
「カレンは知らんでもいいことじゃよ」
リュオン様は終始笑顔でしたわ。
※
――夜。私の屋敷、私室にて。
今夜もニーハイムス様がやって来てくださいましたわ。
私が学院で、皆さんと上手くご挨拶出来たのかご心配だったみたい。
「――それでは全員と顔を合わせることが出来たのですね。良かった」
「はい! 皆さん、深い懐で私を受け止めてくださいましたわ――」
「……カレンの周りには優しい者たちが集まりますね」
……それは『悪役令嬢の私の周り』ではなくて『主人公のヒロさんの周り』なのですけれど……。
この際、そのことは置いておきましょう。
「……中でもニーハイムス様は、特別私にお優しいですわ」
「えっ」
瞬間、ニーハイムス様の美しい表情が緩んで頬が赤くなったのを見逃しませんでした。
「――あら、ニーハイムス様、お可愛い……!」
「――……やめて下さいカレン! 男性に向かって『可愛い』なんて――」
「ふふっ。私は正直に感想を述べたまでですのよ」
「可愛さなら貴女が一番でしょう――!」
今度は横を向いてむくれてしまいましたわ。
そんなところも少し、子供っぽくて可愛いですわ。と言ったら更にむくれてしまうかしら?
ニーハイムス様は私の手を取り仰ったわ。
「これでまた、とりあえずは平穏な日々が訪れますね――」
「ええ、そうですわね――」
あら? 何か大切なことを忘れている気がします。
「…………ちょっと待ってください、ニーハイムス様」
「どうしましたカレン?」
「ベルさんですわ――」
「ベルがどうかしましたか?」
「ベルさんが『聖女』に伴う『聖飛竜』なら、この国に何らかの『厄災』――おとぎ話では『悪魔』――が襲いかかるということではありませんの?」
「それは――――」
流石にニーハイムス様もお気付きの様子でしたわ。
「しかし、今はその予兆が有りません。我々王家も念入りに調査を続けています」
「……私たち、落ち着いて婚前生活を送っている場合ではなくなるかも知れませんね……」
「せめてカレンとふたりきりの時は、こうしてのんびりして、貴女に癒やされたいのですけどね」
そうしている間にも、私たちの知らぬ間に『厄災』――『悪魔』――は徐々にこの国に近付いていたのです――――
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