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第三章 吟遊詩人の罪
運命の皮肉
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「素晴らしいスキルを習得した吟遊詩人がいると聞いて来たんです。我々と旅に出ませんか?」
「あなたのためにわざわざこの村まで足を運んだんです。どうかパーティに加わってください」
結婚から程なくして、アルトーがビビと暮らす小さな家には冒険者たちがたびたび訪ねてくるようになった。
用件はみな同じだ。
アルトーを是非、仲間に加えたい。
一緒に旅をしてほしい。
冒険にあたり、アルトーの力を貸してほしい。
皮肉なものだった。ギルドに登録した当初はアルトーのほうから頼んでも誰も仲間にしてくれなかったのに、アルトーがさまざまな楽曲を習得してからは、向こうから「パーティに入ってくれ」と頭を下げてくるようになった。
断っても断っても砂糖にたかる蟻のように陸続とやってくる冒険者たちに、アルトーはただ苦笑するばかりだった。
吟遊詩人のスキルは、初めのうちはほとんど役に立たない。だが、経験を積んだ吟遊詩人がパーティにひとり加われば、モンスターとの戦闘をかなり有利に進めることができる。
それに気付いた冒険者たちが、「優れた吟遊詩人がいる」との評判を聞きつけてアルトーの元に集まってくるのだった。
この思いがけない成り行きに、アルトーはただ笑っているばかりだった。
が、すでにお腹の大きくなったビビは不安そうに、
「アルトー。あなた、旅になんか出ないわよね?」
「何を言うんだ。君を置いていくはずがないだろ」
アルトーがなだめても、ビビは眉を曇らせている。
アルトーは笑いながら、
「今、僕にとって一番大切なものは君だ。それに、産まれてくる子ども。貧しくとも、家族みんなで幸福に暮らすことができれば僕は満足さ」
ビビに聞かせた言葉にも嘘偽りはなかった。アルトーは心からビビを愛し、ビビと子どものためだけに生きていくことを決めていた。
「あなたのためにわざわざこの村まで足を運んだんです。どうかパーティに加わってください」
結婚から程なくして、アルトーがビビと暮らす小さな家には冒険者たちがたびたび訪ねてくるようになった。
用件はみな同じだ。
アルトーを是非、仲間に加えたい。
一緒に旅をしてほしい。
冒険にあたり、アルトーの力を貸してほしい。
皮肉なものだった。ギルドに登録した当初はアルトーのほうから頼んでも誰も仲間にしてくれなかったのに、アルトーがさまざまな楽曲を習得してからは、向こうから「パーティに入ってくれ」と頭を下げてくるようになった。
断っても断っても砂糖にたかる蟻のように陸続とやってくる冒険者たちに、アルトーはただ苦笑するばかりだった。
吟遊詩人のスキルは、初めのうちはほとんど役に立たない。だが、経験を積んだ吟遊詩人がパーティにひとり加われば、モンスターとの戦闘をかなり有利に進めることができる。
それに気付いた冒険者たちが、「優れた吟遊詩人がいる」との評判を聞きつけてアルトーの元に集まってくるのだった。
この思いがけない成り行きに、アルトーはただ笑っているばかりだった。
が、すでにお腹の大きくなったビビは不安そうに、
「アルトー。あなた、旅になんか出ないわよね?」
「何を言うんだ。君を置いていくはずがないだろ」
アルトーがなだめても、ビビは眉を曇らせている。
アルトーは笑いながら、
「今、僕にとって一番大切なものは君だ。それに、産まれてくる子ども。貧しくとも、家族みんなで幸福に暮らすことができれば僕は満足さ」
ビビに聞かせた言葉にも嘘偽りはなかった。アルトーは心からビビを愛し、ビビと子どものためだけに生きていくことを決めていた。
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