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第1章 始まりの街『グリィト』
第12話 いざ、冒険者ギルドへ!
しおりを挟むザレックさんの模擬戦を合格したわたしは、見事に無罪放免を勝ち取った。
これでグリィトの街を堂々と歩くことができる!
そんなわたしはザレックさんに案内され、一つの建物に訪れた。
「――わあ、ここが冒険者ギルドなんだー! すごいね、モッフィ!!」
「ふん、そう騒ぐほどのものではあるまい」
もー、分かってないなぁ、モッフィは!
こういう、The・異世界! みたいな場所に訪れるのが良いんだよ!!
わたしは目の前に堂々と建つ、木造建築の冒険者ギルドを見上げた。
武器を模した看板マークも掲げられている。
「じゃ、入るぞ」
ザレックさんに扉を開けてもらい、お礼を言いながらギルド内に足を踏み入れた。
「うわー! すごいすごい! モ、モノホンの冒険者ギルド! 荒くれ者の冒険者たち! あ、あっちには美人な受付嬢さんまで!!」
ギルドの中は、何人もの冒険者で賑わっていた。
クエストボードの前で難しい顔をしている魔法使いや、テーブル席でお酒をあおる戦士など、色々なタイプの冒険者がいる。でも、やっぱり男性比率が多めかな。
アルコールとむさ苦しさに覆われるギルドの中には、美人な受付嬢さんが営業スマイルでクエストの受注なんかをしているのも見えた。
これこれ! これぞ異世界転生の醍醐味だよ! ギルドを見物してるだけですっごいテンション上がる!!
まるで遊園地に遊びに来た子供のようにキョロキョロとギルド中を見渡していると、ザレックさんが苦笑混じりに言った。
「たかが冒険者ギルドでそんなに喜んでくれるとは嬉しいな。だが、ここじゃちょっとうるさいから、奥のギルドマスターの部屋に向かおうか」
「は、はい」
はぐれないように、ザレックさんの後ろをたたたっと駆けていく。
すると、テーブル席で食事をしていた三人組の冒険者が声をあげた。
「お、アイリ! 大丈夫だったか!?」
「あ、ベルドさん!」
そちらに目を向けると、さっき馬車で一緒だった冒険者パーティの人たちだった。
「おお、ベルドたちか。護衛依頼ご苦労だったな」
ザレックさんも反応し、足を止めた。
女魔法使いのジェシーさんと、タンク役のマーレスさんもわたしたちの存在に気付いて挨拶をしてくれた。
ベルドさんが思い出したように言った。
「つか、ギルマス! なんでアイリと一緒に!? アイリは門兵にしょっぴかれたはずじゃ!」
「あん? まあ、色々あってな」
「えー、何だよそれ。教えてくれよ」
「気が向いたらな」
ザレックさんは適当にはぐらかし、応えた。
ぶつくさと文句を言うベルドの横から、ジェシーさんとマーレスさんがわたしに話しかけてくる。
「でも、アイリちゃんが無事で良かったわ! アイリちゃんが門兵に連れて行かれちゃった後、私たちもアイリちゃんを解放してって頼みに行ったんだけど……」
「兵士たちに止められてしまってな。門前払いの状態で何もすることができなかったんだ。助けになれず、不甲斐ない」
「そ、そんな! その気持ちだけで十分ですよ!」
ガチトーンで落ち込んでいるジェシーさんとマーレスさんを慰める。
そして、わたしは得意気に胸を張った。
「それに、わたしはもう門兵さんにしょっぴかれることはなくなったので!」
「? それはどういう意味だ、アイリ?」
不思議そうに尋ねてくるベルドさん。
その質問への回答は、ザレックさんがしてくれた。
「今からアイリにギルドカードを渡すところなんだ」
その言葉に、ベルドさんたちはぽかーんと沈黙して。
「「「はあ!? アイリにギルドカードを!?」」」
三人同時に叫ぶ。
そのせいで、ギルド内の注目を集めてしまった。
ち、ちょっと、あんまり悪目立ちするようなことはやめてよ!
「お、おい正気かギルマス!? アイリはまだこんなチビスケだぞ!?」
誰がチビスケだ。
幼女だから背は低いけども。
中身は立派なレディーだよ。
「分かってるよ。だが、冒険者試験をクリアしたんだから、問題はねぇさ」
「冒険者試験?」
はじめて聞くワードだ。
ザレックさんが教えてくれた。
「冒険者試験ってのは、冒険者として認めるかどうな見極める試験のことだ。これをクリアしないと、冒険者とは認められない。さっき俺と戦っただろ? あれが冒険者試験だ」
「え、そうなの!?」
「あの試験で、俺に認められれば晴れて冒険者として活動ができるようになる。まあ、冒険者になれるかどうかの一番最初の試験だから、俺も多少は甘めに見るんだがな」
ベルドさんが驚いた様子で言葉を引き継いだ。
「で、でも明らかに冒険者として不適格だと容赦なく弾かれるからな。俺もガキの頃に調子に乗って挑戦して、軽くボコられて突っぱねられちまったし。それをアイリみたいな幼女がクリアしちまうとは……」
「ねぇ、これ……もしかして歴代最年少なんじゃないかしら?」
「うむ。俺が聞いた中でも、最も若くて十二歳だったはずだ」
ベルドさんに続き、女魔法使いのジェシーさんとタンクのマーレスさんが補足した。
「あの、六歳でも冒険者になれるんですか?」
「冒険者になるのに年齢制限はないぞ。理屈上は、赤ん坊からヨボヨボの爺さんまで、広く門戸は開かれている!」
まあ、それならいいのかな?
でも多分、六歳の幼女が冒険者になれる可能性はそもそも考慮していないと思うけどね。
めちゃくちゃイレギュラーだ。
「んじゃ、行くぞアイリ。お前にギルドカードを発行する」
「は、はい! ベルドさんたちも、失礼します!」
わたしはベルドさんたちに別れの挨拶をしてから、先を進むザレックさんの背中を追いかけるのだった。
■ ■ ■
「やったー! ギルドカードを手に入れたー!!」
わたしは自分のギルドカードを掲げた。
ギルドの受付のテーブルに飛び乗ったモッフィが微笑む。
「良かったのぅ、アイリよ。これでもう人間らに面倒な足止めを食らうことはないようじゃな」
「そう! この身分証があれば堂々と街を行き来することができるよ!」
社会的な身分証のありがたさに感激するわたしに、ザレックさんが言った。
「アイリの冒険者としての役職なんだが、『テイマー』で登録して問題ないか?」
「はい! それでお願いします!」
まあ、テイマーの魔法とか全く分からないけど。
でもわたしの戦力の大部分はモッフィが担っているし、間違いじゃないだろう。
「分かった。ならモッフィを使い魔として登録しておこう」
ザレックさんは職員に指示を出し、データ上でのわたしの役職登録を済ます。
「だが、アイリは魔法もかなり使えるよな。さっきの模擬戦で使っていた水魔法は、中級冒険者が扱うくらいの威力はあったが……テイマーだけじゃなく、魔法の才能も秘めてるとは末恐ろしい幼女だな」
「え、えへへ」
ザレックさんに褒められ、照れてしまう。
ややあって、ザレックさんが尋ねてきた。
「最初から気になってたんだが、その……アイリがかけてる黒いメガネはなんなんだ?」
「あ、これはちょっと目に問題があって……その補助道具みたいなものです」
ネモさんに説明した内容を言う。
いや、ネモさんの時よりも洗練された言い訳だった。
『虹の魔眼』のことや『神のサングラス』のスキルのことなんかは話せないので、これからは"目の病"みたいな理由で誤魔化しておこう。
ザレックさんは少し驚いた様子だった。
「っ、そうなのか。体に問題はないのか?」
「はい! このサングラスをしていれば、大丈夫です!」
「ふっ、そうか。なら良かった」
ザレックさんは優しく微笑むと、ギルド職員がやって来た。
どうやら、わたしの役職登録も完了したみたい。
これで晴れて、わたしは『テイマー』冒険者のアイリという肩書きを手に入れた!
「いつまでこの街にいるのか知らないが、ぜひ冒険者として活躍してくれることを祈ってるぞ。何か困ったことがあったらいつでもこのギルドを頼るといい」
「はい、ありがとうございます!」
ザレックさんがポンポンとわたしの頭を撫でた。
人に頭を撫でられるのって超久しぶりだから、何だかじんわりと温かい気持ちが滲んできた。
「それでは、今後の活躍を期待しているぞ――冒険者アイリ!」
ザレックさんの激励を受け、わたしは『冒険者』へと転身したのだった!
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