36 / 291
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第60話 お屋敷を受け取らされちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むオリビアに連れ出され、三十分も馬車に揺られて案内された先にあったのは、一軒の豪邸。
そしてこの豪邸こそが、オリビアが言うわたしへのお礼の品らしい。
「いやいやいやいや! こんな豪邸、お礼の品なんて軽い言葉で片付けていいモンじゃないから! 受け取れるわけないでしょ!?」
目の前には立派な門があり、その向こうには広大な庭が広がっている。
これだけ広ければ、家庭菜園でもしたら自給自足できるのではないかと思うくらいだ。
そして庭の奥には大きな屋敷。
いかにも貴族やら大商人やらが住んでいそうな豪邸だ。
さすがにオリビアの屋敷よりはレベルが低いけど、それでも一般市民が住むには明らかに分不相応すぎる。
「でっかい家でんなぁ! こんな家をプレゼントされるなんて、さすがはご主人や!」
「ぷるんぷるーん!」
大層ご立派なお屋敷を見て、わいちゃんはパタパタとちっちゃな翼をはばたかせて、サラはぽよんぽよんと跳ねてテンションを上げている。
どうやら従魔組はオリビアのプレゼントが気に入ったようだ。
だけど、この子たちはわかっていない。
わたしの元いた世界では、タダより怖いものはない、という言葉もある。
いかに命を救われた恩人へのお礼の品と言えども、こんな屋敷をポンとプレゼントされて簡単には受け取れない。
オリビアは貴族だからお金は持ってるんだろうけど、ここまで豪華すぎるプレゼントを貰ってしまっては、何か裏があるのではないかとわたしの中に疑念が生まれてしまう。
わたしが屋敷のプレゼントに及び腰になっているのを見て、オリビアは口に手を当てて微笑んだ。
「ふふ、どうかお気になさらないでくださいコロネさん。こちらの屋敷は元々我がウォルトカノン家が上級使用人の住居として所有していたものなのです。しかし、ロックドラゴン襲撃とその後の不況により以前の使用人はみな辞めてしまい、ここにはもう誰も居住しておりませんので。実は三年ほど前から売りに出していた物件なのですが、このまま放っておいても買い手がつきそうにないのでそれならばと今回コロネさんにプレゼントしようと思った次第なのです」
「いや、それにしたってさすがにこのお屋敷は……」
「たしかに外装は立派ですが、見た目ほど高値がつく物件でもないのです。実際、ロックドラゴン襲撃時にはこの屋敷の一部が破壊されたのですが、その補修も最低限のものです。それにしばらく放置しておりましたので住むには一度清掃する必要があるという欠点もございます」
「……それってつまり、所有し続けてるだけでも維持費とかがかかるから、それならいっそわたしにあげちゃおうってこと?」
「そ、そういう捉え方もできるかもしれません。ですが、コロネさんにとっても悪くないと思います! 不安定な宿屋生活から抜け出して夢のマイホームを持てちゃうんですよ!? マイホームは冒険者の憧れだと聞きますよ!!」
夢のマイホームって異世界でも共通なんだね。
みんなマイホームは欲しいものなのか。
そう言えば一昨日クレアが別れ際に、広い家に住めるようになれば一人前だ、みたいなこと言ってたね。
たしかクレアが組んでるデリックのパーティは大きな家を購入して、そこでパーティメンバーと住んでるんだっけ。
もしわたしがこのお屋敷を受け取ったら、ナターリャちゃん、サラ、わいちゃんと一緒に住むことができるんだね。
しかもタダで貰ってるから、これから宿屋で暮らすよりも家賃とかは格段に安くなる。
お金がかかるところといえば屋敷の清掃費と補修費くらい?
それくらいのお金なら多分わたしのお金で払えるかな?
「……そう考えるとちょっと欲しくなってきたかも」
「本当ですか!? さすがはコロネさんです!」
「コ、コロネお姉ちゃん。ホントにこんな凄そうなお屋敷もらっちゃっていいの?」
「うーん、そうだなぁ……」
わたしはスッとオリビアを見る。
そしてスススッとオリビアに接近すると、華奢な肩をガシッとつかむ。
「一応確認しておくけど、このお屋敷をもらったからといってわたしに何かさせたりするつもりではないよね? 何か裏があるならできれば今言って欲しいんだけど」
「う、裏だなんて滅相もないです! このお屋敷は私がお父様に直接掛け合って、話し合いの末に勝ち取ったものです! たしかにコロネさんがこの街に住んでくれたらいつでも会いに行けるな~とは考えましたけど、コロネさんを騙すようなつもりは一切ないとウォルトカノン家の名にかけて誓います!!」
オリビアは真っ直ぐな瞳でわたしを見つめて断言する。
その目は、とても嘘をついているようには見えない。
いや、そもそも出合った時からオリビアは平気で嘘をつくようなタイプの子には見えなかった。
貴族令嬢の割には傲慢さは感じられないし、わたしやナターリャちゃんみたいな一般人相手でも同じ目線で接してくれる。
こんな素直な子がわたしを騙すような真似をするはずがないよね。
ただ、貴族ゆえかプレゼントの金銭感覚がずれていただけなのだろう。
ここで断ってしまったら、オリビアの想いを無下にすることになっちゃうね。
「……そうだよね。疑ってごめんオリビア。こんな豪邸をもらうのは初めてだったから、つい疑心暗鬼になっちゃって」
「いえ、お気になさらないでください。普通の方でしたら、皆さん同じ反応をなされたと思います。それでコロネさん。こちらのお屋敷は――」
「うん。オリビアの気持ち、ありがたく受け取らせてもらうよ!」
わたしが屋敷を受け取る意思を示すと、オリビアはぱっと笑顔になる。
「ありがとうございます! コロネさん、大好きです!」
「おっ、と!」
オリビアは嬉しそうな表情でわたしに抱きついてくる。
いきなり抱きついてきたから驚いたけど、バランスは崩さずオリビアを受け止める。
年の割には大人っぽい印象があったオリビアだけど、こう見ると意外と甘えん坊なのかもしれない。
「ずるいオリビアちゃん! ナターリャもっ!」
抱きつくオリビアに対抗して、ナターリャちゃんもわたしに抱きついてくる。
ナターリャちゃんもまだまだ甘えたがり盛りだね。
しばらくの間オリビアとナターリャちゃんの頭をなでなでして甘やかしていると、満足したのかオリビアがおずおずと離れる。
「ありがとうございますコロネさん!」
「もう大丈夫?」
「はい!」
「ナターリャちゃんは?」
「うぅぅ、ナターリャはもう少しぃ……」
ナターリャちゃんはまだ甘え足りないみたいだ。
そんな可愛らしい姿をオリビアは微笑ましそうに見ていると、一つ提案してきた。
「せっかくなので、お屋敷の中を少し見てみませんか?」
「え、今からこのお屋敷の中を?」
「はい! いざ、お屋敷探検ですっ!」
オリビアはぐっと拳を握り、元気に宣言した。
597
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。