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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第298話 本職の凄さを分からされちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むセシーナさんから解放され、自分のお店へと舞い戻ったわたしは、厨房に置かれた大量のお弁当箱を眺めて呆然とする。
エミリーの話では、これらのお弁当は全てアリアちゃんとイリアちゃんが主導して作り上げたものらしい。
わたしが席をはずしていたのはせいぜい数時間程度だけど、今わたしの目の前のテーブルに積み上げられたお弁当は余裕で百を超えているだろう。
わたしはひきつった笑みを浮かべながら、アリアちゃんたちに向き直る。
「えっと、このお弁当はアリアちゃんたちが……?」
「はい! コロネさんが霧の解消に取り組まれている間に、私たちの方で作り上げました!」
「す、すごいね。わたし抜きでもこんなに作れるんだ。エミリーの話だと三百個くらいあるって聞いたけど……」
「昨日コロネさんからお弁当の作り方は教わったので、問題ありませんでした! ご飯やおかずの配分、作る順番なんかも事前にシミュレーションできましたし、かなり効率よく料理作りができたかと思います!」
「そ、それに、コロネさんのお店で出すお弁当の種類も四種類だけなので、覚えやすかったです」
「あー、たしかに! たった四つならホントに楽だよね! ウチらの所の料理長なんか事細かく設定した料理が百個くらいあるし、何ならその日の気分しだいで新メニュー追加してきたりするし! それに比べたらコロネさんのお店がどれだけ良心的なことか!」
アリアちゃんは普段の自分の職場の料理長に対して盛大に毒吐いた。
それだけ色々と鬱憤が溜まっているようだ。
それにしても、チラッととんでもない情報がいくつか聞こえたんだけど……。
「そ、そういえばアリアちゃんとイリアちゃんが普段のレストランでどんな仕事をしてるかとか詳しくは聞いてなかったよね。たしかお皿洗いとかの雑用がメインって聞いてたような気がするんだけど」
「あ、はい! 基本は雑用です! だけどちょっとした料理なら作らせてもらえたりするんですよ」
「だけどそれも料理長の気まぐれなので、いつどの料理を頼まれても良いように、私たちはいっつもお店のメニューを勉強してるんです」
「それなのに料理長がいっつも新メニューだとかを考案するから、後追いする私たちは大変なんですよ。これは見習いの私たちだけじゃなく、本職の料理人の人たちも同じ意見なので、間違いないクレームですっ!」
「そ、そうだったんだね」
どうやらアリアちゃんたちも苦労しているらしい。
だけど、その話を聞いて少しは合点がいった。
日頃からそれだけハードな環境で料理スキルを研ぎ澄ましていたんだったら、わたしのお店で提供するお弁当四種類くらいなんてお茶の子さいさいだろう。
だからこそ、短時間で異常な数のお弁当を量産することに成功していたわけだ。
きっと二人が働いているレストランではもっとスパルタな仕事を任されているっぽいしね。
アリアちゃんとイリアちゃんの本来の姿を垣間見たわたしは、感嘆の言を述べると共に料理人の端くれとして尊敬の念も抱くのだった。
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