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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第299話 終業しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「よし、それじゃあ今日はこのくらいにしておこうか」
お店に戻ってきてさらに数時間ほど経ってから、わたしは皆に業務終了を宣言した。
窓を見るともう薄暗くなり始めているような頃合いで、仕事を終えるにはちょうどいい時間帯だ。
厨房に立って最後のお弁当を作り終え、テーブルに置きながら皆に告げたわたしに対し、エミリーたちも反応してくれる。
「コロネ様、本日はもうよろしいのですか」
「うん。もう夜になり始めてるし、今日はこれくらいでいいでしょ」
お弁当箱を積み上げて壮観な光景を眺めながら、エミリーに返す。
すると、奥の厨房で一仕事を終えたアリアちゃんが駆け寄ってきた。
「でも、明日は海豊祭の開催日なんですよ! コロネさん、私たちならまだまだ作れます!」
「あはは、ありがとね。でも、その気持ちだけ受け取っておくよ。さすがにこれ以上になると時間が遅くなりすぎちゃうし」
「私なら平気ですよ? いつもの料理長のお店なら、今ぐらいからディナーの仕込みとか手伝いに駆り出される時間帯ですし。ね、イリア」
「は、はい。わ、私もまだやれるだけの体力はあります……!」
アリアちゃんに促され、イリアちゃんも応える。
二人ともわたしとそんなに年が離れてるってわけでもないのに、バイタリティー高過ぎじゃない?
それともこの世界の見習いさんたちは皆これくらいストイックに仕事に取り組んでいるものなの?
現代日本で呑気なJKをやっていただけのわたしには到底真似できない芸当だ……!
だけど、さすがに今回の申し出は丁重にお断りさせてもらう。
「二人の普段の仕事は分からないけど、今日は本当にこれであがってもらって大丈夫だよ。たしかに明日お店はオープンするけど、明日もお弁当は作るわけだしね。あくまでも今日作ったのは万が一のためのストックっていうだけで。何なら、わたしのお弁当が全然売れなかった~ってパターンも普通にあるかもだし――」
「そんなことはありません! このお弁当の品々は、必ずバカ売れするに決まっています!」
「わ、私も、このお弁当は美味しくて何度でも食べたいなって思います……!」
二人の間髪を入れない返答に、わたしは少したじろぎながら答えた。
「そ、そうかな? そう言ってもらえると嬉しいよ。まあ、そうだね。作り手のわたしが弱気になってちゃお客さんにも失礼だしね。よし、明日は張り切ってお弁当を売りまくっちゃおう!!」
「「「おーーー!!!」」」
「ぷるーん!」
最後にスライムのサラの掛け声も合わさって、やがてわたしのお弁当屋さんの明かりが消えていく。
今日作ったお弁当は全てアイテムボックスとサラのお腹の中に収納されているから、腐ったり紛失したりといった問題はない。
さて、いよいよ明日はわたしのお店がオープンする日だ。
緊張するけど、いつも通り皆と一緒に美味しい料理を作っていくことにしよう!
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コメントありがとうございます!
ですよね……!
次からは絶対に研がせます!!(・□・;)
ほとんどの人が勘違いしてるので仕方ない事だとは思いますが、スカルだと頭蓋骨とか頭部とゆー意味になります。
この場合だと、ボーンドラゴンとかドラゴンスケルトンが正しかと
コメントありがとうございます!
そうだったのですね、私も勘違いしておりました……!
次からはスケルトン系の名前にするよう覚えておきます!
毎週お読みいただきありがとうございます!!