ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火

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その他

かりたもの

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「ピンポーン」
料理をしていたら、玄関のチャイムがなった。ガスをとめて玄関に出ると、幼馴染みの友人が立っていた。10年ぶりぐらいになるだろう?小中高校まで一緒で、卒業してからは疎遠になって全く会っていなかった女性だ。

「あ、久しぶり!元気?どうしてたの?」と聞くと彼女は黙って本を渡す。
それは太宰治の本だった。
「え、懐かしい。私が小学生の時に貸してた本じゃん。返しに…」
顔をあげると彼女の姿はもうなかった。
「あれ?」サンダルを履いて外を見回したが、廊下にはもう誰もいない。



「ピンポーン」
「はーい!」玄関に出る。
次の日も彼女はやってきていた。
今度は手に傘を持っていた。
中学の時に貸してたお気に入りの傘だ。

「昨日はどうしたの?すぐに帰ったみたいだけど…」
受け取った傘がまだ使えるかどうか、開いて確かめてみた。
ちょっと穴があいている。もう古いもんね。
「あれ?」
傘を閉じると彼女の姿は消えていた。



友達から電話がきた。いつものように世間話ししていると。
「そう言えば聞いた。高校の時、仲の良かったあのこ。覚えてる?」
最近うちによく来ることを言おうとした時だ。

「亡くなったらしいよ」

「え」驚きで耳を疑った。

「いつ、いつ亡くなったの?」

「えと、一週間ぐらい前だけど」と友達は言った。

「あの子。友達だったらさ~、とか言ってさ。よく人にものを借りてたよね」友達の話は続く。
でも、そこからの話はあまり頭に入って来なかった。
では、家を訪ねてくる女は一体何者なの?
私は震えで電話を落としてしまった。



時計をみる。21時35分。
思えば同じ時間に彼女はやってきている。

「ピンポーン」
玄関のチャイムがなる。
玄関のドアを開けるとまた彼女が立っていた。
今度は隣に大人の男性がいる。誰かに似ている。
すぐに思い出した。
高校時代に付き合ってた男性だ。
私は高校時代彼女に彼氏を取られた。
それで会うのも嫌になり関係を切った。
それが彼女と疎遠になった原因だ。
私はすぐにドアを閉めた。

「返さなくていい!返さなくていいから!」

私は叫んだ。
ドアの外は静かだ。
覗き穴を覗くとまだ二人はたっていた。


それからしばらくの間、私は友達の家に泊まった。
友人は事情を話すと私の話しには懐疑的だったが、快く泊めてくれた。
たまに家に帰ってくると玄関前に貸したものが置いてある。それらを片付けるとまた友達の家に泊めて貰った。

それからも、彼女は同じ時間にやってきては借りたものをおいていったようだ。
小学校の時に貸した消しゴム。中学の時貸したノート。高校の時に無くしたと思っていた自転車。他。今更返されても困るようなものばかりだ。

返せるものがなくなったのだろう。そのうち来なくなった。
もしかしたら彼女は死んでから後悔し、借りたものを返すことによって、私との関係を取り戻そうとしたのかも知れない。
今となってはわからないがそう思うようにした。

それにしても貸したお金だけはかえって来なかった。
それだけが私の心残りである。
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