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三章
何かしたい
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「いつも?」
藤ヶ谷が持っているチーズケーキクレープを「一口ください」とイチゴクレープと交換し、山吹の口がついた部分を齧りとっていた杉野は首を傾げる。
藤ヶ谷はクレープを食べ進めながら、うんうんと何度も頷いた。
「甘いもん好きでもないのに。俺のために、この店寄ってくれたし……」
「店を調べたのは山吹ですよ。それに」
杉野はチーズケーキクレープを飲み込むと、優しい目をして手を伸ばしてくる。
「藤ヶ谷さんが幸せそうに甘いものを食べてる顔を見ると元気になるんです」
近づいてくる手をなんだろうと思いながらもそのままにしていると、口元に触れられ胸が跳ねる。
すぐに離れていった杉野の親指には、チョコホイップクリームがついていた。
子どものようだと羞恥心を覚えたが、悟られないように笑ってみせる。
「俺ってそんな幸せそうな顔なのか」
「はい。かわいい顔、してます」
そう言って、杉野は親指のクリームを舌で舐めとる。
挑発するような艶やかな舌の動きと杉野の微笑みに、藤ヶ谷の心臓は暴れ狂った。
顔に熱が昇ってくるのを誤魔化すために、苺クレープを大きく一口食べる。
(……っこれも間接キスだ……! ごめん杉野の運命の番いの人!)
動揺しすぎて、会ったこともない杉野の好きな相手に心の中で謝ってしまった。
と同時に、
(同僚の俺にこれなら、好きな人には何するんだ!? 直接顔を舐めるのか!?)
と、想像を膨らませて隠しようもなく顔が赤くなる。
「藤ヶ谷さん、大丈夫ですか?急に顔色が」
「だだだだいじょうぶだいじょうぶ!」
杉野が額に手を当てようとしてきたのをかろうじて避け、背を向けて深呼吸した。
その時、躱された杉野が拗ねた表情になってしまったことは、藤ヶ谷は知らない。
「お待たせー」
2人の間に微妙な空気が流れ始めた時、ちょうどよく山吹が帰ってきた。
ほっとして声がした方を振り返ると、山吹はコーヒーのチェーン店の袋を持っている。
「喉渇いたろ?」
乾いた音を立てて紙袋から取り出したコーヒーカップを、杉野に差し出した。紙カップの色で、それがブラックコーヒーであることが分かる。
(あー! こういうとこー!)
杉野や山吹がモテるのは、アルファで容姿や頭脳が優秀だからというだけではないと藤ヶ谷は確信した。
当然のように相手に心遣いが出来るのだ。
考えてみれば合コンを行なった時、この2人は他のアルファに比べてもオメガの友人たちから評判が良かった。
山吹が纏っている上品なタバコの香りは、先ほどまでより濃くなっている。杉野の言った通り一服してきたのだろう。
杉野がクレープをほとんど食べないのを見越した山吹は、好みに合わせてコーヒーを買ってきた。
山吹と杉野の関係性が羨ましい。
お互いがきちんと相手を理解して、配慮し合える。
「藤ヶ谷さんも、カフェラテ買ってきてますよ」
紙袋を持ち上げて見せる山吹に、藤ヶ谷は明るく礼を言った。
だが美味しいクレープを咀嚼しつつも、自分は全部やってもらってばかりだと気持ちが落ち込んでいく。
(俺も杉野が喜ぶことしたい……)
今すぐ2人のようにするのは無理だろう。
察することが出来ないならば、聞くしかない。
こういう時に、物おじせず素直に聞けるのは藤ヶ谷の長所だ。
「杉野、なんか俺にやってほしいことないか?」
しかしながら、唐突すぎてコーヒーを飲んでいた杉野にはキョトンとされた。
「急にどうしたんですか?」
「や、その……なんかないかなって」
杉野の隣にいる山吹がニヤニヤしているのが気になってしどろもどろになってしまう。
まさか、「お前が好きだから喜ばせたい」とは言えない。
真面目な杉野は、不思議そうに首を傾げながらも回答を捻り出してくれた。
「じゃあ、人ごみは危ないから俺から離れないでください」
「俺は子どもか!」
山吹が吹き出すのを聞きながら、藤ヶ谷は杉野の足を蹴ったのだった。
藤ヶ谷が持っているチーズケーキクレープを「一口ください」とイチゴクレープと交換し、山吹の口がついた部分を齧りとっていた杉野は首を傾げる。
藤ヶ谷はクレープを食べ進めながら、うんうんと何度も頷いた。
「甘いもん好きでもないのに。俺のために、この店寄ってくれたし……」
「店を調べたのは山吹ですよ。それに」
杉野はチーズケーキクレープを飲み込むと、優しい目をして手を伸ばしてくる。
「藤ヶ谷さんが幸せそうに甘いものを食べてる顔を見ると元気になるんです」
近づいてくる手をなんだろうと思いながらもそのままにしていると、口元に触れられ胸が跳ねる。
すぐに離れていった杉野の親指には、チョコホイップクリームがついていた。
子どものようだと羞恥心を覚えたが、悟られないように笑ってみせる。
「俺ってそんな幸せそうな顔なのか」
「はい。かわいい顔、してます」
そう言って、杉野は親指のクリームを舌で舐めとる。
挑発するような艶やかな舌の動きと杉野の微笑みに、藤ヶ谷の心臓は暴れ狂った。
顔に熱が昇ってくるのを誤魔化すために、苺クレープを大きく一口食べる。
(……っこれも間接キスだ……! ごめん杉野の運命の番いの人!)
動揺しすぎて、会ったこともない杉野の好きな相手に心の中で謝ってしまった。
と同時に、
(同僚の俺にこれなら、好きな人には何するんだ!? 直接顔を舐めるのか!?)
と、想像を膨らませて隠しようもなく顔が赤くなる。
「藤ヶ谷さん、大丈夫ですか?急に顔色が」
「だだだだいじょうぶだいじょうぶ!」
杉野が額に手を当てようとしてきたのをかろうじて避け、背を向けて深呼吸した。
その時、躱された杉野が拗ねた表情になってしまったことは、藤ヶ谷は知らない。
「お待たせー」
2人の間に微妙な空気が流れ始めた時、ちょうどよく山吹が帰ってきた。
ほっとして声がした方を振り返ると、山吹はコーヒーのチェーン店の袋を持っている。
「喉渇いたろ?」
乾いた音を立てて紙袋から取り出したコーヒーカップを、杉野に差し出した。紙カップの色で、それがブラックコーヒーであることが分かる。
(あー! こういうとこー!)
杉野や山吹がモテるのは、アルファで容姿や頭脳が優秀だからというだけではないと藤ヶ谷は確信した。
当然のように相手に心遣いが出来るのだ。
考えてみれば合コンを行なった時、この2人は他のアルファに比べてもオメガの友人たちから評判が良かった。
山吹が纏っている上品なタバコの香りは、先ほどまでより濃くなっている。杉野の言った通り一服してきたのだろう。
杉野がクレープをほとんど食べないのを見越した山吹は、好みに合わせてコーヒーを買ってきた。
山吹と杉野の関係性が羨ましい。
お互いがきちんと相手を理解して、配慮し合える。
「藤ヶ谷さんも、カフェラテ買ってきてますよ」
紙袋を持ち上げて見せる山吹に、藤ヶ谷は明るく礼を言った。
だが美味しいクレープを咀嚼しつつも、自分は全部やってもらってばかりだと気持ちが落ち込んでいく。
(俺も杉野が喜ぶことしたい……)
今すぐ2人のようにするのは無理だろう。
察することが出来ないならば、聞くしかない。
こういう時に、物おじせず素直に聞けるのは藤ヶ谷の長所だ。
「杉野、なんか俺にやってほしいことないか?」
しかしながら、唐突すぎてコーヒーを飲んでいた杉野にはキョトンとされた。
「急にどうしたんですか?」
「や、その……なんかないかなって」
杉野の隣にいる山吹がニヤニヤしているのが気になってしどろもどろになってしまう。
まさか、「お前が好きだから喜ばせたい」とは言えない。
真面目な杉野は、不思議そうに首を傾げながらも回答を捻り出してくれた。
「じゃあ、人ごみは危ないから俺から離れないでください」
「俺は子どもか!」
山吹が吹き出すのを聞きながら、藤ヶ谷は杉野の足を蹴ったのだった。
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