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二章
49話 魔力の塊
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話の途中だというのに、体がどうしても動いてしまった。胸が熱くなって止まらない。
「ティーグレ……っ私が呑気に居残りしてる間にそんなに頑張ってくれてたのか……!」
「そりゃ……大事な人の命がかかってますから」
戸惑いながらも、ティーグレは優しく金髪を撫でてくれる。
心地よくて、ピングは肩に顎を乗せて感謝の気持ちを何度も述べた。
この後は、ティーグレだけに頑張らせるわけにはいかない。
「私も死なないために自分で気をつけないと……悪役ということは悪いことをしたから死ぬんだろう? 一体どんな悪事を」
「悪事はまぁ……色々要らんことを……空回るだけで大したことにはならないやつ……」
歯切れの悪いティーグレの物言いに、ピングは力が抜ける。死に直結するというからどんなことかと思ったが、おそらくチクチクと鬱陶しいだけの嫌がらせなのだろう。
そもそもピングなのだ。そんな大それた悪事を働く度胸があるはずもない。
「つか、正直ピングの言動もちょっと違ってて……本当はもっと故意にアトヴァル殿下を攻撃してたんですけど。ペンギンに襲わせたりとかも」
「わ、わざとじゃないぞ!」
何度かアトヴァルに突撃していったペンギンを思い出してピングは青ざめる。あんな心臓に悪いことを敢えてやる人間の気がしれない。
「知ってます知ってます。でも、ゲームの中ではわざとなんですよ。なんつーか、このペンギン……物語の強制力として大活躍してた感じかな……」
背中を叩いて宥めてくれたティーグレの話は、ピングの死の原因に辿り着く。
ピングがリョウイチにフラれて失意の中にいる時、今いる森に入る。そして先ほどの黒い玉をペンギンが飲み込むと共に魔力が暴走してしまったのだと。
ペンギンが先ほど丸呑みにした黒い玉は、魔力の塊なのだ。
「魔力の塊って……魔草や魔獣が多いところに低い確率で発生することがあるとかいう……世界でも数回しか発見されたことがない現象だぞ」
「それが起こるのが物語です」
「なるほど」
身も蓋もないが説得力のある言葉にピングが納得したのを確認し、ティーグレはギュッと腕に力を込めた。一瞬緩んでいた声が、一段と低く重くなる。
「暴走自体はリョウイチたちが止めます。でも、ピングは自分の器以上の魔力に体が耐えられなくて……」
ティーグレは言葉を切った。言わずとも、それがピングの最期だったのだと分かる。
気をしっかり持たなければならない時だ。
しかし、これからあり得る未来なのだと思うと、全身の血の気が引いていくのはどうしようもなかった。
「失恋したのは、だいぶ前じゃないか?」
なんとか希望を見出そうと、現状とティーグレの語る物語の違いを探していく。ティーグレは神妙な顔で頷いた。
森へ向かわせないために、ティーグレは失恋したピングを寮に連れていってそばにいてくれた。それは、魔力の塊をペンギンが飲み込んでしまうのを回避するためだったのだ。
その後ピングがアトヴァルと口論の後に和解すれば、生存の道筋は確定したはずだった。
「なのに、さっき魔力の塊をペンギンが丸呑みにした」
ティーグレの眉間に深く皺が刻まれる。歯を食いしばっているのが見なくても分かった。
本来はアトヴァルとリョウイチが恋人同士になり、悪役のピングと和解できれば一番いいパッピーエンドを迎えられる予定だったという。
魔力の塊は、森にいる魔獣が偶然食べてしまい暴走する。それをピングも含めた皆で協力して倒すという流れだ。
それも、ペンギンが魔力の塊を飲み込んでしまったので台無しになったわけだが。
全てを聞き終えたピングは、頭の中で出来事を整理しようとする。
だが結局、ペンギンに魔力の塊を吐き出させるという方法しか思いつかなかった。
「わぁああん! 吐き出してくれぇえええ!! 死にたくないぃいいい!!」
ホワイトタイガーから飛び降りたピングは、ずっと呑気に地面を滑って遊んでいた元凶を捕まえる。半泣きになりながら白い腹をぐいぐい押した。
「落ち着いて、とりあえず、とりあえずは暴走してないから!とにかく、何か方法がないか探します」
「あるのかそんな方法っ」
話す前には自分の方が乱暴にペンギンを扱っていたティーグレに背後から抱きしめられて、ピングはペンギンから手を離す。
鼻を啜りながら見上げると、ティーグレは力なく首を振った。
「ティーグレ……っ私が呑気に居残りしてる間にそんなに頑張ってくれてたのか……!」
「そりゃ……大事な人の命がかかってますから」
戸惑いながらも、ティーグレは優しく金髪を撫でてくれる。
心地よくて、ピングは肩に顎を乗せて感謝の気持ちを何度も述べた。
この後は、ティーグレだけに頑張らせるわけにはいかない。
「私も死なないために自分で気をつけないと……悪役ということは悪いことをしたから死ぬんだろう? 一体どんな悪事を」
「悪事はまぁ……色々要らんことを……空回るだけで大したことにはならないやつ……」
歯切れの悪いティーグレの物言いに、ピングは力が抜ける。死に直結するというからどんなことかと思ったが、おそらくチクチクと鬱陶しいだけの嫌がらせなのだろう。
そもそもピングなのだ。そんな大それた悪事を働く度胸があるはずもない。
「つか、正直ピングの言動もちょっと違ってて……本当はもっと故意にアトヴァル殿下を攻撃してたんですけど。ペンギンに襲わせたりとかも」
「わ、わざとじゃないぞ!」
何度かアトヴァルに突撃していったペンギンを思い出してピングは青ざめる。あんな心臓に悪いことを敢えてやる人間の気がしれない。
「知ってます知ってます。でも、ゲームの中ではわざとなんですよ。なんつーか、このペンギン……物語の強制力として大活躍してた感じかな……」
背中を叩いて宥めてくれたティーグレの話は、ピングの死の原因に辿り着く。
ピングがリョウイチにフラれて失意の中にいる時、今いる森に入る。そして先ほどの黒い玉をペンギンが飲み込むと共に魔力が暴走してしまったのだと。
ペンギンが先ほど丸呑みにした黒い玉は、魔力の塊なのだ。
「魔力の塊って……魔草や魔獣が多いところに低い確率で発生することがあるとかいう……世界でも数回しか発見されたことがない現象だぞ」
「それが起こるのが物語です」
「なるほど」
身も蓋もないが説得力のある言葉にピングが納得したのを確認し、ティーグレはギュッと腕に力を込めた。一瞬緩んでいた声が、一段と低く重くなる。
「暴走自体はリョウイチたちが止めます。でも、ピングは自分の器以上の魔力に体が耐えられなくて……」
ティーグレは言葉を切った。言わずとも、それがピングの最期だったのだと分かる。
気をしっかり持たなければならない時だ。
しかし、これからあり得る未来なのだと思うと、全身の血の気が引いていくのはどうしようもなかった。
「失恋したのは、だいぶ前じゃないか?」
なんとか希望を見出そうと、現状とティーグレの語る物語の違いを探していく。ティーグレは神妙な顔で頷いた。
森へ向かわせないために、ティーグレは失恋したピングを寮に連れていってそばにいてくれた。それは、魔力の塊をペンギンが飲み込んでしまうのを回避するためだったのだ。
その後ピングがアトヴァルと口論の後に和解すれば、生存の道筋は確定したはずだった。
「なのに、さっき魔力の塊をペンギンが丸呑みにした」
ティーグレの眉間に深く皺が刻まれる。歯を食いしばっているのが見なくても分かった。
本来はアトヴァルとリョウイチが恋人同士になり、悪役のピングと和解できれば一番いいパッピーエンドを迎えられる予定だったという。
魔力の塊は、森にいる魔獣が偶然食べてしまい暴走する。それをピングも含めた皆で協力して倒すという流れだ。
それも、ペンギンが魔力の塊を飲み込んでしまったので台無しになったわけだが。
全てを聞き終えたピングは、頭の中で出来事を整理しようとする。
だが結局、ペンギンに魔力の塊を吐き出させるという方法しか思いつかなかった。
「わぁああん! 吐き出してくれぇえええ!! 死にたくないぃいいい!!」
ホワイトタイガーから飛び降りたピングは、ずっと呑気に地面を滑って遊んでいた元凶を捕まえる。半泣きになりながら白い腹をぐいぐい押した。
「落ち着いて、とりあえず、とりあえずは暴走してないから!とにかく、何か方法がないか探します」
「あるのかそんな方法っ」
話す前には自分の方が乱暴にペンギンを扱っていたティーグレに背後から抱きしめられて、ピングはペンギンから手を離す。
鼻を啜りながら見上げると、ティーグレは力なく首を振った。
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