【完結】青春は嘘から始める

虎ノ威きよひ

文字の大きさ
35 / 65
杏山と土居の場合

二話

しおりを挟む
 
 学校から電車で2駅先にある大きい駅の近くのカラオケボックスの一部屋。
 友だちのひとりが失恋歌を歌ってガチ泣きしているのをみんなで囃し立てている中、スマートフォンの画面にメッセージが表示された。
 俺、杏山諒きょうやまりょうは目を見開いて画面を見つめる。
 大きな声を出すのを飲み込みながら、みんなに背を向けた。
 
『告白、OKされたどうしよう』
 
 メッセージアプリを改めて開くと、そう書いてある。
 見間違いではなかったらしい。
 俺はその文への既読メッセージの数字が増えるのを確認しながら、画面をタップする。

『え、俺も』

 すると、

『俺もなんだけど! 助けてくれ!』
『全員!? そんなことあるか!?』

 と、想定外の文章が連続で送られてきた。
 さっきまでノリノリで聞いていた、失恋歌にしてはテンポの軽い流行り曲が、どんどん遠くなっていく気がした。
 
(どうしてこうなった)
 
 
 事の発端は、昼休み。
 
「そういえばお前たちくらいのころ、告白ゲームとかしてたな。」
 
 俺含め4人で学校の屋上で昼飯を囲んでいる時だった。
 なんか、卒業までに楽しいことしたいなって話をしていたんだった気がする。
 そうしたら、偶然それを聞いてた隣のクラスの担任の口から出たのが「告白ゲーム」だった。
 先生の前では「なんだそれ最低じゃねー?」と笑っていた俺たちだったが。
 いやー。面白そうだよな?
 
「告白ゲーム」とは。
 何かの罰ゲームとして同性に告白する、というものだ。

 分かりやすいよな。
 女の子にそれやられてすっげぇガッカリしたことあるぞ俺。
 今回のターゲットは同性。
 しかも、あまり親しくない相手に、という条件付きだ。
 仲良かったら罰ゲームになんねぇしな。すぐバレるだろうし。
 
 先生が爆弾を落として出ていった後、4人の中で一番そういう遊びが好きな桜田サクが童顔を輝かせて元気いっぱいに口を開いた。

「やろうぜ! 次の英語の単語テストでビリだったやつがそらに告白な!」
「それスリル満点すぎだろ~! 殺されたらどうすんだよ!」

 俺は思わず笑ってしまった。
 空とは隣のクラスにいる不良だ。
 金髪の似合うイケメンで、気がつくと隣にいる女の子が変わっている目つきの悪い怖そうな男。
 そんな奴をターゲットにするなんて、桜田サクの頭のネジは飛んでるに違いない。

 俺の幼なじみの梅木まもるは止めたけど、残りのひとりの光安みつやすが「みんながやるならやるか」って軽いノリで言ってきたので多数決で決まった。
 
 結果としては言い出しっぺの桜田サクが単語テストで最下位だった。
 もう、腹筋が痛くなるほど爆笑してしまった。
 せめて勝算がある賭けに出ようぜ。
 しかも 桜田サクは、

「俺だけは嫌だ!」

 と、往生際悪く泣き言を言い出した。その膨れっ面に少し親心みたいなのが出てきて。
 皆で仕方ないからもうひと勝負するかとなった。
 
 最終的に、マラソンでビリだった梅木まもると漢字テストで0点だった光安も巻き込むことになる。
 4人中3人が、最早罰ゲームと言っていいのかわからない嘘告白をすることになったわけだ。
 そうなったら当然。

「こうなったらみんなでやろうぜ! な、杏山あんず!」

 案の定、桜田様サクの鶴の一声で俺もお祭りに参加することになったってわけだ。

「しょうがねぇなー!」

 楽しそうだからいいか、と、この時は思っていたんだが。
 
 告白の相手は、全員同級生のイケメンたち。
 3年生男子の中でモテる男ベスト4って感じのやつらだ。
 告白なんてされ慣れていると予想できる上、空以外の3人はどんな女の子が告白しても靡かないと有名だった。もったいない。
 格下男子の告白くらいなら、流してくれると信じよう。
 
 俺たちは、全員が放課後に告白して、帰ってから結果報告しよう!
 と決めて別れた。
 
 まさか、全員が告白成功するなんて。
 神様でも予想出来なかっただろ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。

みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。 愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。 「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。 あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。 最後のエンドロールまで見た後に 「裏乙女ゲームを開始しますか?」 という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。  あ。俺3日寝てなかったんだ… そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。 次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。 「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」 何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。 え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね? これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

処理中です...