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5話 生殖機能は
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ルカの部屋が整えられたのは、日が沈む頃だった。
時間がかかったことをグンナルに謝罪されたが、ルカの方も恐縮しきりだったのは言うまでもない。
部屋は最初に入った時よりも全体的にシンプルになっていたが、ルカの希望通り基本的には変わらない。
シロクマのぬいぐるみも、棚に置いたままにしてもらった。
とにもかくにも、ようやく腰を落ち着けることができる。湯浴みや夕食を済ませたルカは、白いカーテンを捲った。
窓の近くは空気が冷えているけれど、夜空に光る星々は美しい。
年中花々が咲き誇るフィオレンテ王宮と、全てを雪が化粧しているこの城では昼間の風景は似ても似つかない。
でも真っ暗になれば目に入るのは星と月ばかりで、空は繋がっているのだと実感する。
バルコニーには小さな鳥がちょこんと佇んでいた。
ルカも寒さに強い獣人だったなら、小鳥のようにバルコニーに出て、もっと星空を近くに感じていただろう。
白い寝衣一枚でも、獣人ならば星と雪を外で楽しめるはずだ。
(……このまま星だけ見て寝たい……)
カーテンをギュッと握るルカの手は緊張で僅かに震えている。深く息を吸って、吐いてみても胸がざわざわとしていた。
一人になると、色々考えてしまうのだ。
そう、例えば、
「初夜って……いつすんのかな……」
といった新婚らしいことなどだ。
口に出してしまえば少しスッキリするかと思い呟いてみるものの、逆に顔が沸騰しそうなほど熱くなっただけだった。
暗い窓ガラスには情けなく眉を下げたルカが映っていて、思わずカーテンを閉める。
ジャッとカーテンが音を立てている最中も、ルカは頭の中でずっと同じことを考えていた。
(普通は結婚式の後……でも式はしない予定ってことは結婚のサインの後……そ、そもそもするのか? グンナルってその辺はどうなんだ?)
この結婚が決まってから、ルカはできる限りの書物を読んで、男同士の夜の方法についての勉強をしている。
グンナルがどんな相手かは知らなかったが、国の格の違いから言っても自分が女役だろうと覚悟も決めてきた。
その時になれば、全力を尽くすつもりでいる。
とはいえ、実際に現実が迫ってくると怖じ気づいてしまう。
王侯貴族の結婚は言うまでもなく、国や家同士の繋がりだけのものだ。
だからそもそも後継を作る必要がない同性婚であれば、夜の夫婦の生活自体は必要ない。
互いに愛妾を作って黙認することも多い。
だから、いわゆる「白い結婚」になるならそれでもいい。
「白いクマと白い結婚……ちょっと面白いな......」
誰も笑ってくれない呟きが、白い部屋に虚しく溶ける。
(グンナルはいい人だ。仲良くできたら、白い結婚でもいいけど……でもなぁ)
体の関係を持つかどうか、ルカの悩みはそれだけではない。
昼間、城内を案内してくれた時のことだ。
結婚式はなく、結婚契約書にサインするだけだと告げられた。それならばもうやってしまおうと、二人でグンナルの執務室に向かったのだが。
書類に向き合ってもグンナルはずっとシロクマだった。シロクマは当然ペンが握れない。
つまり、書類上の結婚もまだしてくれていないという状態だ。
あんなに優しい言葉をかけてくれたのに、結婚する気があるのかないのかが不明瞭だ。
グンナルの人柄に触れてルカの心の重圧は軽くなったが、本当に安心していていいのだろうか。
もしかしたらものすごく本心を隠すのが上手いタヌキ……いや、シロクマなのかもしれない。
ルカは頭を掻きむしり、低く唸り声を上げる。考えても考えても、ルカにグンナルの心が読めるはずもない。
こういう時の解決方法は、結局一つしかないのだ。
「本人に聞くしかないな」
ルカはクローゼットに向かうと、深緑のガウンを引っ張り出す。柔らかいそれに袖を通しつつ、室内の壁にある扉へと向かった。
ルカの国もそうだが、この国でも夫婦の寝室は繋がっている。廊下に出なくても、グンナルの部屋にはすぐに行くことができるのだ。
ルカは一度唾を飲み込み、ドアを控えめにノックした。
しばらく待ってみたが返事がないので、聞こえなかったのかともう一回ドアを叩く。
(あれ?)
二回目も返事がない。
ルカは首を傾げながら、次は強めにドンドンと音を響かせてみる。しかし、それでも返事がない。
グンナルは寝る前にはいつも本を読んでいると言っていた。湯浴みが終わった時間を考えても、まだ寝ていないはずだ。
半日しか一緒に過ごしていないルカでも、グンナルがノックを無視をするような性格でないことはわかる。
ルカはだんだん心配になってきてドアの取っ手に手をかけた。
「グンナル、まさか倒れてたりぃいいいっ!?」
このやりとりは、本日何回目だろう。
勢いよくドアを開けたルカは悲鳴を上げた。
大きなシロクマが、カーペットの上に、まるでぬいぐるみかのような姿勢でドッシリと座っていたのだ。もちろん、ぬいぐるみとは程遠い威圧感である。
シロクマは見た目のふわふわ感に反して、ギギギと錆びた音が鳴りそうな動きで首をこちらに向けてきた。
「る、ルカ。どうした?」
「へ、返事がなかったから……ぐ、グンナルはシロクマの姿で寝るのか?」
確かに人が一人寝るだけにしては、随分と大きいベッドがこの部屋には置いてある。
そんなことを思いながら、ルカは自分の部屋よりも飾り気のない部屋を見渡した。
白を基調とした部屋に、机や調度品が壁に沿って整列している几帳面さを感じる部屋だ。
ルカの問いに対してグンナルは首をゆるゆると左右に振り、黒い肉球のある手をこちらに向けて否定してくる。
「いや、そうではない。そうではなく……」
「グンナル」
言い淀むグンナルを、ルカは強い口調で呼ぶ。これ以上言い訳を考えさせないようにするためだ。
どう考えても様子がおかしい。グンナルはやはり、何か隠し事をしている。
ルカはゆっくりと絨毯を踏みしめてグンナルに近づく。でもやはりすぐ近くに行くのは怖くて、剣の間合いほどの距離を開けて止まった。
見上げてくる黒い瞳を、新緑色の瞳でじっと見つめる。
「本当はもう少し待とうかと思ったけど……俺、大事なこと聞きに来たからちゃんとお前も話してくれよ」
「大事なこと」
「その……」
自分から言い出したものの、何から切り出そうかと目線を泳がせてしまう。
さすがに、「本当に結婚する気があるのか」と聞くのは失礼だろう。
もう一つの質問も勇気がいるが、ルカは意を決して口を開く。
「俺たちって、夜の……えっと……初夜は……しますか」
意気込みの割には声が尻すぼみになってしまったが、言えた。
心臓がドンドンと太鼓のように鳴り、全身の血の巡りが早くなる。
決死の問いかけに対し、シロクマ姿のグンナルはすぐに口を開いた。
「それはもちろんする」
「そ、そうか。わかった。いつ? 結婚契約書にサインしてから?」
キッパリとした口調でグンナルが答えたので、ルカの手には汗が滲んできた。
緊張のせいで喉が渇き、質問を重ねる声が少し掠れてしまう。
だがそれはルカだけではない。
グンナルも落ち着かなげに体を揺らし、完全に俯いてしまっている。
「そう……初夜はするんだ……が、おそらく、難しい」
「え? じゃあ、しなくてもいいんじゃないか?」
肩の力が抜けるのをルカは感じた。グンナルが難しいと感じるなら、わざわざする必要はない。
深刻そうな声だが、ルカに気を遣っているのだろうか。お互いに恋仲であるわけでもない同性なのだから、仕方がないではないかとルカは軽く考えていた。
しかし、事態はそう簡単でもないことがグンナルの言葉でわかる。
「我が国の結婚は書類にサインをすること、そして体を繋げることの両方が必要だ」
「そ、そうなのか……! でも男同士が無理なのはどうしようも」
「いや。男女は関係なく、私は……」
今までで一番声のトーンが落ち、グンナルは子どもが遊び尽くしたぬいぐるみのようにへにゃりとうなだれてしまった。
先ほどから歯切れの悪いグンナルの様子を見て、ルカはピンと来た。
手を口で覆って目を泳がせる。
「……ご、ごめんグンナル。もしかして……」
その先をわざわざ言葉にするのは憚られた。
皇族として生まれ育って、まさか「愛し合っていないと」とは言い出さないだろう。香水なり薬なり魔術なり使ってなんとかするものだ。
その他で相手の性別を問わず「初夜が難しい」というのであれば、ルカが思いつく理由は一つしかない。
グンナルは、子供を作れない体なのだと確信する。
そう考えれば、ルカの中で納得できることがあった。
「だから男の俺でも受け入れてくれたのか。ごめんな、その可能性は全然考えてなかった。大事なこと、教えてくれてありがとうな」
上手く目を合わせられないまま、一方的に喋ってしまう。
ビアンカではなく、男の自分が結婚相手になって良かったのかもしれないとすら思った。
「あの、でももし何か俺にできることがあれば……! ほら男同士だし遠慮なく」
「ルカ、お前の優しい心はよく伝わった。だが勘違いしている」
「へ?」
非常に冷静な声と共に真っ黒な瞳がこちらを見ていた。
シロクマなので表情が読めないが、淡々とした話し方は何かの感情を押さえつけて、努めてそうしているのだと伝わってくる。
まだ気遣うように首を傾げるルカに対し、グンナルは微動だにせず口だけを動かした。
「私の生殖機能は正常だ」
ルカは新緑色の目を丸くする。
時間がかかったことをグンナルに謝罪されたが、ルカの方も恐縮しきりだったのは言うまでもない。
部屋は最初に入った時よりも全体的にシンプルになっていたが、ルカの希望通り基本的には変わらない。
シロクマのぬいぐるみも、棚に置いたままにしてもらった。
とにもかくにも、ようやく腰を落ち着けることができる。湯浴みや夕食を済ませたルカは、白いカーテンを捲った。
窓の近くは空気が冷えているけれど、夜空に光る星々は美しい。
年中花々が咲き誇るフィオレンテ王宮と、全てを雪が化粧しているこの城では昼間の風景は似ても似つかない。
でも真っ暗になれば目に入るのは星と月ばかりで、空は繋がっているのだと実感する。
バルコニーには小さな鳥がちょこんと佇んでいた。
ルカも寒さに強い獣人だったなら、小鳥のようにバルコニーに出て、もっと星空を近くに感じていただろう。
白い寝衣一枚でも、獣人ならば星と雪を外で楽しめるはずだ。
(……このまま星だけ見て寝たい……)
カーテンをギュッと握るルカの手は緊張で僅かに震えている。深く息を吸って、吐いてみても胸がざわざわとしていた。
一人になると、色々考えてしまうのだ。
そう、例えば、
「初夜って……いつすんのかな……」
といった新婚らしいことなどだ。
口に出してしまえば少しスッキリするかと思い呟いてみるものの、逆に顔が沸騰しそうなほど熱くなっただけだった。
暗い窓ガラスには情けなく眉を下げたルカが映っていて、思わずカーテンを閉める。
ジャッとカーテンが音を立てている最中も、ルカは頭の中でずっと同じことを考えていた。
(普通は結婚式の後……でも式はしない予定ってことは結婚のサインの後……そ、そもそもするのか? グンナルってその辺はどうなんだ?)
この結婚が決まってから、ルカはできる限りの書物を読んで、男同士の夜の方法についての勉強をしている。
グンナルがどんな相手かは知らなかったが、国の格の違いから言っても自分が女役だろうと覚悟も決めてきた。
その時になれば、全力を尽くすつもりでいる。
とはいえ、実際に現実が迫ってくると怖じ気づいてしまう。
王侯貴族の結婚は言うまでもなく、国や家同士の繋がりだけのものだ。
だからそもそも後継を作る必要がない同性婚であれば、夜の夫婦の生活自体は必要ない。
互いに愛妾を作って黙認することも多い。
だから、いわゆる「白い結婚」になるならそれでもいい。
「白いクマと白い結婚……ちょっと面白いな......」
誰も笑ってくれない呟きが、白い部屋に虚しく溶ける。
(グンナルはいい人だ。仲良くできたら、白い結婚でもいいけど……でもなぁ)
体の関係を持つかどうか、ルカの悩みはそれだけではない。
昼間、城内を案内してくれた時のことだ。
結婚式はなく、結婚契約書にサインするだけだと告げられた。それならばもうやってしまおうと、二人でグンナルの執務室に向かったのだが。
書類に向き合ってもグンナルはずっとシロクマだった。シロクマは当然ペンが握れない。
つまり、書類上の結婚もまだしてくれていないという状態だ。
あんなに優しい言葉をかけてくれたのに、結婚する気があるのかないのかが不明瞭だ。
グンナルの人柄に触れてルカの心の重圧は軽くなったが、本当に安心していていいのだろうか。
もしかしたらものすごく本心を隠すのが上手いタヌキ……いや、シロクマなのかもしれない。
ルカは頭を掻きむしり、低く唸り声を上げる。考えても考えても、ルカにグンナルの心が読めるはずもない。
こういう時の解決方法は、結局一つしかないのだ。
「本人に聞くしかないな」
ルカはクローゼットに向かうと、深緑のガウンを引っ張り出す。柔らかいそれに袖を通しつつ、室内の壁にある扉へと向かった。
ルカの国もそうだが、この国でも夫婦の寝室は繋がっている。廊下に出なくても、グンナルの部屋にはすぐに行くことができるのだ。
ルカは一度唾を飲み込み、ドアを控えめにノックした。
しばらく待ってみたが返事がないので、聞こえなかったのかともう一回ドアを叩く。
(あれ?)
二回目も返事がない。
ルカは首を傾げながら、次は強めにドンドンと音を響かせてみる。しかし、それでも返事がない。
グンナルは寝る前にはいつも本を読んでいると言っていた。湯浴みが終わった時間を考えても、まだ寝ていないはずだ。
半日しか一緒に過ごしていないルカでも、グンナルがノックを無視をするような性格でないことはわかる。
ルカはだんだん心配になってきてドアの取っ手に手をかけた。
「グンナル、まさか倒れてたりぃいいいっ!?」
このやりとりは、本日何回目だろう。
勢いよくドアを開けたルカは悲鳴を上げた。
大きなシロクマが、カーペットの上に、まるでぬいぐるみかのような姿勢でドッシリと座っていたのだ。もちろん、ぬいぐるみとは程遠い威圧感である。
シロクマは見た目のふわふわ感に反して、ギギギと錆びた音が鳴りそうな動きで首をこちらに向けてきた。
「る、ルカ。どうした?」
「へ、返事がなかったから……ぐ、グンナルはシロクマの姿で寝るのか?」
確かに人が一人寝るだけにしては、随分と大きいベッドがこの部屋には置いてある。
そんなことを思いながら、ルカは自分の部屋よりも飾り気のない部屋を見渡した。
白を基調とした部屋に、机や調度品が壁に沿って整列している几帳面さを感じる部屋だ。
ルカの問いに対してグンナルは首をゆるゆると左右に振り、黒い肉球のある手をこちらに向けて否定してくる。
「いや、そうではない。そうではなく……」
「グンナル」
言い淀むグンナルを、ルカは強い口調で呼ぶ。これ以上言い訳を考えさせないようにするためだ。
どう考えても様子がおかしい。グンナルはやはり、何か隠し事をしている。
ルカはゆっくりと絨毯を踏みしめてグンナルに近づく。でもやはりすぐ近くに行くのは怖くて、剣の間合いほどの距離を開けて止まった。
見上げてくる黒い瞳を、新緑色の瞳でじっと見つめる。
「本当はもう少し待とうかと思ったけど……俺、大事なこと聞きに来たからちゃんとお前も話してくれよ」
「大事なこと」
「その……」
自分から言い出したものの、何から切り出そうかと目線を泳がせてしまう。
さすがに、「本当に結婚する気があるのか」と聞くのは失礼だろう。
もう一つの質問も勇気がいるが、ルカは意を決して口を開く。
「俺たちって、夜の……えっと……初夜は……しますか」
意気込みの割には声が尻すぼみになってしまったが、言えた。
心臓がドンドンと太鼓のように鳴り、全身の血の巡りが早くなる。
決死の問いかけに対し、シロクマ姿のグンナルはすぐに口を開いた。
「それはもちろんする」
「そ、そうか。わかった。いつ? 結婚契約書にサインしてから?」
キッパリとした口調でグンナルが答えたので、ルカの手には汗が滲んできた。
緊張のせいで喉が渇き、質問を重ねる声が少し掠れてしまう。
だがそれはルカだけではない。
グンナルも落ち着かなげに体を揺らし、完全に俯いてしまっている。
「そう……初夜はするんだ……が、おそらく、難しい」
「え? じゃあ、しなくてもいいんじゃないか?」
肩の力が抜けるのをルカは感じた。グンナルが難しいと感じるなら、わざわざする必要はない。
深刻そうな声だが、ルカに気を遣っているのだろうか。お互いに恋仲であるわけでもない同性なのだから、仕方がないではないかとルカは軽く考えていた。
しかし、事態はそう簡単でもないことがグンナルの言葉でわかる。
「我が国の結婚は書類にサインをすること、そして体を繋げることの両方が必要だ」
「そ、そうなのか……! でも男同士が無理なのはどうしようも」
「いや。男女は関係なく、私は……」
今までで一番声のトーンが落ち、グンナルは子どもが遊び尽くしたぬいぐるみのようにへにゃりとうなだれてしまった。
先ほどから歯切れの悪いグンナルの様子を見て、ルカはピンと来た。
手を口で覆って目を泳がせる。
「……ご、ごめんグンナル。もしかして……」
その先をわざわざ言葉にするのは憚られた。
皇族として生まれ育って、まさか「愛し合っていないと」とは言い出さないだろう。香水なり薬なり魔術なり使ってなんとかするものだ。
その他で相手の性別を問わず「初夜が難しい」というのであれば、ルカが思いつく理由は一つしかない。
グンナルは、子供を作れない体なのだと確信する。
そう考えれば、ルカの中で納得できることがあった。
「だから男の俺でも受け入れてくれたのか。ごめんな、その可能性は全然考えてなかった。大事なこと、教えてくれてありがとうな」
上手く目を合わせられないまま、一方的に喋ってしまう。
ビアンカではなく、男の自分が結婚相手になって良かったのかもしれないとすら思った。
「あの、でももし何か俺にできることがあれば……! ほら男同士だし遠慮なく」
「ルカ、お前の優しい心はよく伝わった。だが勘違いしている」
「へ?」
非常に冷静な声と共に真っ黒な瞳がこちらを見ていた。
シロクマなので表情が読めないが、淡々とした話し方は何かの感情を押さえつけて、努めてそうしているのだと伝わってくる。
まだ気遣うように首を傾げるルカに対し、グンナルは微動だにせず口だけを動かした。
「私の生殖機能は正常だ」
ルカは新緑色の目を丸くする。
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