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第一章
素晴らしいご縁
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こほん、とラナージュは1度咳払いをして、1人ずつ説明し始めた。
「まず、皆さんご存知の入学式のこと。デルフィニウム様はまるで物語の王子様のようにアンネを庇ってお救いになったでしょう?」
「私の主観では王子というよりは魔法使いなんだが……」
アンネとアレハンドロの今の感じを見ると、完全に脇役のサポーターだ。
もしくはかませ犬だかませ犬。
運命的と言われたら、ある意味そうなのかもしれない。
「クリサンセマム様はアンネと毎日図書館で会うのだとか。読みたい本が同じなことが多く、本をとる指先が触れ合うことがよくあるとアンネが言っていましたわ」
「え、いや……ま、まぁ……」
私の知らない間に、BLフラグだけじゃなくて少女漫画フラグまで立ててたのかネルス。
さすが黒髪吊り目の美少年。
汎用性が違う。
本人は改めて他人に指摘されて戸惑っている。かわいい。
「アコニツム様は前の週末、街でアンネが強引な方に声をかけられて困っているところを助けてくださったとか」
「声をかけていたんじゃなくて連れ去ろうとしていたぞ。どう見ても堅気じゃなかった。助けられた本人は気づいていなかったがな」
アンネはトラブル吸引機か何かなのか。
かわいそうに。
本人が強引なナンパだと勘違いしていたのは救いかもしれない。
ちょっとその話を詳しく聞きたい。
「ユリオプス様はアンネの落としたハンカチを拾われて」
(それは最早、古典……!)
「渡そうとしたところに現れた子猫がハンカチを咥えて窓から逃げて木に飛び移ったのに降りられなくなってしまったのを同じように窓から木に飛び移って降ろしてくださって、ハンカチも取り返してくださったとか」
なんて?
「あの灰色子猫ちゃん、降りれないなら高いところに行かないことを覚えた方がいいよなー」
灰色ってもしかして入学式のあの子猫ちゃんか!
おばかちゃんなのか!
それともアンネのためのフラグ製造機なのか!
「ね? 皆さま、アンネと素晴らしいご縁がおありでしょう?」
(おありだな。1人1人、詳しく聞きたいその場面見たかった――)
やっていいなら記憶を覗き見したい。
私は納得しました、という笑顔を向けながら心の中では頭を抱えていた。
みんなの少女漫画みたいなシーン見たい――!
そして、相手を探すのをすっっっかり忘れていた。
というか知らなかったが、そういうことならアンネと組みたい。
アレハンドロに嫌な顔をされそうだが、何を隠そう私はアンネ以外の女子とほぼ会話をしたことがない。
避けられているのもあるが、そもそもわざわざ話しかけることもない。
決めるのはアンネだが、とりあえず声をかける優先権を貰ってしまおう。
「それなら」
「僕は元々、アンネを誘うつもりでいました。彼女が良ければ……」
私は即座に口を結んで隣を凝視する。
まさかのネルスが!誘うつもりだったとは!
「まぁ! そうでしたの!」
ラナージュは嬉しそうに手を合わせた。
「では、是非明日にでもお声掛けしてあげてくださいませ。よろしくお願いしますわね?」
念を押すようにネルスの手を両手でぎゅっと握る。
美女を間近で浴びたネルスは真っ赤になって固まってしまった。
美人は身内で見慣れてるはずだけど、やっぱ家族じゃ耐性つかないよね。
いや美醜関係ないか異性だからか。
そして、本当にそれだけの用事だったらしいラナージュは、ごきげんようと手を振って行ってしまった。
なんだったんだ。
想像していたより、夢見る乙女な愉快なお嬢様だったのか。
「ネルス、アンネを誘うつもりだったのか」
ラナージュの姿が見えなくなると、エラルドが後頭部で手を組みながらネルスを見下ろした。
「他にまともに話せる女子生徒がいないんだ。アンネにさえまだその話を切り出せなくて……」
私の仲間だった。
多分、陽キャのエラルドには一生分からないだろうと思うこの気持ち。
「舞踏会のパートナーになれというだけだろう?奥手だな」
お前もかバレット。
お前もそういう感じか。強い。
「バレット、君に言われる筋合いはない」
エラルドが負けたことをまだ引きずっているネルスは、眉を顰めてそっぽを向いた。
そして私たちを横目で見る。
「僕は明日アンネに声をかけるとして、3人にはもう相手がいるのか?」
ネルスの言葉には3人で揃って首を横に振った。
「いやー忘れてたな舞踏会のこと」
「エラルドもか……私も今の話で思い出したよ。まぁ最悪、私と2人でいこう」
肩を叩くと、ケラケラとエラルドは笑う。
「あ、それでもいいよなー! 相手は女の子じゃないといけないって決まってないし!」
いけないと決まってはいないが、暗黙の了解で決まっているようなものなのだが。
エラルドは本当にノリがいい。
「興味ないから行かん」
バレットはそういう感じかー。なるほどねー。
そうか、行かないという選択肢があるとは知らなかった。
しかし美味しい食べ物も出るのに勿体無いぞ、とエラルドと2人で行くように促してみる。
「お前たち!学校行事なんだから真面目にやれ!」
最終的に、途中までは黙って聞いていたネルスに怒鳴られた。
「まず、皆さんご存知の入学式のこと。デルフィニウム様はまるで物語の王子様のようにアンネを庇ってお救いになったでしょう?」
「私の主観では王子というよりは魔法使いなんだが……」
アンネとアレハンドロの今の感じを見ると、完全に脇役のサポーターだ。
もしくはかませ犬だかませ犬。
運命的と言われたら、ある意味そうなのかもしれない。
「クリサンセマム様はアンネと毎日図書館で会うのだとか。読みたい本が同じなことが多く、本をとる指先が触れ合うことがよくあるとアンネが言っていましたわ」
「え、いや……ま、まぁ……」
私の知らない間に、BLフラグだけじゃなくて少女漫画フラグまで立ててたのかネルス。
さすが黒髪吊り目の美少年。
汎用性が違う。
本人は改めて他人に指摘されて戸惑っている。かわいい。
「アコニツム様は前の週末、街でアンネが強引な方に声をかけられて困っているところを助けてくださったとか」
「声をかけていたんじゃなくて連れ去ろうとしていたぞ。どう見ても堅気じゃなかった。助けられた本人は気づいていなかったがな」
アンネはトラブル吸引機か何かなのか。
かわいそうに。
本人が強引なナンパだと勘違いしていたのは救いかもしれない。
ちょっとその話を詳しく聞きたい。
「ユリオプス様はアンネの落としたハンカチを拾われて」
(それは最早、古典……!)
「渡そうとしたところに現れた子猫がハンカチを咥えて窓から逃げて木に飛び移ったのに降りられなくなってしまったのを同じように窓から木に飛び移って降ろしてくださって、ハンカチも取り返してくださったとか」
なんて?
「あの灰色子猫ちゃん、降りれないなら高いところに行かないことを覚えた方がいいよなー」
灰色ってもしかして入学式のあの子猫ちゃんか!
おばかちゃんなのか!
それともアンネのためのフラグ製造機なのか!
「ね? 皆さま、アンネと素晴らしいご縁がおありでしょう?」
(おありだな。1人1人、詳しく聞きたいその場面見たかった――)
やっていいなら記憶を覗き見したい。
私は納得しました、という笑顔を向けながら心の中では頭を抱えていた。
みんなの少女漫画みたいなシーン見たい――!
そして、相手を探すのをすっっっかり忘れていた。
というか知らなかったが、そういうことならアンネと組みたい。
アレハンドロに嫌な顔をされそうだが、何を隠そう私はアンネ以外の女子とほぼ会話をしたことがない。
避けられているのもあるが、そもそもわざわざ話しかけることもない。
決めるのはアンネだが、とりあえず声をかける優先権を貰ってしまおう。
「それなら」
「僕は元々、アンネを誘うつもりでいました。彼女が良ければ……」
私は即座に口を結んで隣を凝視する。
まさかのネルスが!誘うつもりだったとは!
「まぁ! そうでしたの!」
ラナージュは嬉しそうに手を合わせた。
「では、是非明日にでもお声掛けしてあげてくださいませ。よろしくお願いしますわね?」
念を押すようにネルスの手を両手でぎゅっと握る。
美女を間近で浴びたネルスは真っ赤になって固まってしまった。
美人は身内で見慣れてるはずだけど、やっぱ家族じゃ耐性つかないよね。
いや美醜関係ないか異性だからか。
そして、本当にそれだけの用事だったらしいラナージュは、ごきげんようと手を振って行ってしまった。
なんだったんだ。
想像していたより、夢見る乙女な愉快なお嬢様だったのか。
「ネルス、アンネを誘うつもりだったのか」
ラナージュの姿が見えなくなると、エラルドが後頭部で手を組みながらネルスを見下ろした。
「他にまともに話せる女子生徒がいないんだ。アンネにさえまだその話を切り出せなくて……」
私の仲間だった。
多分、陽キャのエラルドには一生分からないだろうと思うこの気持ち。
「舞踏会のパートナーになれというだけだろう?奥手だな」
お前もかバレット。
お前もそういう感じか。強い。
「バレット、君に言われる筋合いはない」
エラルドが負けたことをまだ引きずっているネルスは、眉を顰めてそっぽを向いた。
そして私たちを横目で見る。
「僕は明日アンネに声をかけるとして、3人にはもう相手がいるのか?」
ネルスの言葉には3人で揃って首を横に振った。
「いやー忘れてたな舞踏会のこと」
「エラルドもか……私も今の話で思い出したよ。まぁ最悪、私と2人でいこう」
肩を叩くと、ケラケラとエラルドは笑う。
「あ、それでもいいよなー! 相手は女の子じゃないといけないって決まってないし!」
いけないと決まってはいないが、暗黙の了解で決まっているようなものなのだが。
エラルドは本当にノリがいい。
「興味ないから行かん」
バレットはそういう感じかー。なるほどねー。
そうか、行かないという選択肢があるとは知らなかった。
しかし美味しい食べ物も出るのに勿体無いぞ、とエラルドと2人で行くように促してみる。
「お前たち!学校行事なんだから真面目にやれ!」
最終的に、途中までは黙って聞いていたネルスに怒鳴られた。
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