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第一章
ラナージュ・オルキデ
しおりを挟むここは寮への帰り道。
私はエラルド、ネルスとアホなじゃれ合いをしていたところを皇太子の婚約者で才女と名高くてすごく美人のラナージュと、ついさっきエラルドとの稽古試合で見事勝利したワイルド系イケメン剣術使いのバレットに見られてしまった。
本当の15歳だったら私、恥ずかしすぎて泣いて逃げてるわ。
しかし今は、当時の自分はやった覚えはないけど、15歳なんてそんなもんでしょという鋼の精神力があるので平気だ。
それよりもどうして2人が一緒にいるのかという方がとても気になる。
知り合い?知り合い?
騎士見習い君とお嬢様が幼なじみで、貴方を守るために強くなります的なそういうご関係?
怪我をした時にお嬢様の綺麗なハンカチで手当してくれたりして?
身分違いの恋?
「わたくしを連れて、遠くへ連れて行ってはくれませんの?」
「全てを捨てる覚悟がお有りなら……」
みたいなそういうの見たことあるようなないような。
だとしたらアレハンドロを手放しで応援出来るんだけども。
片や皇太子と平民の少女、片や騎士と皇太子の婚約者のお嬢様。
うんうん、身分差良いよね。
2人が並んで歩いていただけでここまで妄想を展開出来るのは我ながらドン引きだ。
でもそういうのが好きなんだから仕方がない。
正直にいうと、私の命は貴方のものですな騎士がアレハンドロの幼なじみに欲しかった。
それが一番好き。BLでもブロマンスでも良い。
姫と騎士、王子と騎士は鉄板だよね。
「皆さま、仲が良くていらっしゃるのね?」
口元に手を添えて微笑まれてしまった。
いやこれ嘲笑われてるのか?
どっちか分からないが笑顔を返しているネルスがすっごいこっちに怒りのオーラを向けてきているのは確か。
いや始めたのは私だけど、2人もノッてきてたから絶対私だけのせいじゃない。
「女子寮反対側なのに一緒にいるなんて、2人も仲が良いんだな?」
立ち上がったエラルドが砂埃を払いながらラナージュとバレットを見比べた。
直後にネルスが思いっきりその足を踏み付けたのを私は見逃さなかった。
うん、よくそこに触れたなエラルド。
勇気がありすぎる。
踏まれても痛いとは言わなかったが、固まったエラルドの背中の砂をパタパタと払ってやる。
「仲良しと言ってよろしいのかしら……お話するのは2度目ですの」
「さっき偶然会って声をかけられただけだ。」
(なーんだつまらん)
私の妄想は早くも打ち砕かれてしまった。
ネルスが隣でホッとしているのが空気で伝わる。
私と同じ、ではないとは思うが。
2人の間に何かあるのかと勘ぐってしまっていたようだ。
普通に考えたら2人で歩くくらい男女の友人でもあることなのだけど。
ついつい付き合ってるのかな、とか思ってしまう。
いや、果たしてよくあることだろうか?
私がこの年の頃は無かったな。まぁいい。
「男子寮にはアレハンドロに用事で?」
私はそう聞いてはみたものの。
もしそうであれば、アレハンドロはおそらくまだ食堂でアンネとデート中なので部屋にはいない。
場所を教えるわけにもいかない。
どうしよう、と頭を悩ませた。
ラナージュは首を横に振ってから、こちらを真っ直ぐ見た。
「いえ、実は丁度あなた方4人にお願いがあってこちらに来たんですわ」
丁度良すぎでは。
しかし心配事はなくなった。
「お願い、ですか?」
ネルスが先を促すように復唱する。
「ええ。来週末に1年生の懇親会を兼ねた舞踏会があるのはご存知でしょう?」
そういえばあるって母親が言っていた気がする。
そのために服を用意して持たされていたのに、すっかり記憶から抜け落ちていた。
懇親会を兼ねた舞踏会とは。
そのまんまなのだが。
1年生のみで行われる、これから3年間同級生としてよろしくねのパーティーだ。
皆んながドレスアップして会場に集まり、ペアでダンスしたりご飯食べたりおしゃべりしたり恋に落ちたりするぞ!
「あなた方、どなたかアンネをエスコートしてくださらない?」
アンネって。
私が知るアンネは1人しかいないんだがそのアンネでいいんだろうか。
社交会のテーマにもよるが、通常そういった場には男女のペアで行く。
夫婦、もしくは恋人同士で行くのが一般的だ。
しかし、親に連れられて来ている社交会にデビューしたての我々のような子どもは除く。
だからあんまり長い間1人で参加していると「寂しいお1人様」ってなるし、相手がころころ変わると「遊び人」となる。
いや、後者は本当にそうなんだと思うけど。
だが、今回のような場合は学生の親睦会だし、みんな友だちと来て良い人いたらダンスしよーって感じかと思っていた。
まさか違うのか。
父も母も執事もメイドも教えてくれなかったけど!?
大事だぞそこ!
「アンネ……?アンネ・アルメリアでよろしいですか?」
ネルスも他に「アンネ」を知らなかったようで、遠慮がちに質問する。
ラナージュは今度は頷いた。
私を含む4人の顔には「なんで?」と書いてあるだろう。
「アンネとわたくしは、とても良い友人なんです。パートナーが居ないということなので、少しでもお手伝いをと思ったんですわ」
ですわじゃなくて。
そこじゃないそこじゃ。
いやそこもなんだけど。
そんなお節介しなくて大丈夫だろうと言いたいが、人によるので言葉を飲み込む。
「なんで俺たちなんだ? アンネと仲がいいからか?」
まずはエラルドが疑問をそのまま口に出した。
私もつられて口を開く。
「ん? バレットも仲がいいのか?」
ずっと動かずに立っている無表情くんに目線をやると、首を傾げている。
「何回かしか話したことはないな。」
バレットとしては、仲が良いというほどの関係ではないということだろう。
全員の話を聞いていたネルスが、改めてラナージュを見た。
「なんで僕たちなんです?」
ゆったりと瞬きをした後、浮世離れした楽しそうな笑顔が私たちを見た。
「あなた方がアンネと運命的な出会いをされているからですわ」
才女って噂だったけどどうなんだ実際は。
いったい何を言っているんだこのお嬢様。
4つのポカン顔を眺めながら、にっこりとラナージュは笑みを深める。
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