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第一章
かわいい
しおりを挟む「と、言うわけだ」
私は何故バレットとパートナーになったのかと、真っ青な顔のネルスに襟首掴まれる勢いで詰められたため、経緯を説明した。
予想通りの反応すぎて面白い。
「説明を聞いても意味が分からない……」
ネルスは唖然として私とバレットを交互に見た。
同じく驚いていたエラルドはというと、
「なんか理由がバレットっぽいし、それを受けるのもシンっぽいよなぁ」
とネルスに比べて頭が柔らかいらしく、軽く受け止めてくれている。
「ダメではない……のか、禁止はされてないし……同性同士でも……」
ネルスは額を抑えて俯き、ぶつぶつ言っている。
なんか、がんばれ。
自分の常識の範囲外のことが起こると混乱するよね。
でも、学校行事だしそんなに深刻にならなくてもいいと思うんだ。
当のバレットは、
「まだ会場には行かなくていいのか?」
と何も気にしていない様子だった。
「ああ、この2人のパートナーが来てから……あ、来たぞ」
丁度その時、アンネとパトリシアが仲良く2人で並んでやってくる姿が見えた。
ドレスアップした2人が並んで歩いているのは目に楽しい。めちゃくちゃかわいい。
目が合ったので手を振ると、先に気づいたパトリシアが満面の笑顔でアンネの手を引いて足を早めた。
かわいいがかわいいとおてて繋いでるわ。
かわいいねー!!ていきなり声かけたい。
「皆さん、とっっっても素敵ですね!カッコいいー!」
そう言ってキラキラした顔で私たち4人を見ている、パトリシアくらいのテンションでかわいいを連呼したい。
そして、パトリシアは、
「アンネを見てください!すごく綺麗でしょう!?」
と、嬉しそうにアンネの背を押した。
「わわ!パトリシアちゃん……!」
恥ずかしそうに顔を赤くしているアンネは、オフショルダーの明るいミントグリーンのドレスを着ていた。
裾に向かって生地がふんわりと広がるプリンセスラインのようなシルエットだ。
白い糸で小花柄の刺繍が散っていてとても可愛らしい。
胸の中央部にはネルスと同じピンクの花が飾ってある。
いつもおさげにしている髪は白いレースのリボンでハーフアップにしていて、ふわふわと綺麗に波打っていた。
メイクしているのもとてもかわいい。
すぐに褒め言葉を口にしたかったが、落ち着いて深呼吸をする。
今はやめておいてネルスに目配せしようとすると、
「どうです?ネルス様!」
パトリシアがぐいぐいとネルスの方へアンネを押していた。
「え、と……と、とても……素敵だな」
ネルス頑張れもう一声!!
顔を見れば心からそう思っているのは伝わってくるが、ドレスアップした女の子はもっと感想を求めてるぞ!
特に、アンネはドレスなんて着る機会がなかったはずだから自信を持たせてあげなければ。
「ね、ネルス様、無理なさらないてくださいね……!ラナージュ様が貸してくださったんでドレスはとても素敵なんですが……!」
「無理なんて!本当によく似合っている!すまない上手く言葉に出来なくて……!」
「そんな、ありがとうございます…!あのあの、ネルス様も大人っぽくてとても素敵です!」
「う、嬉しいよ!ありがとう!」
(甘酸っぱい……かわいい……)
お互い真っ赤な顔で早口になって。
忙しなく喋っている2人が初々しくて口元が緩む。
「アンネの髪の色やピンクの花によく合うドレスだよな。さすがラナージュ嬢だ、まるでアンネのために作られたようなドレスを貸してくれたんだな!」
「え、エラルド様!ありがとうございます、恐縮です……!」
相変わらずサラッと持っていくなこの男。ほんと好き。
横でこくこくと首を縦に振っているネルス。
パートナー盗られそうだぞ大丈夫かと言いたくなる。
嬉しそうなアンネを見て、私も口を開いた。
「いつもと違う髪型も良いな。リボンもアクセサリーもメイクもアンネの可愛らしさを引き立てているよ」
ネルスが横でうんうんと何度も頷いている。
君はもう変に女性の扱いとか学ばずそのままで居てくれ。
アンネの指先が髪に触れる。
「か、髪やお化粧はパトリシアちゃんがしてくれて!シン様も、とても……素敵です……」
「ありがとう、アンネ」
照れながらもおしゃれが楽しいことが滲み出ている。
なんでもないように笑顔で返したけれど、私を見るうっとりとした顔がこそばゆい。
なるほど、褒められると自分のことが好きなのかな、と勘違いする人の気持ちがわかる気がする。
「パトリシアはアンネの身支度を手伝って、自分の支度もしてたのかー!すごいな、俺のお姫様」
隣で聞いていたエラルドが、アンネの後ろにいたパトリシアに近いていった。
ニコニコしながら滑らかに口が動く。
「制服姿も可憐だけど、今日は一際綺麗だな。俺にはもったいないよ」
「ありがとうございます!!誰よりもカッコいいです、私の王子さま……」
君たちもしや相性がいいな?
エラルドを見上げ、目をハートにして頬に手を当てているパトリシアも、当然華やかな格好になっている。
いつもよりボリュームを持たせたボブヘアーで、エラルドとお揃いの青い花を左耳の上につけている。
ストレートビスチェの黄色いドレスの胸元にはレースの花がいくつも飾られている。
スカート部分はフリルが何枚も重ねてあるような愛らしいデザインだ。
細身なので、エラルドなら軽々とお姫様抱っこ出来そうだなぁかわいいなぁ。
「エラルド様の瞳と似た色にしてみました!」
手で軽くドレスをつまんだパトリシアがクルリと回った。フリルがふわりと広がる。
(す、すごい!あざとかわいい!)
こういう時にエラルドはどういう顔をするんだろうと思って見てみると、変わらず微笑んでいる男がいた。
流石に照れたりとか嬉しそうにしたりとかしようよ15歳でしょ。
ネルスを見ろよ、なにそれかわいい~って顔に書いてあるぞ。
バレットは無表情だけど。
そしてそのスーパー15歳は、パトリシアの手をとると、
「君の気遣い、とても嬉しいよ」
腰を軽く曲げて手の甲に口付けた。
アンネは少し落ち着いてきていた顔を再び真っ赤にして口元を手で覆う。
ネルスは化け物でも見たような青い顔で固まっている。
バレットは安定の無表情。
私はまた格好良いと面白すぎるの狭間でのたうち回った。
パトリシアはそのまま後ろに倒れていった。
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