子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第一章

冗談に決まってるだろ

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「え――――!! シン様とバレット様が!」
「パートナーなんですか!?」

 アンネとパトリシアは目を見開いて周りが振り返るほどの声で驚いた。
 特にパトリシア、声大きすぎてこっちがびっくりしたわ。
 
 会場に入ろうと並んでいた前後の生徒たちがあからさまにざわつき、聞き耳を立てているのが分かる。
 本当に人の会話を聞くのがお好きなことだ。

「そうなんだ。君たちのパートナーに負けないくらい格好良くて素敵だろう?」

 私はバレットの肩に手を置きながら笑顔で首を傾けた。
 
 褒めても特に嬉しそうでもないバレットは、私たち貴族とは違い騎士の家の出らしい正装だった。

 濃い灰色のナポレオンジャケットのようなものと、同じ色のズボン。
 ジャケットの中央を走るパスマンタリー装飾は黒い色をしている。
 左肩には服と同じ色のマントがひらめいていた。

 いかにも騎士という感じで、とても凛々しく見え、似合っている。格好いい。軍服最高。
 
 アンネもパトリシアもエラルドやネルスの時と同じく唖然としながら、しかし頷いている。
 パトリシアが胸に手を当てて、震える声で言葉を紡いだ。

「でもそんな……みんなの王子様のお姫様が騎士様だったなんて……」

 エラルドも言ってたけど、みんなの王子様だったのか私は。
 王子様みたいな人から一気に昇格してるぞ。
 そして騎士様って呼び方は今思いついたのか、元々のバレットのあだ名なのかどっちだ。
 騎士様多いぞこの学校。

「ぱ、パトリシアちゃん逆じゃない?みんなの王子様が騎士様のお姫様だったんだよ……」

 混乱中です、という顔をしながら、アンネはそこが気になる派なのか。わかる。

「あ、そ、そうか……」

 頷いちゃうんだ。

「それはどっちでも同じじゃないか?」

 とても冷静な声でネルスが突っ込んだ。
 
 いやネルス、全然同じじゃないぞ。
 下手したら論争が起きて友情に支障をきたすレベルで大切なことだ。
 たぶん2人はそこまで深く考えてないけどな。

「お前はお姫様だったのか?」

 そもそもの原因であるバレットが目線を動かして私の全身を眺めた。

「今日だけはお前のお姫様だ。それとも王子様の方がいいか? なんせみんなの王子様だそうだから」

 バレットは本当に顔からも声からも感情が読み取りにくいので、とりあえず軽い調子で笑って肩を竦める。
 すると、顎に手を当てて考える素振りを見せた後、

「俺はダンスは男側しか踊れないからお姫様になってもらうしかないな」

 と、ものすごい真顔で返されてしまった。
 今更なんだけど、この子も声が良いなぁ。
 トーンは低めなんだけど、意外と涼しげで聴きやすい。
 その顔と声でお姫様とか言うのか。

「そうか。ところでお前は冗談で言ってるのか本気で言ってるのかどっちだ?」
「冗談に決まってるだろ」

 冗談を言うらしい。
 良く一緒にいるエラルド以外の3人も「あ、冗談通じるんだ」って顔をしている。
 お母さんへの反抗期っぽいところもだけど、想像するより年相応なのかもしれない。
 反抗期っぽいのは私の予想だが。
 
 おそらくこの中では一番バレットのことを知っているエラルドが、

「せっかくだから一曲くらい踊ったらいいんじゃないか? シンなら女性の方も踊れそうだしな!」

 と、まさかの爆弾をぶっ込んだ。
 いや、踊れるけども。
 ダンスの練習の時にあまりにスルスル体が動くのが楽しくて、女性パートはこんな感じなのかと密かにかわいい弟とふざけて踊っていたんだけども。

「男同士で踊ってもつまらん」

 キッパリハッキリ切り捨てられた。
 女の子と踊るのは楽しいと感じるということか。
 さっきから意外性の塊だ。

「面白いと思うぞ?見てみたいな」

 エラルドの言葉を聞いてバレットは私の方を見る。

「だそうだ」
「やるか」

 推しが言うなら仕方がない。
 バレットは友だちが言うなら面白いんだろうという感じだろうか。

「本気かお前たち」

 ネルスは無の表情になってしまっているが、一応ツッコミを入れてくれる。

「えー!ちょっと楽しみだね!」
「うんうん!カッコいい人たちが踊るの、どんな感じかな?」

 女の子二人はキャッキャと楽しそうにしている。
 この子たち柔軟な頭してるなぁ。
 私は畑違いだが、アイドル同士で仲良くするファンサもあるって聞くし腐女子じゃなくてもそういうのが好きなのかな。

 私もイケメン2人が踊ってるのを観る方がしたいんだけど。

「もしかして僕がおかしいのか?」

 ネルスは1人で項垂れていた。
 
 
 
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