子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第一章

ドタバタ劇場ダイジェスト

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 あっという間に暑い季節がやってきた。
 制服は薄く風通しの良い半袖シャツになり、見た目はほとんど変わらないズボンも、春に着ていたものより涼しい仕様になっている。

 本日は終業式。
 怒涛の一学期が終わったのだ!
 

 舞踏会は何事もなく終わった。

 あの後はエラルドがアレハンドロを連れてきてくれたので、そのまま閉会の挨拶、解散の流れだった。
 私はバレットを引っ張ってそそくさと帰った。

 そして服を投げ捨てて布団にダイブ!
 寮のお風呂は大浴場で、いつでも入ることが出来る素敵仕様なので朝起きてから入っても問題ない。
 化粧をしてないって素晴らしい!!
 ちょっと髪のワックスやダンスでかいた汗が気になるけどもう知るか!
 と、疲労に溺れるようにぐっすり眠った。
 
 特にその後、アレハンドロともアンネとも気まずい雰囲気が流れることもなかったので、その件に関しては全て良し、だ。
 
 そしてその後、色々、色々あった。
 平穏に日々を過ごすはずだったのに色々あった。
 

 まずはひとつ目のドタバタ劇場ダイジェスト。

 アンネがどこやらのお嬢様方に「平凡な平民の頭でっかちが上級貴族に色目を使っている」とかなんとか絡まれたらしい。

 私と仲良くしていたりネルスと舞踏会のペアだったりアレハンドロと舞踏会で踊ったりその他色々、絡まれる要素は満載だった。

 パトリシアと2人で他には人の居ない裏庭で勉強中のことだったらしい。
 こういっちゃなんだがあるあるのやつだ。

 だが賢い2人は相手にしなかった。
 スルーして場所を移動しようとしたそうだ。

 そして立ち去ろうとしたアンネが落とした万年筆をお嬢様方の内の1人が壊したと。

 その万年筆はアンネの両親が入学祝いでくれた大切なものだった。なんてベタな。
 ベタだけど許せる話ではない。
 特別大事なものじゃなくても人の物を壊すってどういう神経してるんだよ。

 セオリー通りなら私やネルス、もしくはアレハンドロが登場して助けるところだろうがそうはならず。
 アンネが怒ってなにかやり返したわけでもなく。

 親友を貶されてもずっと耐えていたパトリシアが、そこでキレたらしい。

 ここまでは私を呼びにきた同級生の男子生徒から聞いた話だ。
 実は裏庭には2人の他に木の影で読書していた男子生徒がいた。それに気づかずお嬢様方はやらかしたのだ。
 いやそこすごく大事だろうきちんと確認したまえ。

 で、男子生徒がなぜ私を呼びにきたか。

「パトリシアの魔力が暴走して大変だ!!デルフィニウムなんとかしてくれ!!」

 ということだった。いや先生のとこ行け。

 後で聞いた話だが、パトリシアは魔力の保有量がとても多く魔術師向きなのだそうだ。
 だがあまりコントロールが上手くできないとのこと。

 私が現場に到着した時に目にしたものは、ベンチ3脚が縦横無尽に裏庭を舞い暴れ回っている中で女子生徒が叫び声を上げているという光景である。

「キャー!!」
「なんですのこれは!」
「止めてくださいませ!ごめんなさいー!」
「パトリシアちゃん!止めて止めて!」
「どうやって止めるのか分かんないー!誰か止めてー!」
「イヤー!!」

 叫んでる中にアンネとパトリシアもいるのはどうなんだ。
 呆れ返りながら私はすぐにベンチを止めて元に戻した。

 お嬢様方には色々言いたいことがあったが、人の物は壊してはいけない旨と相手が嫌な気持ちになることはしないようにと小さい子に言うようなことだけを伝えて後は放置。
 怖い思いをして懲りていることを祈る。

 アンネの万年筆はカケラも全てがその場にあったのでもちろん修復。
 パトリシアには魔術制御のための魔術道具を作ろうという話になった。
 
 パトリシアのおかげでとりあえずみんな無事でよかったねって結果になった出来事だった。
 

 ドタバタ劇場ダイジェストふたつ目はエラルド決闘事件。

 舞踏会でエラルドにフラれていたピンクドレスのお嬢さんの婚約者がエラルドに決闘を申込んできた。
 婚約者いたんかい。

 場所は剣術の修練場。
 その場に居たのは偶然にも私、エラルド、バレット、お嬢さんとその婚約者の5人のみ。
 他の生徒はもう帰った後だった。

 どうやらお嬢さんが婚約者に「エラルドに無理矢理キスされた」といったようなことを吹き込んだらしい。
 具体的にあの漫画とかあの小説、といったところは思い出せないがこれもよくあるやつな気がする。

 しかしエラルドは決闘を拒否。
 理由は、

「俺が勝っちゃうと思うから」

 だそうだ。
 多分そうだろうな、相手の実力知らんけど。
 そうしたら相手のプライドを傷つけたのだろう、その男子生徒が喚き出した。

「顔と剣術だけが取り柄の貧乏貴族」だの「金のある家の人間に胡麻を擦っている」だのと。

 悪口のボキャブラリーカモンと思うくらい安直な罵倒だったが、言われた本人は気分が悪かろう。
 聞いていて私もうんざりした。

 その胡麻を擦られている金のある家の人間ってのは私のことか?本人を目の前によく言ったなたわけがこっちが一目惚れしたんだわ。

 しかしエラルドは、

「あっはっは!剣術だけが取り柄の貧乏貴族ってそのまんま俺のことだ!的確だなー!」

 と爆笑し始めた。流石に怖かった。

 相手も怖くなったらしく一瞬口を閉ざしたし、ピンクドレスちゃんはポカン顔だった。
 が、懲りずに再びギャンギャン言い出した。

 そろそろ面倒になってきたけどエラルドは「そんなことしてない」とは一言も言わないしどうしたものかと考えていると、

「鬱陶しい。そんなに決闘がしたいなら俺が代わりに受けてやる。剣を持て」

 と、ずっと黙っていたバレットが持っていた剣を抜いて相手方に向けた。
 切っ先を突きつけられて、あんなにやかましかった男子生徒が唾を飲む。

 殺気がヤバすぎた。
 多分本気でイライラしてきたんだろう。

 マジで殺られると感じたらしい2人はそのままどっかいった。
 なんだったんだほんと。

 エラルドになんでキスなんかしてないって言わなかったのか聞いてみた。

「信じないと思うし、あの子が恥かくだろ?」

 とのことで。
 よくもこんな良い子に無駄な時間を過ごさせたなと私は思いました。
 と、小学生並みの脳内作文が作成された。
 
 ていうか私、よく考えたら何もドタバタしてないわ。
 気持ちだけなんかドタバタしてた。
 
 それにしても、いくつになっても親しい子が悪く言われるのはバカバカしいとは思えても気分が良くないものだ。
 めちゃくちゃに言い返したくなるのをおさえるのも難しい。

 と、学生たちに囲まれながら感じた一学期であった。
 
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