子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第二章

そろそろ帰ろうか

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「はい、おしまい」

 私は音を拾う魔術を解除し、ラナージュの目を覆って自分も2人のいる方には背を向けた。

「ええっなんでですの!?何も見えませんわ!」

 ラナージュは抗議の声を上げて私の手を外そうとする。
 させない。
 柔らかく笑って口を開く。

「流石にプライベートに踏み込みすぎただろう?」

 自分で言っといてびっくりするほど今更だけどな。

「仕方ありませんわね……」

 もう少し抵抗されるかと思ったが、思いの外すんなりとラナージュは諦めてため息をついた。

 そのままの状態で2人からは離れていく。
 女の子の目隠しをしたまま歩いてる状態って、周りからしたらいちゃついてるカップルに見えるだろうな。
 今は魔術のせいで見えないけれど。

「満足したなら、そろそろ帰ろうか」

 ある程度離れると、目元から手を離して魔術も解く。

「ええ、そうしましょう」

 ようやくいつも通りの落ち着いた様子に戻ったお嬢様が頷いた。
 劇場の敷地と外を仕切る門へと歩いて行く様子に、なんだかほっとしながら離れないように後ろをついていく。

「ところで、デルフィニウムさま……」
「ん?なんだ?」

 ラナージュが私の方を振り返った丁度その時。

「キャー!!」
「ライモンドさまー!!!!」
「ロスウェルさまー!!!!」
「こっち向いて――!!」

 まさしく黄色い声がラナージュの声を掻き消した。

 騒ぎの中心を見ると、予想できる通り。
 王子役の俳優と魔王役の俳優が並んで出てきたのだ。
 皆なかなか帰らないなと思っていたら、ここで出待ちしてたのか?と思ったが、目に入った2人はメイクも服装も舞台のままだ。

 おそらくそういうパフォーマンスなのだろう。サービスいいな。

「デルフィニウムさま、もっと近くに行きましょう!!」
「え。あ、はい……」

 意外とミーハーだったらしいラナージュに腕を引かれて、ファンでごった返すイケメン俳優さんの居る方へ行く羽目になった。

 大きな赤い目がいつも以上に輝いている。
 何か言いかけてたけどもう良いのだろうか。

 ここ最近でラナージュの印象がガラッと変わったな。すごい振り回してくるタイプのお嬢様じゃんか。
 世話係の騎士か執事かの登場を求む。
 
 人の波に乗って分かったのだが、みんなはただ演者の顔を見ようとしているわけではないらいしい。
 どうやら並んだらハイタッチしてくれるようだ。
 よく見ると少し離れたところに他のメインキャストたちもいる。

 なるほど、みんな好きな人のところに行くわけか。
 サービス良すぎだな。
 セキュリティは大丈夫なのかな?

「わたくし、魔王役の方のところに行きたいですわ!ロスウェルさまとおっしゃるんですわね!」
「……わかりました……」

 とでも楽しそうに声を弾ませるラナージュと対照的に、気が乗らない返事をしてしまう。

 いや、私とて演者の方とハイタッチはしたい。とてもしたい。

 しかしルーク王子の肖像画は金髪碧眼なので、当然今回の劇でもそうである。なんだか近くに行くのが気恥ずかしい。
 自前の髪と目なので決して寄せたわけではないのだが。

 出来ればラナージュだけで行って欲しいが、何かあったら大変なのでついていくしかない。王子のすぐ隣ではあるが、魔王役の方に行くというのがせめてもの救いか。
 騎士や賢者の方に行ってくれたら良かったのに。

 ちなみに、魔王の外見は特に正式な記述があるわけではないが、今回の劇ではあろうことか黒い長髪に緑の瞳。
 せめて魔王に覚醒した状態で出てきてくれれば瞳は金色だったのに、何故か魔術師の時の姿で出て来ている。

 本当になんでだ。なんでわざわざ瞳の色を元に戻してきたんだ。
 絶対に今のアレハンドロとは並びたくない。

 そんなこと気にしているのは私だけなのかもしれないが、コスプレしてきたファンみたいになってしまう。
 さすがに魔術師は三つ編みはしていないけれども。
 私としたことが、前情報を何も確認しないできてしまったから。

 ちゃんとポスターを確認して被らないようにしてあげればよかった!
 
 まぁ、そうはいうものの。
 多分アレハンドロとアンネは今関係を進展させてる最中だろうからこっちには来ない。

「シン?」


 いやだー!!
 見つかったー!!
 こっち来ないで――!! 


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