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第二章
信じてないだろ!!
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(あー面白かった!)
女の子たちの話を聞きながら笑い転げるのを堪えたり強くツッコむのを我慢したり。
これぞカフェタイムって感じだった。
あまり関わることがないので知らなかったが、ラナージュが言うには先輩方の中にも素敵な人がいっぱいいるんだとか。
ここからの学生生活、放課後の学校内をうろうろして噂のイケメン探しをするのも楽しいかもしれないな。
いい男リストとかいい女リストとか誰か作ってくれてないかな作ってないよな。
そんな平和なことを考えながら、ご機嫌に寮へと向かって歩いていると。
「殿下! いけません! 絶対におやめください!」
ネルスの声がした。
何か焦っているような声だが、一緒にいるのはアレハンドロっぽいな。
何かやらかしたか、これからやらかそうとしてるらしい。
子猫を下ろすために木に登ろうとでもしてるのかなぁ。でも2人なら魔術でなんとでも出来そうだしな。
「もういい貴様は黙っていろ!」
めちゃくちゃデカい声で話すじゃんか。
Mr.クールとMr.ミステリアスの会話のテンションじゃないんだよなぁ。と思うとジワジワきてしまう。
喧嘩とは珍しい。
いやでも、知らないところで実は口論くらいしているかもしれない。
ネルス、慣れた相手には意外と強いからな。
「黙るわけがありますか! ラナージュ嬢やアンネに伝えますよ!」
ネルスの声と共に一際強い突風が吹いた。
風、空気を読んだな。
一体、何の話だ。
まだ見えない2人の会話が面白い。
風が強いし砂埃すごいし寒いので早く帰りたいが、もう少し聞いておこうと歩みをゆっくりにする。
しかし耳を傾けようとすると、2人の声が聞こえなくなった。
(何だつまらない)
さっきのネルスの言葉が王手だったのか?
アンネやラナージュに伝えたくないことって何だろう。何かとても格好悪いことか?
でもわざわざそんなことやりたがるとは思えないし。
話の内容が読めなくて色々考えて歩いていると、寮までの直線道になって2人の姿が見えた。
そして私は固まった。
アレハンドロが、ネルスの顔のどこかに手を当てている。
前屈みになって顔を近づけている。
詳しくは長い銀髪が邪魔をして見えない。
見えない!!
風!
仕事しろ!!
(どうせさっきの風で砂が目に入ったとか言うんだろう知ってるよ知ってるけど見たい!)
私はセカセカと足早に近づいて行った。
どうせキスとかしてないから、邪魔をしても大丈夫だろう。
あれー?お邪魔でしたー?みたいな感じで話しかけて2人を困らせてやろう。
「アレハンドロ、何をしてるんだ?」
「……っ!?」
私からはネルスの顔が見えなかったため、アレハンドロのみに声をかける。
2人とも思いっきり肩を跳ねさせた。
集中してる時にいきなり声掛けられるそうなるよね。
「な、なんだシンか!」
顔を上げたアレハンドロが息を吐く。
お化けじゃなくてよかったみたいな反応だな。
他にお前をアレハンドロって呼び捨てるやつ、この学校にいないんだよー。
「えっシン?」
ネルスも顔を上げてこちらを見た。
大きな右目に涙がうっすら溜まっている。
ほら絶対にゴミが入ったやつだ。
と、分かりはするがちょっと意地悪な茶番をしてやろう。
「アレハンドロ……嫌がる相手に無理矢理口づけしようとするのはいかがなものかと思うぞ」
2人がキョトンと顔を見合わせた。
(いーち)
そのまま固まる。
(にーい)
バッと音がするほど勢いよくこちらを見た。
(さーん)
「ちちちちがう!!」
「貴様、血迷ったのか!!」
(3秒かぁ)
私の言葉の意味を理解したらしい2人が跳ぶようにお互いから距離をとった。
面白い。
ネルスが顔を真っ赤にして首を振る。
アレハンドロは真っ青な顔で私の方へとやってきた。
面白すぎて惚けることにした。
「違う? 嫌よ嫌よもなんとやらだったか?」
「貴様は! 何を! どうして! 勘違いした!!」
勢いよく胸ぐらを掴まれた。
Mr.クール、全然クールじゃない。
綺麗なお顔がとても近い。
しかしこのまま揺さぶられたら気持ち悪くなりそうだな。
「どうしてもなにも。ネルスがやめろとかアンネやラナージュに言うとか言っている声が聞こえたと思って、少し急いで歩いたんだが……安心しろ、同意だったなら誰にも言わないから」
嘘と本当を混ぜて話す。
我ながらよく舌が回るものだ。
私は笑顔でアレハンドロの肩をぽんぽんと叩いた。
アレハンドロは形の良い唇をワナワナと震わせている。
ごめん。面白すぎる。
「いやー、しかし全く気がつかなかったなー。まさか2人がなー」
「ちぎゃ、だ、だ、だから違うじょシン!! 誤解だ!」
ネルスも慌てて私たちの方へやってきた。
動揺しすぎて舌が上手く回っていない。
焦りすぎると、逆に怪しく見えるのがまた面白い。
二次元でよくあるやつだー。
「さっきのは目に何か入って痛かったから見ていただいただけなんだ!」
予想が大当たりだった。
「へーそうかーとれたかー?」
私はギリギリと締め上げられながらネルスに乾いた笑みで答える。
「信じてないだろ!!」
高音と低音の二重奏。
悲鳴に近い必死な声が耳元で響いた。
信じてるよ。
わざとだもん。
女の子たちの話を聞きながら笑い転げるのを堪えたり強くツッコむのを我慢したり。
これぞカフェタイムって感じだった。
あまり関わることがないので知らなかったが、ラナージュが言うには先輩方の中にも素敵な人がいっぱいいるんだとか。
ここからの学生生活、放課後の学校内をうろうろして噂のイケメン探しをするのも楽しいかもしれないな。
いい男リストとかいい女リストとか誰か作ってくれてないかな作ってないよな。
そんな平和なことを考えながら、ご機嫌に寮へと向かって歩いていると。
「殿下! いけません! 絶対におやめください!」
ネルスの声がした。
何か焦っているような声だが、一緒にいるのはアレハンドロっぽいな。
何かやらかしたか、これからやらかそうとしてるらしい。
子猫を下ろすために木に登ろうとでもしてるのかなぁ。でも2人なら魔術でなんとでも出来そうだしな。
「もういい貴様は黙っていろ!」
めちゃくちゃデカい声で話すじゃんか。
Mr.クールとMr.ミステリアスの会話のテンションじゃないんだよなぁ。と思うとジワジワきてしまう。
喧嘩とは珍しい。
いやでも、知らないところで実は口論くらいしているかもしれない。
ネルス、慣れた相手には意外と強いからな。
「黙るわけがありますか! ラナージュ嬢やアンネに伝えますよ!」
ネルスの声と共に一際強い突風が吹いた。
風、空気を読んだな。
一体、何の話だ。
まだ見えない2人の会話が面白い。
風が強いし砂埃すごいし寒いので早く帰りたいが、もう少し聞いておこうと歩みをゆっくりにする。
しかし耳を傾けようとすると、2人の声が聞こえなくなった。
(何だつまらない)
さっきのネルスの言葉が王手だったのか?
アンネやラナージュに伝えたくないことって何だろう。何かとても格好悪いことか?
でもわざわざそんなことやりたがるとは思えないし。
話の内容が読めなくて色々考えて歩いていると、寮までの直線道になって2人の姿が見えた。
そして私は固まった。
アレハンドロが、ネルスの顔のどこかに手を当てている。
前屈みになって顔を近づけている。
詳しくは長い銀髪が邪魔をして見えない。
見えない!!
風!
仕事しろ!!
(どうせさっきの風で砂が目に入ったとか言うんだろう知ってるよ知ってるけど見たい!)
私はセカセカと足早に近づいて行った。
どうせキスとかしてないから、邪魔をしても大丈夫だろう。
あれー?お邪魔でしたー?みたいな感じで話しかけて2人を困らせてやろう。
「アレハンドロ、何をしてるんだ?」
「……っ!?」
私からはネルスの顔が見えなかったため、アレハンドロのみに声をかける。
2人とも思いっきり肩を跳ねさせた。
集中してる時にいきなり声掛けられるそうなるよね。
「な、なんだシンか!」
顔を上げたアレハンドロが息を吐く。
お化けじゃなくてよかったみたいな反応だな。
他にお前をアレハンドロって呼び捨てるやつ、この学校にいないんだよー。
「えっシン?」
ネルスも顔を上げてこちらを見た。
大きな右目に涙がうっすら溜まっている。
ほら絶対にゴミが入ったやつだ。
と、分かりはするがちょっと意地悪な茶番をしてやろう。
「アレハンドロ……嫌がる相手に無理矢理口づけしようとするのはいかがなものかと思うぞ」
2人がキョトンと顔を見合わせた。
(いーち)
そのまま固まる。
(にーい)
バッと音がするほど勢いよくこちらを見た。
(さーん)
「ちちちちがう!!」
「貴様、血迷ったのか!!」
(3秒かぁ)
私の言葉の意味を理解したらしい2人が跳ぶようにお互いから距離をとった。
面白い。
ネルスが顔を真っ赤にして首を振る。
アレハンドロは真っ青な顔で私の方へとやってきた。
面白すぎて惚けることにした。
「違う? 嫌よ嫌よもなんとやらだったか?」
「貴様は! 何を! どうして! 勘違いした!!」
勢いよく胸ぐらを掴まれた。
Mr.クール、全然クールじゃない。
綺麗なお顔がとても近い。
しかしこのまま揺さぶられたら気持ち悪くなりそうだな。
「どうしてもなにも。ネルスがやめろとかアンネやラナージュに言うとか言っている声が聞こえたと思って、少し急いで歩いたんだが……安心しろ、同意だったなら誰にも言わないから」
嘘と本当を混ぜて話す。
我ながらよく舌が回るものだ。
私は笑顔でアレハンドロの肩をぽんぽんと叩いた。
アレハンドロは形の良い唇をワナワナと震わせている。
ごめん。面白すぎる。
「いやー、しかし全く気がつかなかったなー。まさか2人がなー」
「ちぎゃ、だ、だ、だから違うじょシン!! 誤解だ!」
ネルスも慌てて私たちの方へやってきた。
動揺しすぎて舌が上手く回っていない。
焦りすぎると、逆に怪しく見えるのがまた面白い。
二次元でよくあるやつだー。
「さっきのは目に何か入って痛かったから見ていただいただけなんだ!」
予想が大当たりだった。
「へーそうかーとれたかー?」
私はギリギリと締め上げられながらネルスに乾いた笑みで答える。
「信じてないだろ!!」
高音と低音の二重奏。
悲鳴に近い必死な声が耳元で響いた。
信じてるよ。
わざとだもん。
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