子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第三章

カラマ

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「ここがカラマか! うちの領とは全然雰囲気が違うんだな!」

 馬車を降りると、ネルスがテンションがMAXなのを隠さず、眼を煌めかせて街を見渡す。
 馬車の中からずっと口角が上がっていた。

(かわいい。動画におさめたいかわいさ)

 初めての場所ってテンション上がるよね。
 もし可能であるならば、日本の城とか古い街並みとかを案内してあげたい。きっと楽しい。
 
 ここは学園から日帰り出来る圏内では、大きい都市の1つ、カラマ。

 赤煉瓦や青煉瓦の賑やかな色彩の、しかし統一感のある建物が立ち並ぶ。
 どの建物にも窓があり、それが白いアーチ型になっているのが特徴的だ。
 他の土地と同じくヨーロッパ風である。

 道には主に白い布地の屋根がついた露店が訪れる人の興味を引く。ああいう所に並んでいると、とても魅力的に見えるものだ。
 地面は赤褐色の石で舗装されていて歩きやすい。

 観光客が多いのもあり、道行く人たちの服装は多様な文化を感じる。
 
 今までうっすらとだが、異世界の割には実際に接したり文献で見たりするどの文化圏の服装も建物も、なんとなく見たことがある雰囲気だなぁと思っていたのだ。

 貴族はともかく、平民の私服や学園の制服はとても現代的だし。
 現実世界の人が考えたゲームの世界設定だったからなんだろう。
 異世界物って大体こんな感じのイメージだったからなんの疑問も持たなかったわ。
 
 と、まぁ。
 外出についてくることになるよね。
 知ってた。
 
 皇太子の外出許可出した人たちもクリサンセマム侯爵夫妻も、エラルドだけでなくバレットと私が一緒にいるなら許可すると言ってきたのだ。
 はい、今回はお坊ちゃん2人のお守り兼ボディーガードですよろしくお願いします。

 ねぇ私も相当のお坊ちゃんなのに一体どういうことなの。大人からの信頼が重すぎる。
 子どもに子どものお守りをさせるなとあれほど。

「2人とも。分かってると思うが、絶対1人で行動するなよ。私かバレットかエラルドと絶対一緒に居るんだぞ」

 私はアレハンドロとネルスに改めて釘を刺す。
 何かあったら皇太子とか貴族とか関係なく大変だ。慣れない場所ではぐれるわけにはいかない。
 
 しかし、こちらの気も知らないで、ネルスはキョトンと首を傾げてくる。

「少しくらいなら、お前の守護の魔術があるから平気じゃないか?」

 私への信頼が嬉しいし顔が可愛いが聞き捨てならない。
 思わず目線を合わせて肩に手を置いてしまう。

「ネルスくん。それが発動した時には君は何か攻撃を受けてるってことだからな? 最悪の事態になってるからな? 分かるか? 絶対絶対はぐれな」
「分かった分かった。僕より殿下を念入りにおまもりして欲しいだけだ。父上に言われたからって子ども扱いするな」

 心底面倒くさそうに肩の手を振り払われた。

「子どもだから言ってるんだが!?」

 絶対殿下がどうとか思ってなかったし、行きたいところが違ったらちょっとくらい自由にしてもいいと思ってただろ!

「落ち着け落ち着け、シン。ネルスは見た目は可愛らしいけど俺たちと同い年だし、な?」

 だから、16歳はまだ子どもだって言ってんだけどな。
 高校生と思えば友だちと観光地くらい行くとは思うからあんまり過保護になっても良くないのは理解出来るけれど。
 塩梅が難しい。
 箱入りのお坊ちゃんたちだからズレたことをしそうで怖い。

「可愛らしい……」

 1人でこっそりショックを受けているらしいネルスは置いておいて。
 
 私の言葉には無反応で街を眺めているアレハンドロの方を向く。
 今日も念のために髪の毛だけ黒色に変え、1つの三つ編みにしている。
 三つ編みスタイルが気に入ったようで、最近は学校でもこの髪型にすることが多い。ニヤニヤする。

 この子も、行けることが決まってからずっと楽しみにしていたようだった。
 それゆえネルスほど態度には出ていないが、テンションが上がりすぎて何も耳に入っていない可能性が高い。

「アレハ……アレックスも分かったか?」
「今更だがなぜアレックスなんだ」

 ようやく返事をしたと思ったらなぜ質問に質問で返すんだ。

 そう、呼び方も変えることにした。こういう時に偽名を使うのはお決まりだしね。
 違いすぎると混乱するから、似たような名前にしたのだ。
 私は曖昧な知識のまま適当に答える。

「お前の本名と語源が一緒なんだよ。で、分かったか?」
「ほう」

 聞いておいて気のない返答しかない。
 苛立ちながら私は人差し指を鼻先に突きつけて迫った。

「分かったか? 離れるなよ? 返事は?」

 自然と口調もキツくなるのが自覚できるが止まらない。

「分かっている。くどい」

 指を退けながらフイとそっぽを向かれた。
 
 首輪つけといてやろうかこいつ。
 分かっているのか分からないから何回も聞いてんだよ。返事くらいしろ。
 
 ガルガルしている私の肩を、本当にずっと黙っていたバレットが叩く。
 ハッとして肩を下ろした。
 ついつい変なスイッチが入ってしまっていた。

「ああ、すまないバレット。熱が入りすぎて」
「もう店に行っていいか?」

 そうだった!
 こいつはこういうマイペースな奴だった!
 自分の好きなおもちゃコーナーのことしか頭にない!
 
 ドッと疲労を感じて返事を出来ないでいると、エラルドが「今日は頑張ろうなー」と、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
 好き。
 

 私が中身まで16歳だったら、こんなにアレコレここまで気を回さなくて良かったのに!

 これだから大人は!!!
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