子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第三章

新しい剣

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 街で一番大きい露店の通りを抜けたところで、3人との約束の時間になった。待ち合わせ場所の広場へと足を踏み入れる。

 芝が広がる広場の中央では白く大きい噴水が噴き上げ、円形の水場に落ちていっている。
 駆け回る子どもがぶつかってきそうになるのを避けながら見回すと、3人は既に待っていた。

 同じタイミングで私たちを見つけたようだ。ネルスが座っていた木製のベンチからすぐに立ち上がって駆け寄ってくる。
 そして後ろからのんびり歩いてくるエラルドの腰元を指差して興奮した様子で口を開いた。

「エラルドの新しい剣! 素晴らしいだろう!?」

 頬を紅潮させた嬉しそうな表情はとてもかわいい。
 だが何故、ネルスがこんなに自慢気なんだろう。

 と、後方に視線をやるとエラルドの隣を歩くバレットが大きく頷いている。
 表情筋はほとんど動いていないのに満足気なことがとてもよく伝わってくる。

 一緒に選んだらしいから君は分かるけどね。

 エラルドの腰にある剣の外観は全体的に白く、つばは金色をしていた。持ち手と鞘の先端にも同じく金の装飾が施されていて、上品かつ煌びやかだ。
 そのピカピカの剣の柄を無意識にか撫でている様子に口元が緩む。

「良かったな、エラルド」
「ああ、自分だけの新しい剣って初めてだから嬉しいよ」

 心の底から喜びが溢れる満面の笑顔だった。
 今までの剣は、自分の領に勤めている騎士のお古を使っていたらしい。
 そんなの、夜には新しい剣を抱いて寝るほど嬉しいに違いない。
 手が剣から離れる様子がないことからも明らかだ。

「試合するのが楽しみだなバレット!」
「今から出来るところを探してもいいぞ」

 うんうん、新しく買ったやつ、すぐ使いたくなっちゃうの分かるー。
 けれども。

「それは長くなりそうだからまた今度にしろ」

 楽しげな会話を無情にもぶった斬るアレハンドロにはこっそりグッジョブと思った。
 
 話がひと段落すると、アレハンドロがネルスたちの座っていたベンチに腰を下ろした。
 そういえばずっと歩いていたのだ。そろそろ休憩時間だろう。

「喉が渇かないか? 何か買ってくる。何が良い?」

 自動販売機がないのが不便なところだが、代わりに公園に入るすぐのところにドリンクを売っている店があったのを思い出す。
 私の言葉に全員が頷いて、各々好きな飲み物を遠慮なく注文してきた。

 こういう時、メモを取らなくても覚えられる優秀な頭は最高だ。

「あ、でも1人じゃ大変だろ? 俺も行くよ」

 エラルドだけは座らずに笑顔で申し出てくれた。
 魔術を使えば5人分の飲み物を運ぶくらい簡単ではあった。
 しかしせっかく手を上げてくれたのだからお言葉に甘えることにする。
 短い道中でも2人の方が楽しい。
 
 他の3人が座るベンチからある程度離れると、

殿でん……アレックス、何か持ってたけど……」

 と、エラルドが切り出した。どうやら気になっていたらしい。

「アンネにお土産みたいだぞ」

 その場で聞いても問題なかったのにと笑うと、珍しく黄色の瞳が泳いだ。

「シンはいいの? ラナージュ嬢とか」
「ラナージュ嬢?」

 どうやらこちらが本題らしい。
 本題らしいがラナージュとは。

 ここへ来ることを伝えてはある。
 どんなことでも良いから仔細な土産話を待っていると真剣な顔で告げられたと共に、有名なチーズタルトを買ってきてくれと言われている。

 気持ちが分かりすぎるので、記憶を映像化する魔術を解禁してあげようかと思っているのだが。それがどうかしたのだろうか。

 エラルドは指先で頬を触りながら、言葉を選んでいるようだった。

「ほら。殿下たちが婚約解消発表してから2人で居ることが増えたからさ。アレックスの方がフラれたんじゃないかって噂になってるよ」
「……。アレックスの耳に入らないようにしろよその噂」

 
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