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第四話
しおりを挟む壁にもたれかかりながら俺を待つ少女を見る。
足音で気が付いたのか、スマホに向けていた視線を上げた少女と目が合った。
成程、痴漢が狙うだけあって容姿もスタイルも整っている。
「悪い、遅くなった」
「別にいいわよ。警察の人に何か言われていたんでしょ?
お腹空いたわ、早くどこかへ行きましょ」
そう言うと足早に廊下を歩く……
駅構内にでると彼女は迷いなく飲食店街を目指していく……
「有名な君が私を助けるなんて、どういう風の吹き回し?」
やはりと言うか、既に俺は何かやらかしているらしい。
まったく心当たりがないのだが……
「別に、困っている人がいるから助けただけだよ。他意はない」
と咄嗟にいったが、他意はあった。
彼女を助けるという善行が、自分が悪役であると言う運命から逃れる足掛かりになるのではないか? と言う実験に選んだ。
ただそれだけだ。
「嘘ね。だって私の顔と身体を舐め回すように見ていたじゃない」
「うっ……それはさっきも警部さんにからかわれて意識しちゃったんだよ」
先頭を歩いていた彼女は、長髪を靡かせ振り返る。
「意識ねぇー」
「確かにメイクとか頑張って可愛い自覚はあるし、
スタイル維持だって努力しているから、お世辞でも嬉しいわ」
彼女はお日様のような笑みを浮かべる。
「学校休ませて悪かったわね」
「別にいいよ。死ぬわけじゃないし」
謝罪の言葉にそっけない返事を返してしまう。
「ところで何食べたい?」
「何でもいいよ。君に付き合うだけだし、俺の事は物言うサンドバッグとでも思えばいいさ」
「判ったわ。じゃああそこにしましょうか」
彼女が指さしたのはレストランだった。
「二名様でよろしいでしょうか?」
「はい」
「お席にご案内します」
テーブル席に案内され、店員さんが席を離れた直後に彼女は口を開いた。
「あの、さっきは……ありがとう」
大きな瞳に涙を浮かべ少し鼻声で、少女は感謝の言葉を告げる。
頬と耳は赤く染まりっている。
お礼を言わると思って居なかった俺は一瞬固まった。
「俺は自分のためにやっただけだよ。言うだろ? 情けは人の為ならずって、つまり俺は人を助ける事で間接的に自分のためにやっているわけで……」
「プフっ!」
彼女は吹き出すと、涙を流しながらカラカラと笑う。
「なにそれ、私に気にするなって言いたいの? 口下手か!
男のツンデレなんて、相当の美形じゃないと需要ないわよ?」
自分でも顔が赤くなっていることが分った。
俺は思わずそっぽを向いた。
「う、うるさい。」
「なに真堂くん照れてるの?
顔はクール系なのに可愛いとか温度差凄いわー
あー風邪ひきそう」
ニマニマと笑みを浮かべながらからかってくる。
「やっぱり噂なんてアテにならないわね。
真堂くん話やすいもん」
「噂って……えっと……」
「まず、私の名前は成嶋明日羽よ」
成嶋明日羽と言う名前に聞き覚えはない。と言う事はつまり原作におけるネームドキャラクターではないのだろう。
「君は俺のことをしっているみたいだけど、改めて真堂恭介だ」
「うん、知ってる。君は私の事『ミリしら』みたいだけど……」
「み、みりしら?」
初耳の単語に思わず聞き返してしまう。
「ミリほども知らない。つまり全然知らないってことよ」
「なるほど……」
最近アニメや漫画を複数追うのすら億劫になった俺。
十代女子の刹那の流行など露ほどもしらない。
逆に俺の年でそういうのに詳しい奴って近い年齢の妹か彼女がいる奴ぐらいだろう。
あとは援助交際――近年はパパ活と言うらしい――している奴ぐらいだろう。
「私そこそこ有名なんだよ?」
「は、はあ……」
「まあいいわ。注文は何にする?
五千円貰ったんだしパーっと使いたいわね」
「嫌なことがあった時はさk……最高に美味いメシをお腹いっぱい食べるに限る」
危ねぇつい『酒』っていいかけたけど誤魔化す事が出来たと思っていると……
「『さk』って何よ? まさかお酒じゃないでしょうね?」
「噛んだだけだ。因みに未成年飲酒は酒を売った方と、未成年の飲酒を知りながら制止しなかった場合、親権者や監督代行者が……」
「そういうのいいから……」
「あ、ハイ」
「で何を食べるの? 私はこのステーキだけど」
そう言ってメニュー表で指示したのは300gを優に超えたハラミステーキ。お値段1700円ほどとかなり良心的。
だが華の女子高生の選択とは思えない程、ニンニク香るものだった。
「じゃあ俺もそれで……」
「男の癖に主体性が無いのね……」
「最近はやりの草食系なので……草技が効かないです」
「……なに? なんかのゲームの話?」
「あ、なんでもないです……」
最近の若い子はポ〇モンに詳しくはないらしい。
俺の時代は一強だったと言うのに ちくしょう。
NEXTポ〇モンの立ち位置は、デ〇モンか妖怪ウ〇ッチあたりだろうか?
成嶋さんはシュシュ? で髪を纏めると戦闘態勢に入る。
「今日はガッツリ食べて、嫌な事忘れるわよ!」
「成嶋さんほど綺麗なら経験ありそうなんですけど案外ないんですね」
「真堂くん君ねぇ……
まあいいわ! 今日は寝坊してメイクが地味だから、いつもより気が弱く見えたんでしょうね」
「なるほど」
「次からはもう少し早起きするか、女性専用車両に乗るわ。
でも香水とか化粧品のニオイがキッツイのよねぇ……」
香水はキツイだろうと言うのは何となくわかるが、化粧品のニオイがキツイと言うのはよくわからない。
「備えあれば憂いなしといいますし、自衛はしておいた方がいいかもしれませんね
あ、これ一応俺のLIMEです。何かあれば呼んでください」
そう言ってQRコードの画面を見せる。
「真堂くんって手が早いのね。
普段からこういう手口で女の子引っ掛けているの?」
「違いますよ! 善意ですよ善意。
気に入らなければ登録してブロックしておけばいいでしょう? それに成嶋さん気丈に振る舞っていますけど、絶対に後で辛くなりますから、壁打ちの相手は多い方がいいでしょう?」
「うん。そうかもね、そうだね」
少し暗い雰囲気になった時、店員さんがメニューを配膳に来た。
分厚く大きなステーキ肉、転生前なら胃もたれするような肉に
齧り付いたけれど、ステーキの味はよくわからなかった。
――――――――――――――――――――
ちなみに朝のシリアルはパンケーキにフォームチェンジし、スタッフがおいしくいただきました。
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