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第五話
しおりを挟む明けて翌日。
昨夜はスマホに覚えている限り、この作品世界の情報を纏めていたせいで少し寝不足だ。
枕元に置いたスマホが轟音を搔き鳴らし目が覚める。
「――――うるさっ!」
スマホを触ってアラーム音を止め、時計を見れば時刻はまさかの6時台……
「じじいかよ……」
低血圧なのか目覚めが悪い恭介はアラームを何度も設定しており一番初めのアラームで起きてしまった。
暦の上で春と言えども早朝は未だ寒く、電気毛布を仕舞えずに居る俺は心を強く保って布団を剥いでベッドから起き上がる。
「さっむっ!!」
靴下を履いてそのままキッチンに向かうと冷蔵庫を漁り、卵とベーコン、カット済みのバター、ヨーグルトを取り出す。
野菜室からは前日に作り置きのサラダを、冷凍庫からは同じく味噌玉(手作りのインスタント味噌汁)、冷凍ごはんを取り出す。
忙しく時間の無い早朝でも美味しく栄養のある朝食は食べたい。料理する時間は惜しいが、シリアルを常食するのに耐えられない俺にとっての妥協点だ。
朝食を食べないと言う人もいるが、脳を動かすには糖分が必要だ。
集中力・記憶力の上昇、自律神経の安定化や血糖値上昇が緩やかになり、お通じも整うらしい。
短期間の断食は健康に良いらしいが俺はそこまで徹底していない。
ご飯をレンジに入れスイッチを押す。
目玉焼きの黄身が嫌いな俺は、チャッチャと箸で掻き混ぜ卵液を作ると、サラダに添えていたトマトをフライパンに乗せ手早くフライパンで熱しバターを溶かすと卵液を流し込む。
空腹を刺激する香ばしいバターとトマトの香りが立ち、パチパチと弾ける卵液の音が心地よい。
手早くオムレツを巻き、ベーコンに火を入れお椀に熱湯を注ぎ味噌玉を溶かし味噌汁を作る。
前世で一人暮らしを始めたばかりの頃は、朝定食でも食べに行ったが献立のバランスを考えれば自炊しかない。
しかし朝から自炊が面倒なのは事実、自動調理系の御高い家電(10万円~20万円)を買おうか真剣に悩んでいたほどだ。
閑話休題。
出来上がったオムレツとベーコンを皿によそう事はせず、コ○ナ渦に流行ったキャンプ動画の常連であるスキレットのようにフライパンに乗せたまま机に置く。
毎度の事なのでフライパンの定位置には鍋敷きが置かれている。
「いただきます」
フライパン、サラダ、ヨーグルト、味噌汁、麦茶、冷凍麦ご飯、納豆、漬物を配膳し身体を温めるために茶碗に口を付ける。
「美味い」
即席の味噌汁も十分うまいのだが自分好みの味は、自分で作る味噌汁でしかできないからな。
「お兄が朝からちゃんとしたご飯食べてる……」
パジャマ姿の妹がリビングに現れる。
「鈴乃、お前も食うか?」
「いいの? じゃあ貰おうかな……」
「あいよ」
味噌汁とご飯、サラダ、ヨーグルトを先に出してベーコンエッグの準備をする。
「どういう風の吹き回し? 自堕落なお兄が料理、それも朝食を作るなんて……」
「殆どは事前に準備してるからレンジで温めるたり、お湯を掛けるだけそんなに手間は掛かっていないよ。ホラ出来た」
そう言うってアチアチのベーコンエッグを皿に乗せる。
「私ターンオーバーの方が好きなのに……」
「文句があるなら明日からは自分で作るんだな……」
「えーケチー……」
「あ、先に洗面所借りるぞ?」
「別にいいけど、こんなに早くから髪セットでもするの?」
「そう昨日、美容院で髪切って来たからワックスで髪をセットするのに時間かかると思って……」
「ふ~ん」
「何だよ」
「何か色気付いてきてるね。高校生だから?
それとも好きな人でも出来た?」
「まあそんなところだ」
成嶋明日羽は綺麗だと思う。
前世だったら間違いなく惚れていた。
だが、この世界には葛城綾音が存在する。
主人公を選ぶかもしれないけれど、本編であう前に会えばその運命も変わるかもしれない。と考えたからだ。
「ふーん、顔を真っ赤にして否定すると思ったのに……
肯定されて私は困惑しています」
「知るか!」
料理を完食して、使った食器を水を張ったタライに沈め、俺は洗面所に向かった。
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