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第四十八話
しおりを挟むいつものファミレスのいつものボックス席。
机の上には教科書、ノートと筆記用具。そして飲みかけのジュースが入ったコップと、フライドポテトが山盛りになった皿だけだ。
「先輩、今度の休み暇だったりしませんか?」
約束通り葛城から連絡が来たと思って、ファミレスに来てみれば唐突にそんなことを言われた。
スマホを開いてカレンダーに書かれた予定を見るが特に何も書いてない。
悲しい。
「特にはないな……で、どこで何をするんだ?」
「せーんぱい。なんでそんなに警戒するんですか? あたし見たいな可愛い女の子と休日を過ごせるんですよ? むしろご褒美じゃないんですか?」
否定する部分は何もない。
葛城綾音と言う年下の女の子は前世からの推しヒロインで、今も心の支えとなっているからだ。
「そうかもしれないが……休みは家で大人しく休むのが習慣なんだよ」
しかし、悪役である真堂恭介に憑依してこの方少しも休まる時間がない。
イベントを思い出して書き出してその対処方法を考えたり、忘却の彼方に行ってしまった勉強の復習など時間は無限に欲しいからだ。
「先輩って枯れてるんですね。それに休日は親も一日中家に居るのでどこかへ出かけたいんですよ」
女子中学生がけして出してはいけないような哀愁を漂わせながそんな言葉を言う。
「なるほど、それなら友達と遊びに行った方がいいリフレッシュになると思うが……」
「先輩忘れてるかもしれませんけど、一応あたし受験生なんで意識高い友達は塾の課題で忙しいって断られちゃいました」
高校受験への意識が高い奴は中学一年の頃には塾に通っている。
今通い始めた奴は、内申の結果が良くなかったか三年から頑張ればいいと思っている奴か、やりたいことが出来て進路を変えた奴ぐらいだ。
葛城綾音の実家は、ウチの高校にも関連があるから推薦で合格が出来る。と言うか彼女の成績なら余裕だろう。
他所事を考えていたことを誤魔化すためについ、フィーリングでモノを喋ってしまった。
「もしかしてその性格のせいでハブられてるとか?」
「――ぐっ! 確かにあたしのことを嫌う娘はいますけど、友達の邪魔したくなくて気を使ってるんですよ」
どうやら思い当たるフシがあるらしく、ダメージを受けている。
申し訳ないことをした。
罪悪感から葛城の提案に乗ることにした。
「そうか……じゃぁ折角だし行こうかな」
原作でも少し語られていたが葛城も自分の性格でいろいろ苦労したのだろう。
主人公やヒロイズと言った良き理解者を得るまでの努力は想像を絶するものがある。
そう考えると自分の力で自分を変えた彼女は前世を含めた俺よりもよほど良くできた人間と言える。
流石は俺の推し。
「あたしとしては、先輩にお願いしていることへの恩返しでもあるんですよ」
「まあ俺も息抜きしたいし丁度よかった」
その言葉に嘘はない。
推しと一緒にいられるのだ。
多少の無理無茶なんてどんと来い。
「ならよかったです。懸賞で当たったチケットがあるので映画を見る予定です」
「映画か……映画館へいくのは久しぶりだな」
映画館で見たいと思う程の映画は年を取るにつれ減って来た。
これでも高校時代は、深夜アニメの劇場版の週替わり特典目当てに映画館に通い詰めたものだのだ……。
まあ全ての特典を集めたのは俺と数人だけだった。
最近見たのは、特撮と限界突破アイテムが特典で付いていた映画くらいだ。
「あれ、前に映画よく見るって言ってましたよね?」
「最近はもっぱら配信サービスで見てる。料金が上がっても通販サイトに付属したサービスなら年間六千円で大体見れるからな、海外ドラマもアニメも大体見れる密林最高!」
とは言うものの、アニメや海外ドラマに特化した動画配信サービスもいいなと思っていたが、前世では忙しくて金を払うだけになりそうで躊躇っていた。
「先輩、月額サービスで見てるんですね。もしかしてあれだったりします? 90分が耐えられない系の……」
何かの記事で見たことがある。情報化社会になった現代の若者は、映画館でスマホを弄ると……
「確かに退屈な映画はあるけど、何度も見てなければ8割の映画は楽しめると思うぞ?」
「……映画とかドラマ、アニメや漫画で好きなジャンルってあったりします? こうラブコメとかアクションとか……」
「割と何でも見るけど、それを見るために必要な前提知識が多いアメリカのスーパーヒーロー大戦とかはあんまり好みじゃないな前提知識がいるし、あとはドキュメンタリー映画。昔、映画一本無料分溜まった時に見たけど物凄く退屈だった」
「なんとなく判るような……判らないような……でも安心してください今回見るのは恋愛映画ですから!」
こうしていつものように時間を潰した。
………
……
…
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