転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗

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第13話 剣術

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 父は短めの木剣を送ってくれた。

「貴族である前に俺達は騎士である。民を守り家族を守るそのためには武芸を磨く必要がある――」

 父の長い薫陶をニコニコとした笑みを浮かべながら聞き流す。
 これは接客業をやっていた時に身に着けたスキルだ。
 恐らく父が伝えたかったのは剣を持つことへの自覚と覚悟だろう。

 翌日から剣の稽古が開始された。
 基本は素振りや足運びと言った型稽古を中心としたもので、訓練場に立った丸太に打ち込んむ。
 農作業で培った足腰それに振り下ろしは剣を振る動作によく似ていた。

 ときどき従士や父と打ち合いの指導が入って、フォームや足運びや体重移動、体捌きと言った対人でないと学べないことを学んだりと言った感じだ。

 この世界での剣は騎士の必須技能の一つになる。
 戦国以前では馬術や弓術が重要視されていたように、この世界でも馬術と弓術が占める比重《ウエイト》は大きいものの騎士の象徴のように扱われている。

 個人的には槍の方が馬上に向いていると思うのだが、歩兵戦では剣と槍、そして弓の三種が重要になるから学ぶようだ。

 それにこの世界は魔法があるせいか武芸全般のレベルが高い岩を斬ったり、剣閃を飛ばして遠くの相手を攻撃できたりする。
 まさにファンタジーって感じ。
 俺も斬撃を飛ばしてみたい!



SIDE:従士



「では素振りを見せてください」

 剣術とは、詰るところ「いかに効率よく命を奪うか?」と言う技術に過ぎず。
 騎士道だの貴族としての誇りなんてものは実践では何の役にも立たない。

 そして、魔物相手の剣術と人型相手への剣術は全く異なる。
 四つ足や空を飛ぶのを相手にする剣と人間を相手にする剣が同じ訳がないのだから。

 しかし共通している部分が存在する。

 「正しい姿勢で正しい力で剣を振るう」これは師匠に習ったことだが、先人達が時間と労力、果てはその身を賭して研究したことを、先の戦争で身を持って実感した。

 だから打ち合いチャンバラで身を持って腕を確認することよりも、地味な素振りや型稽古を見せて貰った方が客観的に判断出来る分助かった。

さてエルさまはどうだろうか?

 息が整えられ、木剣がゆっくりと振り上げられ中段から上段に構える。
 柄を握る両の手はまるで包み込むように柔らかで、その段階で既に高いレベルにいることを痛感させられる。
 余計な力を抜ぬいてまるで自然体で一歩前に踏み込むと、雷光の如き速さで木剣が真っ向に振り下ろされた。

ヒュン!

 木剣は空を斬り、風斬り音を立て剣圧が土煙を巻き上げる。
 だがその威力に反して切っ先が、一切ブレる事無くピタリと静止する。
 力任せに叩き斬るのではなく、技術を持って斬るための術《すべ》、これこそまさに剣術、剣技だ。

 通常この年の子供がこれほど強い効果を生む場合、循環系と放出系その両方の魔術を用いていることが考えられる。
 しかし魔術を使っている形跡は存在しない。
 それほどまでに循環系魔術の扱いが巧なのか、私が至っていない領域では、これほどの絶技が当たり前なのかどうか、推し量ることも出来ないほどに隔絶している。

 脚運び、重心移動、柄の握りや力加減、呼吸そう言った人生をかけて習得していく所作を、弱い幾ばくも無い少年は既に体得しているように見えた。

しかしどうしてあんなにピタリと切っ先が止まるんだ? 

 思い返してみれば腕は伸びきっておらず、手首、腕、腰、膝……全身で衝撃を吸収し、鍔《つば》側の指で衝撃を抑えたのだろう……

 思わずゴクリと喉が鳴る。
 剣を振り下ろす姿はとても少年とは思えない程に完成――否、老成していた。
 その姿は兄や父のような平和な時代の剣ではなく、魔王が支配する乱世の時代を生きた祖父を想起させた。

―――神童、天才、麒麟児。

 唐突にそんな言葉が脳裏を過った。

―――否、偉才や奇才、鬼才と言うべきだろう。

 まるで何十年も修行し、死線を潜り抜け技を磨いた歴戦の剣士のような熟練された技を年端も行かない少年から感じる。

 まさに規格外《イレギュラー》だ。

 この時私は悟った。
 私が教えるのではない私が教わるのだと。

「……お見事です。私が教えられる剣を精一杯お教えしましょうエル様には不要だと思いますが……」



SIDE:ファーザ・ステップド



「まずはチャンバラでもしてみよう。」 

 何かを教える時には楽しさを教えることが大切だと、ステップド家の兵法では説いている。
 なので俺はその基本に従ってチャンバラを提案したのだが……

「俺の実力が分らないので手合わせをしようということ?」

 ウチの息子は違った。
 自分の力量を測るためだと考えたようだ。
 
「いや、純粋に剣術の楽しさを理解して欲しいからだ」

「じゃあやろう!」

 息子は大きな声で返事を返した。

「寸止めするつもりだが、当たってしまうことはあるから気を付けるんだぞ?」

「はーい」

 当たることがあるかもしれない。とはいったものの、当てるつもりは毛頭ない。
 せいぜい頭か体にポンと一撃入れる程度だ。
 
 エルに持たせたのは、俺が使う木剣の半分ほどの長さの木剣だ。
 倍の刀身に腕と身長分リーチが伸びるのだから簡単に捌くだけで済む。

ハズだった……

 俺はその瞬間のことを思い出す。
 
 互いに木剣を構え、エルが打ち込むために踏み込んだ瞬間、
 神器や魔剣と呼ばれる魔術が込められた道具を使うか魔法を用いれ、そういった変化をもたらすことは可能だ。

 しかし、木剣はその辺の木で作った物で特別性なんかじゃない。
であるのならば木剣が伸びたように感じたのは技術や体捌きに由来するものだ。
 その時気が付いた。

「片手打ちか!」

 通常、剣術は両手で柄を持ち操作する『諸手打ち』が基本となる。
 しかし不安定な足場の上や一部流派は異なり、片手で剣を持ち操作する『片手打ち』を使う場面がある。

 同じ長さの木剣同士では刃部が伸びるのは腕の長さと同じ木剣の半分程度だが、子供用の木剣ではおよそ二倍~三倍程度に刃部が伸びる。
 大人同士の場合、構えだけで通常の木剣との間合いの差はほぼ完全になくなる。

 そして、構えたときエルは半身に構えダンと力強く踏み込んだかと思えば、既に死角に入っていた。
 まるで一角ウサギのようだった。
 子供だから背が小さく、上段に構えた木剣を振り下ろすまでに胴に一撃食らういそうになって、つい足で払ってしまった。

ゴツン。

 顔面から地面に倒れた。
 頭を抱え痛がっている。
 そしてエルの手から砂が落ちた。

「ごめん、大丈夫か?」

 俺はすぐさま駆け寄ると、魔法を使いエルの痛みを取り除いた。

 気を抜いていたのはもちろんだが教えてもいない闘気を使ってくるとは予想外だった。
 この子は魔術の才だけではなく、剣術の才能もある。
 騎士としての強さと指揮官としての強さは異なる。

 エル、お前はどこまで成長できる?
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