転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

第18話 化粧品４

「もしかして雲母《マイカ》を入れるんですか！？」

「よくわかったな。光の屈折を利用して立体感と抜けるような透明感を実現させ、キラキラと輝いて良く目立つ特に夜だと一層美しく見えるだろうな」

「それはいいですね！　貴族の社交の場は夜であることが多い……その時周りよりも一歩抜きんでることができるというのは強いアドバンテージになりますよ！」

「貴族や商人の男も女も虚栄心を刺激してやれば、幾らでも金を出す生き物だ」

「そうですね。稼いだお金で領地に投資すれば皆が笑顔になれます！」

「元々そのつもりでやっている」

　『松竹梅の法則』や『ゴルディロックス効果』は、3つの選択肢の中から多くの人が真ん中の選択肢を選ぶという心理的傾向を示している。
　この法則は、極端な選択を避けて無難な選び方をするというものだ。

　失敗や後悔を回避しようとする人間の行動を表すもので、人は自分に最適な選択をするために比較を重視するが、選択肢が多すぎる場合には判断が難しく、結果的に購入を避ける行動に繋がることが示されている。

　つまりあまり多面的な商品展開は、製造コストや消費者行動を踏まえると避けるべきだ。
　高級品と庶民向けを明確にし主に数種程度の商品展開が無難だ。
　世間にある商品と自社製品で松竹梅をすればいい。

最上級・酸化亜鉛ファンデーション＋雲母《マイカ》
上級　・酸化亜鉛ファンデーション
中級　　鉛＆水銀ファンデーション
〃　　・植物性ファンデーション＋雲母《マイカ》
下級　　植物性ファンデーション

　例えば他所から化粧を買って雲母《マイカ》を添加すれば簡単に付加価値を付けられるようになる。
　模倣品が出てきてもブランド力が付けば関係ない。

　化粧品のためって訳じゃなかったけど、搗いたり引いたりする単純作業は、水車に任せることがきでるので将来的にコストを下げることができる。

「次に材料が共通する瞼墨《アイシャドー》、頬紅《チーク》を作る。アイシャドーはファンデーションの変形のようなもので料理用に用意させた白粉、雲母《マイカ》に酸化鉄とアズライトを混ぜればできあがる」

「なるほど……色味を調節したファンデーションがアイシャドーやチークというわけですね」

　これら三種を現代でも一般的なプレストタイプにするには、オイルとエタノールを混ぜ圧力をかけ均等にすると出来上がる。

　パフも一応用意はしてあるので使用感を聞いたうえでどちらがいいか判断させよう。
　ついでに日焼け止めも作ることにした。今日作ったものに材料がよく似ているからだ。
　
「シアバターとオリーブオイル合計10グラムに蜜蝋3グラム、精製油5グラムと酸化亜鉛＆二酸化チタンを合計4グラムを湯煎で溶かし、温めた精製水30ミリリットルを少しずつ加え泡立て気で攪拌する。この時に乳化し辛いのなら乳化剤を加えてもいい。完成した日焼け止めは約6時間――半日ほど持続する」

　説明しながら作成を終え手近な白磁の容器に日焼け止めクリームを詰める。
　分量的には3つ程度……これは揉める原因になる……母の一件以降姉のマリンも化粧品を欲しがるようになった。

「半日もですか！？　日に焼けると赤くなったり黒くなったり色白が美とされる女性からは垂涎モノですね……」

　差を設けると揉めることは目に見えているので従士に押し付けることにした。

「よかったら一つやろうか？」

「いいんですか？」

「妻子にでも渡せば好感も得られるだろう……」

「妻子なんかいません……ので馴染みのねーちゃんに上げます」

「そ、そうか……ハンドクリームは手が荒れているランドリーメイドとキッチンメイドに配って試すつもりだ」

「奥様も実体験と他人の手指の状態が改善すれば分かりやすいでしょう。俺はいいと思いますよ？」

「配布を頼めるか？」

「もちろんです」