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第9話
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いつも騎士舎で食べているご飯よりも、遥かにマシな朝食を盆に乗せ、テーブルの隅っこに座る。
パンを千切って口に含むと小麦の香ばしい香りと、程よい塩味が効いている。
「美味い……」
周囲の女騎士達は、ひそひそと小声で耳打ちをして陰口を叩いている。
王都の騎士舎よりも真面なモノを地方の騎士は食っているのか……と憤りのようなモノを感じる。だが……
「少し薄いですわね……」
「昨日の移動と戦闘で汗をたくさんかいた身体と思いますよ」
「近衛騎士舎の方が美味しいですわね……」
と、口々に食事が不味いと言っている。
(……嘘だろ?)
近衛と一般騎士でそんなに食ってるモノが違うのか……
周囲の視線に耐えながら、美味いと思っているメシを出来るだけ早く食べ終終わると、お盆事食器を返却に向かう。
「ご馳走さん。美味かったよ」
俺が礼を言うと、奥から男が出て来た。
「そりゃよかった。女騎士様達には不満がある見たいだがな……」
肩をすくめて見せると料理人は笑みを零した。
俺は本題を切り出す事にした。
「そう怒らないでやってくれ、俺は一般の騎士で彼女たちは近衛騎士。きっと日々食ってるモノが違うんだよ」
「まぁ騎士様も上に行けば行くほど、家柄、賄賂、実績、婚姻関係が大切とは言うけど……」
どうやら合点がいったようだ。
「だから許してやってくれ、とは言わないけど理解はしてあげてほしいんだ」
「わかったよ……」
ここで話を切り出そう……
「それで、訊きたいことがあるんだが……」
「俺の料理を褒めてくれた騎士さまの言う事だ。大抵の事は答えてやるよ」
「じゃぁ遠慮なく……騎士舎の料理人曰く、俺が塩味が薄いといったら、『王都にいる貧民はもっと酷い状況に居る』と言うんだ」
「……」
「もちろん。俺は聞いたんだ。『王国は海にも面している。塩を作る事は可能なハズだ。輸送の船か馬車が滞っているのか?』ってね。そういしたら言うんだよ『もちろん。それもあるとは思うけど値段の釣り上げを塩屋がやっているらしく、役職持ちは塩屋からの賄賂で懐柔されて話を聞いてもらえない』んだと」
「で、何がいいたいんだ?」
「昨日の夜会で妙な話を聞いたんだよ。『最近は塩の売れ行きが良く、姫殿下をお呼びするのに相応しい場を提供する事が出来ました』ってね。だから俺はピンと来たんだよ。王位継承戦での資金を獲得するために不当に塩を値上げしてるんじゃないか? ってね」
「確かに塩の生産量はここ最近増えている。最近、ナントカって言う商会が塩を買っていくらしいって事は知っている。そして、その商会と二人の御子息のどっちかが関わってるって言うのが巷の噂だ。俺に言えるのはここまでだ」
「ありがとう。帰りにまたよるよ」
ヒラヒラと手を振りながらそういうと、食堂を後にした。
………
……
…
早朝の出来事もあってか、俺に向けられる。
女性達の視線は鋭く、そして冷ややかだった。
ゾルコヴァ城の城主である。
ラージヒル家に借りた馬に現在騎乗している。
敷き詰められた石の上を蹄鉄がカツカツと叩く音と、馬車の車輪が回転する音だけが聞こえる。
現在、俺が配置されているのはウェスタ率いる。
魔術騎兵5名に臨時で組み込まれている。
魔術騎兵の仕事は、『姫の乗る馬車への攻撃を防ぐこと』と、『襲撃者へ反撃をすること』この二点に集約される。
生憎と常時、防御魔法を発動できるほど優れた魔術師ではないおれは、見学を強いられている。
何度か迷い込んだモンスターを討伐はしているものの、それを行っているのは、先頭に展開されたダイアナ率いる軽装騎兵隊と、手が空いている魔術騎兵であり“結果”を出さなくてはいけない俺には役を与えたくはないようだ。
「はぁ……」と短く、そして深い溜息を付く。
「相談役……浮かない表情《カオ》してますね……朝からいいもの見たはずなのに……」
そう声を掛けて来たのは、赤髪の少女。ウェスタだった。
昨夜のように華やかなドレスや、化粧、紅は引かれていないもののその可愛らしい顔が急に視界に入ると少しばかりびっくりする。
「お、お前なぁ……」
呆れ顔で少女を見るが、少女の方は「えっ? なんですか?」と言いたげな表情を浮かべている。
「で、でも! 男性的には女性の裸を見れたらラッキーって思いますよね?」
また答え辛いことを……
「確かに嬉しいけど、それで他人を傷付けていいって事じゃないんだし悪いと思ってるよ」
「いやぁーまぁーそうなんですけどぉーねぇ? ぶっちゃけ。誰の裸が印象に残っていますか?」
「……」
「見てしまったけど、あまりにも驚きすぎて誰がどうだったとか細かい記憶はないよ」
「残念ですねぇ~まぁ頑張ってください。通常八泊九日の日程があるんです。大丈夫ですよ」
そう言うとウェスタは馬に鞭を打って俺から離れた。
「まぁ一つ手柄を立てればいいならもう、道筋はたった見たいなもんなんだけど……生憎と王都の調査が必要なんだよねぇ……さてどうしたものか」
パンを千切って口に含むと小麦の香ばしい香りと、程よい塩味が効いている。
「美味い……」
周囲の女騎士達は、ひそひそと小声で耳打ちをして陰口を叩いている。
王都の騎士舎よりも真面なモノを地方の騎士は食っているのか……と憤りのようなモノを感じる。だが……
「少し薄いですわね……」
「昨日の移動と戦闘で汗をたくさんかいた身体と思いますよ」
「近衛騎士舎の方が美味しいですわね……」
と、口々に食事が不味いと言っている。
(……嘘だろ?)
近衛と一般騎士でそんなに食ってるモノが違うのか……
周囲の視線に耐えながら、美味いと思っているメシを出来るだけ早く食べ終終わると、お盆事食器を返却に向かう。
「ご馳走さん。美味かったよ」
俺が礼を言うと、奥から男が出て来た。
「そりゃよかった。女騎士様達には不満がある見たいだがな……」
肩をすくめて見せると料理人は笑みを零した。
俺は本題を切り出す事にした。
「そう怒らないでやってくれ、俺は一般の騎士で彼女たちは近衛騎士。きっと日々食ってるモノが違うんだよ」
「まぁ騎士様も上に行けば行くほど、家柄、賄賂、実績、婚姻関係が大切とは言うけど……」
どうやら合点がいったようだ。
「だから許してやってくれ、とは言わないけど理解はしてあげてほしいんだ」
「わかったよ……」
ここで話を切り出そう……
「それで、訊きたいことがあるんだが……」
「俺の料理を褒めてくれた騎士さまの言う事だ。大抵の事は答えてやるよ」
「じゃぁ遠慮なく……騎士舎の料理人曰く、俺が塩味が薄いといったら、『王都にいる貧民はもっと酷い状況に居る』と言うんだ」
「……」
「もちろん。俺は聞いたんだ。『王国は海にも面している。塩を作る事は可能なハズだ。輸送の船か馬車が滞っているのか?』ってね。そういしたら言うんだよ『もちろん。それもあるとは思うけど値段の釣り上げを塩屋がやっているらしく、役職持ちは塩屋からの賄賂で懐柔されて話を聞いてもらえない』んだと」
「で、何がいいたいんだ?」
「昨日の夜会で妙な話を聞いたんだよ。『最近は塩の売れ行きが良く、姫殿下をお呼びするのに相応しい場を提供する事が出来ました』ってね。だから俺はピンと来たんだよ。王位継承戦での資金を獲得するために不当に塩を値上げしてるんじゃないか? ってね」
「確かに塩の生産量はここ最近増えている。最近、ナントカって言う商会が塩を買っていくらしいって事は知っている。そして、その商会と二人の御子息のどっちかが関わってるって言うのが巷の噂だ。俺に言えるのはここまでだ」
「ありがとう。帰りにまたよるよ」
ヒラヒラと手を振りながらそういうと、食堂を後にした。
………
……
…
早朝の出来事もあってか、俺に向けられる。
女性達の視線は鋭く、そして冷ややかだった。
ゾルコヴァ城の城主である。
ラージヒル家に借りた馬に現在騎乗している。
敷き詰められた石の上を蹄鉄がカツカツと叩く音と、馬車の車輪が回転する音だけが聞こえる。
現在、俺が配置されているのはウェスタ率いる。
魔術騎兵5名に臨時で組み込まれている。
魔術騎兵の仕事は、『姫の乗る馬車への攻撃を防ぐこと』と、『襲撃者へ反撃をすること』この二点に集約される。
生憎と常時、防御魔法を発動できるほど優れた魔術師ではないおれは、見学を強いられている。
何度か迷い込んだモンスターを討伐はしているものの、それを行っているのは、先頭に展開されたダイアナ率いる軽装騎兵隊と、手が空いている魔術騎兵であり“結果”を出さなくてはいけない俺には役を与えたくはないようだ。
「はぁ……」と短く、そして深い溜息を付く。
「相談役……浮かない表情《カオ》してますね……朝からいいもの見たはずなのに……」
そう声を掛けて来たのは、赤髪の少女。ウェスタだった。
昨夜のように華やかなドレスや、化粧、紅は引かれていないもののその可愛らしい顔が急に視界に入ると少しばかりびっくりする。
「お、お前なぁ……」
呆れ顔で少女を見るが、少女の方は「えっ? なんですか?」と言いたげな表情を浮かべている。
「で、でも! 男性的には女性の裸を見れたらラッキーって思いますよね?」
また答え辛いことを……
「確かに嬉しいけど、それで他人を傷付けていいって事じゃないんだし悪いと思ってるよ」
「いやぁーまぁーそうなんですけどぉーねぇ? ぶっちゃけ。誰の裸が印象に残っていますか?」
「……」
「見てしまったけど、あまりにも驚きすぎて誰がどうだったとか細かい記憶はないよ」
「残念ですねぇ~まぁ頑張ってください。通常八泊九日の日程があるんです。大丈夫ですよ」
そう言うとウェスタは馬に鞭を打って俺から離れた。
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