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第35話決闘の観戦者2
しおりを挟む久しぶりに鍛えがいのある奴を見つけた。ユーサー様が求める指揮能力が高い子ではないが、一芸を持った人材は狙って育てる事が困難な分より希少価値の高い人材と言える。
ユーサー様は全力の一撃が決定打にならないと考えたのか、太った少年は攻めの姿勢を見せ始めた。
それに反応してユーサー様は、木剣の切っ先を少し動かしてフェイントをかける。
「チッ。小賢しいマネを……卑怯だぞ! それが騎士の戦い方か!」
「何か勘違いしてないか? 俺は騎士じゃねぇ貴族だ! それに付け加えるなら、俺は敵に勝てるならどんな手段を使ってもいいと思っている……今のフェイントだって十分に効果があるだろう? 正々堂々いざ尋常にが戦場である訳ないだろう? 勝てばいいんだよ。ちったぁテメェの無い頭を使えよ……」
ユーサー様は相手を煽り、攻撃を単調にさせようとしているようだ。
上手い。どれだけ頭が回ろうと腕力があれば技も速度も上回られてしまう。相手を挑発する事で攻撃を単純化させ対処しやすくしているのだ。
「テメェぇええええええええええッ!」
大きな声で叫ぶと、剣を上段に構えながら一気に踏み込むと、ドン! と言う体重の乗った重たい音を立て剣を振う。
刹那!!
ユーサー様は右足を後方へスライドさせ、剣を頭の横で片足を空へ浮かせて構える。
ジャンの攻撃は片足を空へ浮かせた事で空振り、地面を強く叩く。がら空き状態になったジャンの背中目掛けて、片足立ちの状態から鋭く地面に足を刺すように卸し、その勢いのまま木剣を振り下ろす。
コンと言う音が鳴り。軽い音を立ててジャンの肩にヒットする。
「勝負ありだ」
ユーサー様宣言で決闘の勝敗は決した。
「――――クソッ!」
太った少年は心底悔しそうな表情を浮かべ、地面を握った拳で打ち付けた。
それを見て取り巻き達は駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
太ったの上半身を抱え起こす。
「痛ててて……」
「おい! テメェ身体強化の魔法を使いやがったな! じゃなきゃジャンが負けるハズない!」
その声にひょろい取り巻きは「そうだ! お前ズルしやがったな!」と同調する。
「はぁ……身体強化は、火球等とは違い外に働きかけない分使う魔力が少ないので、魔力量の少ない人でも使える数少ない魔法だ」
「だったら――――」
ユーサー様の説明に発言を被せる。
「お前は上官の説明を遮るのか?」
ユーサー様は魔力放出し三人を威圧する。
何て量だ。普通の魔術師が井戸ならユーサー様は湖だ。ステージが違う。
「説明を続けましょう……しかし、回復魔法も含め体内に作用する魔法の難易度は総じて高く、身体強化魔法と呼べるほど強力なモノには、魔力操作の技術がかなり必要になる。残念ながら俺は魔力量が多すぎて上手く操作しきれないんだ……身体強化なんて上等なものは使えない。もし使えたとしても勝てばいいんだ。使えないお前らが悪い」
ユーサー様の言い分に間違いはない。俺も魔法を使えるが数は多くないし身体強化魔法を使うので、火球は咄嗟の時に使える遠距離攻撃手段としか考えていない。
「神に誓おう、今回俺は身体強化魔法は使っていない。よければその身を持って疑似的な体験させてあげよう……」
ユーサー様はそう言うと地面を蹴り取り巻きに襲い掛かる。
取り巻きが剣を袈裟斬りに振って、ユーサー様を迎撃するよりも前に、ユーサー様の魔力を込めた右ストレートが、ガリの胸にめり込んで綺麗に後ろに吹き飛ぶ。
「ぐはッ――――」
パンチの衝撃で「く」の字で飛んでいき、数度地面を水切石のように跳ねるとようやく止まった。
地面に手を突いて立ち上がろうとしているが、痛みで立つ事は出来ないようだ。
胸は上下しているか生きてはいるようだ。
身体強化魔法と言うには、魔力が漏れておりお粗末な精度だが威力と効果は十分すぎる程あるようだ。
殺す前には止めよう……
「これが身体強化魔法を使っている状態を再現したものだ。俺のような五歳児でも、鋼鉄の長剣を振り回せる身体能力を与えるのが身体強化魔法だ。これで俺が魔法を使っていない証明には十分だろう……」
「――――ッひぃぃぃいぃいいいいいい!」
取り巻きは後ずさりしている。
「二人とも可哀そうだろ? ジャンは鎖骨の骨折。ガリは肋骨の骨折。記念だからひょろも怪我しておこうよ。そうしないと情状酌量の余地と言うか同情されないからさ……」
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