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第28話 転生陰陽師は入学する③

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「よかった……」

「すごいすごい! 私達同じクラスだよ!」

 そう言って二人は抱き着いてくる。
 厚い生地の冬制服からでも伝わってくる大きな胸の柔らかさに圧倒される。

 それに酸素が不足してきて……苦しい。

(まあでもおっぱいで死ねるなら、おっぱい聖人にとって本望か……)

 おっぱいに殉教すれば聖《セント》バストゥヌスとでも呼ばれるだろうか?

 心の中で「でも幸せならオッケーです」と言う空耳が聞こえる。
 幻聴が聞こえるほどに、酸欠が酷いようだ。

 暫く胸と女体の柔らかさを堪能していると、元気メーター(物理)の限界を感じ僕は二人を引っぺがした。

 危なかった……。もう少しでシンクロ率が上がりすぎて、人に戻れなくなるところだった。
 止めてくれてありがとう赤木博士。

 美人な二人が跳ねてはしゃぐもんだから、流石に周りからの視線が集まってきて気恥ずかしさを覚える。
 スカートは絶対防御を発動し、パンチラの一つもすることはない。

(アイアンドーム、イージスアショアはここにあったのか……)

「いい歳しして短いスカートでぴょんぴょん飛び跳ねながら、胸で押しつぶすのは色々と限界を迎えそうだからやめてくれ!」

 全国の童貞ピュア男子の意見を代弁する。
 見せてくれるのも当ててくれるのも嬉しい。だが物事には順序と限度があるのだ。

「でも嬉しかったでしょ?」

「気持ちよかったよね?」

 これみよがしにグラビア雑誌のように腕を組むと大きな胸を押し上げ強調する。

「……嬉しいけど俺だって男だってこと忘れないでほしい」

「え、これで直毘人に何かされても、これまでの信頼分の代金だと思ってるし」

「許嫁なんだし問題無いよね?」

「それに回りに迷惑かけるようなことはしないって信じてるから……あれ? もしかして直毘人くんは我慢できなくなっちゃう?」

「……鋼の意思で耐える……」

 「しない。」と断言できるほど、俺は枯れていない。
 そして理性的でもない。

「よしよしいい子だね。どーしても我慢できないなら下着までなら使っていいから。じゃぁ私、職員室に行ってくるから教室の雰囲気とか教えてね……」

 そう言って僕の頭を胸元で抱え込む。
 僕は再び引きはがす。

「使わないよ! あと教室の雰囲気ね。了解」

「やりたい放題だねー」

 俺はお前が言うなという言葉を飲み込んだ。

 教室に入って暫く待つと恐らくこの学年を担任すると思われる教師が来て僕達を体育館に誘導される。
 体育館は真新しいとは言えないものの、手入れの行き届いいている。

「生徒諸君まずは入学おめでとう。私はこの学校の校長の春日という。老人の長話をするがご容赦願う。
 まずなぜ魔術を教える学び舎であるのに魔道科高校というのか? それは日本に根付いた『道《タオ》』思想《イズム》に由来する。
 剣道、柔道といった武道にはじまり華道、茶道と言った文化にまで『道』と言う文字は使われる。『道』とはすなわち【高い精神性をもって、人としての道を追究する】そう言う意味をこめて先人が懐けたのだということを忘れないで欲しい」

 生徒たちは思わず校長の話に聞き入った。

「魔術。それは洋の東西を問わず広く伝播する神の御業――神秘の模倣・再現でありその起源は神話や遺跡などから伺い知るのみである。
 日本では古くは『鬼道』と呼ばれていたモノは大陸の影響を受け、『呪禁』や『陰陽術』と呼ばれ発展した。
 そして異国船が来訪した時初めて『西洋の魔術』が商人や宣教師によって流入し伝統魔術は、西洋魔術と融合し『近代魔術』へと発展させたものである。
 全ては侵略者である禍津日《マガツヒ》を根絶し、よりよい生活に繋げるためである! 皆よく学び良く遊び学生生活を充実したものとするように以上で話を終わる」

「では新入生代表! 土御門伊吹さんお願いします。」

 真新しいブレザーに身を包んだ年頃の男女の中で、体育館への移動中に合流した伊吹は、大きな声でハッキリと返事をした。

「はい!」

 錆の浮いたパイプ椅子から立ち上がり、座席の間に開けられた道を通って行く……するとヒソヒソとした話し声と共に彼ら彼女らの視線が伊吹に集中する。

「代表って事は成績トップって事でしょ……」
「勉強も顔面も強いって天は二物も三物も与えるのかよ……」

 容姿は生まれ持ってのものだが、二物も三物もという言い方は、彼女の努力を踏みにじっているようで癪に障る俺は彼女の努力を知っているのに……
 脇から回り込んで壇上の上に上がる。時代遅れの蛍光灯が集中して照らされているためか少し顔が赤い。

緊張しているのだろうか?
 
 緊張していると思うだけで何だか急に人間味を感じる。
 僕は忘れていたのが彼女がまだ十代前半の女の子だということを。

 胸ポケットからカンペを取り出して、スタンドに乗せられたマイクのスイッチを入れる。
 するとスピーカーから、キーンというハウリング音が聞こえる。
 だが焦ることはない。

「本日は私達新入生の為に、盛大な式典を開いて頂き誠にありがとうございます」

 彼女の演説の読み合わせにはかなりの時間付き合っている。
 容姿の整った人物が、表情と声のトーン、身振り手振りに気を使って話せばどうなるだろうか? 答えは単純、演説の中身関係なく彼女に好感を持つ人物が増えるという訳だ。

 例えば、人間は印象によって物事を判断する動物である。対して似ていないモノ真似でも誇張して印象の操作すれば一芸になる。

「暖かく穏やかな春の陽気に包まれ、私達はこの、伝統ある学校の一員となりました。
新しく始まる学校生活では、学業はもちろん学校行事や部活動にも励み、文武両道。自分自身を向上させていきたいと思っております。将来は命を懸けこの国を守り抜いた先達に恥じることのないような立派な魔術師となりたいと、改めて思いました。
本日は盛大な式典を挙行していただき誠にありがとうございました」

 声の調子や抑揚、聖母のような柔和な微笑を浮かべつつ、出席者や重要な人物への目配せをする事で、自分個人に訴えていると錯覚させるテクニックだ。

 こうして僕の新しい生活が始まった。 
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