33 / 65
第28話 転生陰陽師は入学する③
しおりを挟む「よかった……」
「すごいすごい! 私達同じクラスだよ!」
そう言って二人は抱き着いてくる。
厚い生地の冬制服からでも伝わってくる大きな胸の柔らかさに圧倒される。
それに酸素が不足してきて……苦しい。
(まあでもおっぱいで死ねるなら、おっぱい聖人にとって本望か……)
おっぱいに殉教すれば聖《セント》バストゥヌスとでも呼ばれるだろうか?
心の中で「でも幸せならオッケーです」と言う空耳が聞こえる。
幻聴が聞こえるほどに、酸欠が酷いようだ。
暫く胸と女体の柔らかさを堪能していると、元気メーター(物理)の限界を感じ僕は二人を引っぺがした。
危なかった……。もう少しでシンクロ率が上がりすぎて、人に戻れなくなるところだった。
止めてくれてありがとう赤木博士。
美人な二人が跳ねてはしゃぐもんだから、流石に周りからの視線が集まってきて気恥ずかしさを覚える。
スカートは絶対防御を発動し、パンチラの一つもすることはない。
(アイアンドーム、イージスアショアはここにあったのか……)
「いい歳しして短いスカートでぴょんぴょん飛び跳ねながら、胸で押しつぶすのは色々と限界を迎えそうだからやめてくれ!」
全国の童貞男子の意見を代弁する。
見せてくれるのも当ててくれるのも嬉しい。だが物事には順序と限度があるのだ。
「でも嬉しかったでしょ?」
「気持ちよかったよね?」
これみよがしにグラビア雑誌のように腕を組むと大きな胸を押し上げ強調する。
「……嬉しいけど俺だって男だってこと忘れないでほしい」
「え、これで直毘人に何かされても、これまでの信頼分の代金だと思ってるし」
「許嫁なんだし問題無いよね?」
「それに回りに迷惑かけるようなことはしないって信じてるから……あれ? もしかして直毘人くんは我慢できなくなっちゃう?」
「……鋼の意思で耐える……」
「しない。」と断言できるほど、俺は枯れていない。
そして理性的でもない。
「よしよしいい子だね。どーしても我慢できないなら下着までなら使っていいから。じゃぁ私、職員室に行ってくるから教室の雰囲気とか教えてね……」
そう言って僕の頭を胸元で抱え込む。
僕は再び引きはがす。
「使わないよ! あと教室の雰囲気ね。了解」
「やりたい放題だねー」
俺はお前が言うなという言葉を飲み込んだ。
教室に入って暫く待つと恐らくこの学年を担任すると思われる教師が来て僕達を体育館に誘導される。
体育館は真新しいとは言えないものの、手入れの行き届いいている。
「生徒諸君まずは入学おめでとう。私はこの学校の校長の春日という。老人の長話をするがご容赦願う。
まずなぜ魔術を教える学び舎であるのに魔道科高校というのか? それは日本に根付いた『道《タオ》』思想《イズム》に由来する。
剣道、柔道といった武道にはじまり華道、茶道と言った文化にまで『道』と言う文字は使われる。『道』とはすなわち【高い精神性をもって、人としての道を追究する】そう言う意味をこめて先人が懐けたのだということを忘れないで欲しい」
生徒たちは思わず校長の話に聞き入った。
「魔術。それは洋の東西を問わず広く伝播する神の御業――神秘の模倣・再現でありその起源は神話や遺跡などから伺い知るのみである。
日本では古くは『鬼道』と呼ばれていたモノは大陸の影響を受け、『呪禁』や『陰陽術』と呼ばれ発展した。
そして異国船が来訪した時初めて『西洋の魔術』が商人や宣教師によって流入し伝統魔術は、西洋魔術と融合し『近代魔術』へと発展させたものである。
全ては侵略者である禍津日《マガツヒ》を根絶し、よりよい生活に繋げるためである! 皆よく学び良く遊び学生生活を充実したものとするように以上で話を終わる」
「では新入生代表! 土御門伊吹さんお願いします。」
真新しいブレザーに身を包んだ年頃の男女の中で、体育館への移動中に合流した伊吹は、大きな声でハッキリと返事をした。
「はい!」
錆の浮いたパイプ椅子から立ち上がり、座席の間に開けられた道を通って行く……するとヒソヒソとした話し声と共に彼ら彼女らの視線が伊吹に集中する。
「代表って事は成績トップって事でしょ……」
「勉強も顔面も強いって天は二物も三物も与えるのかよ……」
容姿は生まれ持ってのものだが、二物も三物もという言い方は、彼女の努力を踏みにじっているようで癪に障る俺は彼女の努力を知っているのに……
脇から回り込んで壇上の上に上がる。時代遅れの蛍光灯が集中して照らされているためか少し顔が赤い。
緊張しているのだろうか?
緊張していると思うだけで何だか急に人間味を感じる。
僕は忘れていたのが彼女がまだ十代前半の女の子だということを。
胸ポケットからカンペを取り出して、スタンドに乗せられたマイクのスイッチを入れる。
するとスピーカーから、キーンというハウリング音が聞こえる。
だが焦ることはない。
「本日は私達新入生の為に、盛大な式典を開いて頂き誠にありがとうございます」
彼女の演説の読み合わせにはかなりの時間付き合っている。
容姿の整った人物が、表情と声のトーン、身振り手振りに気を使って話せばどうなるだろうか? 答えは単純、演説の中身関係なく彼女に好感を持つ人物が増えるという訳だ。
例えば、人間は印象によって物事を判断する動物である。対して似ていないモノ真似でも誇張して印象の操作すれば一芸になる。
「暖かく穏やかな春の陽気に包まれ、私達はこの、伝統ある学校の一員となりました。
新しく始まる学校生活では、学業はもちろん学校行事や部活動にも励み、文武両道。自分自身を向上させていきたいと思っております。将来は命を懸けこの国を守り抜いた先達に恥じることのないような立派な魔術師となりたいと、改めて思いました。
本日は盛大な式典を挙行していただき誠にありがとうございました」
声の調子や抑揚、聖母のような柔和な微笑を浮かべつつ、出席者や重要な人物への目配せをする事で、自分個人に訴えていると錯覚させるテクニックだ。
こうして僕の新しい生活が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる