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第30話 転生陰陽師VS現代魔術師①
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魔力は精神によって変化する。――とは誰の言葉だっただろうか? スポーツ選手が心理的な原因によって生じる運動障害に陥るように、魔術師もまたそう言った障害に陥ることはままある。
千年前なら「臆病者」と言われたんだろうけど……平和な現代ではそこにまで配慮する必要がある。
つまり完全に心を折ってはならない。
無論イップスに陥ったとしても、魔術師として完全に死ぬことにはならない。次世代へ期待され、呪符製作だけする引退魔術師と同じ扱いを受けるだけだ。
簡単に言うと実に面倒ってことだ。
実践的な魔術戦闘は、三次元的で広大な面積を要する。
今回のような軽い指導でもバスケットボールコート一面程度は必要になる。
周囲には階段型になった客席が用意されており、授業での使い道というよりも興行的な使い道を想起させる。
壁面は真言や梵字、ルーンといった東西の魔術文字が刻印され建材の強度を引き上げている。
それに加え鳥居や注連縄といった結界柱が内部で行われる魔術的な影響を、外部に漏らすまいとしている。
俺と担任以外の生徒は、観覧席に座りアリーナを見下ろしている。
「実践授業はここでやるのか……」
「簡単な魔術なら教室でも使うぞ魔術練習場への移動は面倒だからな」
俺は周囲を見回し観覧する生徒達の中から二人を探した。
見る価値なんてないと思うのだが二人は最前線の席に座ってこちらに向けて手を振っている。
留学生の二姫は値踏みするような視線を向けていた。
相手の何某くんは少し遅れてやってきた。
「目上の人間が待ってるのに、遅れてくるってどうなってるんだ? おめかしに時間がかかるってお前女かよ?」
「は!? 同級生だろ?」
「お前が資格《ライセンス》を持ってるのか持っていないのか知らんけど、どちらにせよ俺は特級だ。魔術師は現場で最も階級の高い人間が指揮を執るってルールをもしかして知らないのか?」
「……お前な!」
「まあまあ。君と違って彼はアマチュアだ寛容差を見せてもいいんじゃないかな?」
「……そうですね。これ以上の言葉は無粋だ。術式で語ることにしましょう」
「ルールを確認する。
1つ互いに武器を用いないこと
2つ直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる魔術及び回復不可能な障がいを与える魔術を禁止する
3つ吉田くんのみ使用魔術の制限を小呪までとする。
以上に相違ないか?」
「ありません」
「……ああ」
双方が頷き10メートル離れた開始線の前で向かい合う。
互いに挑発行為をやめ表情を強張らせる。
互いに魔術を掛け合う距離は、剣の魔術師にとっては不利といえる。
しかし魔術による試合なのだから武器を含めた間合いを考慮しないのは当たり前のことだ。
通常魔術戦は魔力と集中力の削り合いになる。
そして相手の防御をいかに貫通して先に一撃入れるのか? が勝敗を別つといわれている。
例え一撃で無力化できなかったとしても、ダメージは免れない。
魔術による肉体的・精神的ダメージを受けてなお冷静に魔術を返すことのできる使い手なんてそうそういない。
だから魔術戦は開幕速攻が多い。
「開始!」
試合開始の合図と共に何某はケースから乱雑に呪符を掴むと魔術を発動させる。
「火行符よ怨敵を焼き払え急急如律令!」
燃え盛る火球が放たれた。
符術・火球と言ったところか……
符術は予め属性を偏らせることで触媒として簡素に魔術を発動させることができる。
日本魔術師の必需品だ。
魔術はイメージによって左右されるため、火球など固定化されたイメージによって扱いやすく調節される。
威力が低い上に魔術の展開速度も遅く制御もできていない。完全に呪符に描かれた術式頼りに魔術だ。
目くらまし……いや相手もまずは様子見といったところだろうか? しかしこの程度であれば問題ない。こちらは基礎で差を見せつける。
基礎である『充術』で魔力が全身に流れる通路である経絡を使い、魔力を全身に行き渡らせることで身体能力を強化する。
さらに『充術』で行き渡らせた魔力を爆発させ、攻防力が上がった状態にする『纏術』を合わせた『充纏術』を発動させる。
そして今の俺なら纏った魔力だけでヤツのちんけな術など物ともしない。
羽虫でも払うように横なぎに腕を振るい火球を切り裂いた。
「な! 俺の火球を切り裂いただと!!」
「基礎の『充纏術』の応用だ。この程度もできないのか?」
もしかして俺の回りのレベルが高いだけで、大口を叩く奴でもこの程度なのか?
「あいつの符術すげえな!」
「直毘人くんの基礎魔術も凄いよ。余剰魔力が殆どない基礎だけど分かるあれは次元が違うよ」
「二人ともレベルたかいな」
レベルが高い? 二人はこの程度余裕できるけど……
「魔術ではなく魔力で解決するなんて優雅じゃないな」
「魔術戦のどこに優雅な要素があるんだ?」
「ふん。調子こいてんじゃねぇぞ? さっきのが俺の本気だと思われたらしゃくだぜ」
「せめて小呪くらい使ってもらわないと……」
「ふん。減らず口を……」
「大きな口を叩くのならハンデなしでもいいんだが?」
「……」
黙るなよ……。
千年前なら「臆病者」と言われたんだろうけど……平和な現代ではそこにまで配慮する必要がある。
つまり完全に心を折ってはならない。
無論イップスに陥ったとしても、魔術師として完全に死ぬことにはならない。次世代へ期待され、呪符製作だけする引退魔術師と同じ扱いを受けるだけだ。
簡単に言うと実に面倒ってことだ。
実践的な魔術戦闘は、三次元的で広大な面積を要する。
今回のような軽い指導でもバスケットボールコート一面程度は必要になる。
周囲には階段型になった客席が用意されており、授業での使い道というよりも興行的な使い道を想起させる。
壁面は真言や梵字、ルーンといった東西の魔術文字が刻印され建材の強度を引き上げている。
それに加え鳥居や注連縄といった結界柱が内部で行われる魔術的な影響を、外部に漏らすまいとしている。
俺と担任以外の生徒は、観覧席に座りアリーナを見下ろしている。
「実践授業はここでやるのか……」
「簡単な魔術なら教室でも使うぞ魔術練習場への移動は面倒だからな」
俺は周囲を見回し観覧する生徒達の中から二人を探した。
見る価値なんてないと思うのだが二人は最前線の席に座ってこちらに向けて手を振っている。
留学生の二姫は値踏みするような視線を向けていた。
相手の何某くんは少し遅れてやってきた。
「目上の人間が待ってるのに、遅れてくるってどうなってるんだ? おめかしに時間がかかるってお前女かよ?」
「は!? 同級生だろ?」
「お前が資格《ライセンス》を持ってるのか持っていないのか知らんけど、どちらにせよ俺は特級だ。魔術師は現場で最も階級の高い人間が指揮を執るってルールをもしかして知らないのか?」
「……お前な!」
「まあまあ。君と違って彼はアマチュアだ寛容差を見せてもいいんじゃないかな?」
「……そうですね。これ以上の言葉は無粋だ。術式で語ることにしましょう」
「ルールを確認する。
1つ互いに武器を用いないこと
2つ直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる魔術及び回復不可能な障がいを与える魔術を禁止する
3つ吉田くんのみ使用魔術の制限を小呪までとする。
以上に相違ないか?」
「ありません」
「……ああ」
双方が頷き10メートル離れた開始線の前で向かい合う。
互いに挑発行為をやめ表情を強張らせる。
互いに魔術を掛け合う距離は、剣の魔術師にとっては不利といえる。
しかし魔術による試合なのだから武器を含めた間合いを考慮しないのは当たり前のことだ。
通常魔術戦は魔力と集中力の削り合いになる。
そして相手の防御をいかに貫通して先に一撃入れるのか? が勝敗を別つといわれている。
例え一撃で無力化できなかったとしても、ダメージは免れない。
魔術による肉体的・精神的ダメージを受けてなお冷静に魔術を返すことのできる使い手なんてそうそういない。
だから魔術戦は開幕速攻が多い。
「開始!」
試合開始の合図と共に何某はケースから乱雑に呪符を掴むと魔術を発動させる。
「火行符よ怨敵を焼き払え急急如律令!」
燃え盛る火球が放たれた。
符術・火球と言ったところか……
符術は予め属性を偏らせることで触媒として簡素に魔術を発動させることができる。
日本魔術師の必需品だ。
魔術はイメージによって左右されるため、火球など固定化されたイメージによって扱いやすく調節される。
威力が低い上に魔術の展開速度も遅く制御もできていない。完全に呪符に描かれた術式頼りに魔術だ。
目くらまし……いや相手もまずは様子見といったところだろうか? しかしこの程度であれば問題ない。こちらは基礎で差を見せつける。
基礎である『充術』で魔力が全身に流れる通路である経絡を使い、魔力を全身に行き渡らせることで身体能力を強化する。
さらに『充術』で行き渡らせた魔力を爆発させ、攻防力が上がった状態にする『纏術』を合わせた『充纏術』を発動させる。
そして今の俺なら纏った魔力だけでヤツのちんけな術など物ともしない。
羽虫でも払うように横なぎに腕を振るい火球を切り裂いた。
「な! 俺の火球を切り裂いただと!!」
「基礎の『充纏術』の応用だ。この程度もできないのか?」
もしかして俺の回りのレベルが高いだけで、大口を叩く奴でもこの程度なのか?
「あいつの符術すげえな!」
「直毘人くんの基礎魔術も凄いよ。余剰魔力が殆どない基礎だけど分かるあれは次元が違うよ」
「二人ともレベルたかいな」
レベルが高い? 二人はこの程度余裕できるけど……
「魔術ではなく魔力で解決するなんて優雅じゃないな」
「魔術戦のどこに優雅な要素があるんだ?」
「ふん。調子こいてんじゃねぇぞ? さっきのが俺の本気だと思われたらしゃくだぜ」
「せめて小呪くらい使ってもらわないと……」
「ふん。減らず口を……」
「大きな口を叩くのならハンデなしでもいいんだが?」
「……」
黙るなよ……。
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