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第31話 転生陰陽師VS現代魔術師②

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「クソ! バカにしやがって ノウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」
 
 独特の抑揚をつけひと息で真言を唱えた。不動明王の真言は最も主な調伏法だ。
 術の規模は中呪であるものの、高校生になっていない段階で唱えられ術を発動させることができるだけ凄いのだろう。
 しかし真面に剣印も結べていなければ制御できているとも思えない。ただ発動しただけと言った様子で何の工夫も面白味もない。

 しん、と空気が張りつめた。
 次の瞬間、男は声を上げた。

「これで終わりだぁぁぁああああああ」

 先ほどよりも大きな車程の大きさの火球が放たれた。

 魔術だけに頼ることなく、『充纏術じゅうてんじゅつ』を交えた近接戦であればまだ勝機があったものを……

「『充纏術じゅうてんじゅつ』で勝ったとしても君は納得しないだろう。だから俺も術を使おう」

「減らず口を! 俺の中呪に小呪で対応できるわけねえだろぉぉおおおお!」

火の魔術に水の魔術をぶつけてやれば直ぐ消えるんだが……

「仕方がない同系統勝負をしてやろう」

 火行符を投げ剣印を結び不動明王の真言を唱えた。

「ノウマク サンマンダ バサラダン カン」

 迸しる魔力が猛り毒蛇の姿を容作るその姿はさながら竜のようだ。
 それはインド神話で語られる蛇の精霊ナーガのようであった。

 この時代では多くの場合、イメージの一般化によって火球として形成される魔術も実はイメージによって多様な姿を持たせることができる。

「小呪が中呪に勝てる通りはない!」

 自動車程の火球と1メートルにも満たない火蛇が衝突する。
 刹那。
 次の瞬間、火球を食い破りるとみるみる炎に包まれ飲まれていった。
 一瞬の出来事だ。大な火球は跡形もなく消滅した。

「……嘘だろ……中呪が消滅した……? いや、食ったのか? 小呪が中呪を!? あり得ない!!」

「不動明王系の魔術はより優れた方に魔術が吸収されることを知らなかったのか?」

「く゛っ!」

 歯軋りをするように口を堅く結ぶと一筋の血が垂れた。


「うおおおおおおおおっ!?」
「すげえここまで熱が伝わってくるぞッ!?」
「あついいいいいいいいいい!?」

 外野がうるさい。
 遠ざかる小呪を見ながら解説を挟む。

「俺の魔術は基本的に一段階上の威力を誇る。恥じる必要はない入学してすぐ中呪を使えるのは凄いことなんだろう。だが発動しただけそれだけだ」

 何某くんは水行符を投げる。

「邪悪なる炎を消し給へ水剋火、急急如律令」

 水術による火術の打破の術だが根本的に水量が足りていない。
 現代魔術の多くが物理的破壊力よりも霊的破壊力を高めているため火蛇の熱量は見た目ほど高くない。
 と言っても何かしらの魔術的防御は必要になる。

 最も簡単なのはほぼ全員が持っている守り護符で、性能にバラつきはあるものの下級の小鬼程度の攻撃ではびくともしない。

 何某は『早九字』での防御をこころ見るようだ。

「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」

 刀印の指先で縦に四本、横に五本の格子紋《ドーマン》を空中に描いて魔術的防御とする腹積もりのようだ。

 道教の『六甲秘呪《ろっこうひしゅ》』を原型にもつ『九字』は、日本では宗派に関係なく使われてきた魔術だ。
 武家系では『摩利支天まりしてんの法』ともよばれ、防御だけでなく陰陽道における『急急如律令』や修験道における『急急之大事』のような短縮詠唱に用いる代用呪文に用いられることもある。

 しかし打ち消すには至らないようだ。

「朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝久・文王・三台・玉女・青龍」

 安部家が使用する独自の九字護身法で相手に防御魔術を展開する。
 中呪はキッチリ防がれたものの、実力の凄さを見せるには至らなかったように感じる。

 何某は腰を抜かしたようで立つにたてないようだ。

「プロ同士の魔術戦では舌戦を通じて平常心を奪うなんて日常茶飯事だ。偉そうな口を利く割には無知なんだな……だが恥じることはない。知らないままでいるより今この場で知ることができたんだ。これからは同じ教室に机を並べる仲間として共に魔道を歩もう」

「悪かったこの通りだ」

「気にしてないというよりはやりすぎたと思っているぐらいだ」

「厚かましいお願いだけど俺に魔術を教えてくれ!」

「別にいいよ」

 こうして俺は友を得た。
 千年以上変わらない男通しの友情の深め方という奴だ。 

「勝者! 吉田直毘人。皆メモは取ったか? 最低2000文字以上のレポートを提出するように、今の戦闘は一年では知らないこともあると思うが調べたり、人に聞いたり考察してその部分も記述するように……そのまま帰っていいぞ」

 教師が宣言した瞬間。
 二人の姫が待ったをかけた。

「先生、私《わたくし》も彼と魔術戦をしたいです」
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