36 / 65
第31話 転生陰陽師VS現代魔術師②
しおりを挟む「クソ! バカにしやがって ノウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」
独特の抑揚をつけひと息で真言を唱えた。不動明王の真言は最も主な調伏法だ。
術の規模は中呪であるものの、高校生になっていない段階で唱えられ術を発動させることができるだけ凄いのだろう。
しかし真面に剣印も結べていなければ制御できているとも思えない。ただ発動しただけと言った様子で何の工夫も面白味もない。
しん、と空気が張りつめた。
次の瞬間、男は声を上げた。
「これで終わりだぁぁぁああああああ」
先ほどよりも大きな車程の大きさの火球が放たれた。
魔術だけに頼ることなく、『充纏術』を交えた近接戦であればまだ勝機があったものを……
「『充纏術』で勝ったとしても君は納得しないだろう。だから俺も術を使おう」
「減らず口を! 俺の中呪に小呪で対応できるわけねえだろぉぉおおおお!」
火の魔術に水の魔術をぶつけてやれば直ぐ消えるんだが……
「仕方がない同系統勝負をしてやろう」
火行符を投げ剣印を結び不動明王の真言を唱えた。
「ノウマク サンマンダ バサラダン カン」
迸しる魔力が猛り毒蛇の姿を容作るその姿はさながら竜のようだ。
それはインド神話で語られる蛇の精霊ナーガのようであった。
この時代では多くの場合、イメージの一般化によって火球として形成される魔術も実はイメージによって多様な姿を持たせることができる。
「小呪が中呪に勝てる通りはない!」
自動車程の火球と1メートルにも満たない火蛇が衝突する。
刹那。
次の瞬間、火球を食い破りるとみるみる炎に包まれ飲まれていった。
一瞬の出来事だ。大な火球は跡形もなく消滅した。
「……嘘だろ……中呪が消滅した……? いや、食ったのか? 小呪が中呪を!? あり得ない!!」
「不動明王系の魔術はより優れた方に魔術が吸収されることを知らなかったのか?」
「く゛っ!」
歯軋りをするように口を堅く結ぶと一筋の血が垂れた。
「うおおおおおおおおっ!?」
「すげえここまで熱が伝わってくるぞッ!?」
「あついいいいいいいいいい!?」
外野がうるさい。
遠ざかる小呪を見ながら解説を挟む。
「俺の魔術は基本的に一段階上の威力を誇る。恥じる必要はない入学してすぐ中呪を使えるのは凄いことなんだろう。だが発動しただけそれだけだ」
何某くんは水行符を投げる。
「邪悪なる炎を消し給へ水剋火、急急如律令」
水術による火術の打破の術だが根本的に水量が足りていない。
現代魔術の多くが物理的破壊力よりも霊的破壊力を高めているため火蛇の熱量は見た目ほど高くない。
と言っても何かしらの魔術的防御は必要になる。
最も簡単なのはほぼ全員が持っている守り護符で、性能にバラつきはあるものの下級の小鬼程度の攻撃ではびくともしない。
何某は『早九字』での防御をこころ見るようだ。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」
刀印の指先で縦に四本、横に五本の格子紋《ドーマン》を空中に描いて魔術的防御とする腹積もりのようだ。
道教の『六甲秘呪《ろっこうひしゅ》』を原型にもつ『九字』は、日本では宗派に関係なく使われてきた魔術だ。
武家系では『摩利支天の法』ともよばれ、防御だけでなく陰陽道における『急急如律令』や修験道における『急急之大事』のような短縮詠唱に用いる代用呪文に用いられることもある。
しかし打ち消すには至らないようだ。
「朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝久・文王・三台・玉女・青龍」
安部家が使用する独自の九字護身法で相手に防御魔術を展開する。
中呪はキッチリ防がれたものの、実力の凄さを見せるには至らなかったように感じる。
何某は腰を抜かしたようで立つにたてないようだ。
「プロ同士の魔術戦では舌戦を通じて平常心を奪うなんて日常茶飯事だ。偉そうな口を利く割には無知なんだな……だが恥じることはない。知らないままでいるより今この場で知ることができたんだ。これからは同じ教室に机を並べる仲間として共に魔道を歩もう」
「悪かったこの通りだ」
「気にしてないというよりはやりすぎたと思っているぐらいだ」
「厚かましいお願いだけど俺に魔術を教えてくれ!」
「別にいいよ」
こうして俺は友を得た。
千年以上変わらない男通しの友情の深め方という奴だ。
「勝者! 吉田直毘人。皆メモは取ったか? 最低2000文字以上のレポートを提出するように、今の戦闘は一年では知らないこともあると思うが調べたり、人に聞いたり考察してその部分も記述するように……そのまま帰っていいぞ」
教師が宣言した瞬間。
二人の姫が待ったをかけた。
「先生、私《わたくし》も彼と魔術戦をしたいです」
0
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる