47 / 65

第42話 転生陰陽師は鬼に出会う

しおりを挟む
「アツイ! ヤケルーーー!」
「キエテイクーーー!」
「イヤダ! シニタクナイーーー!」

 先行した式神によって次々と祓われていく禍津日《マガツヒ》の断末魔の声が漏れ聞こえてくる。
 言語を操れるということは、高位の禍津日《マガツヒ》か人間が転じた悪霊や怨霊の類であると推察できる。

「結構強い禍津日《マガツヒ》が多いわね……」

 血が薄まったことで平均魔力が衰え、資料の消失による知識の欠落など様々の要因により、千年前とくらべ魔術師のレベルが落ちている。
 嘆かわしいことだ。

「式が民間人を見つけたみたい!」

「支援団体の人かな?」

「遊びに来ただけかもしれないよ?」

「取り敢えず保護しよう」

 そんなこんなで彼らを保護し呪符での治療を行った。
 怪我と言っても雑木林で多少切った程度のものだが、傷口が瘴気しょうきによって穢れているため『治癒符ちゆふ』を貼り付けて清め癒す。。
 しかし一人の女の子だけが意識がない。
 吉田家に伝わる呪禁《じゅごん》の技で、少女の体調を確認するが命に別状はなさそうだ。

「鬼の数が多すぎる……」

「増援を要請しますか?」

 ドウジであるお目付け役の言葉に俺は思考を巡らせる。
 過去、禍津日が多く発生したのは天災の後だ。
 結界の破損などさまざまな要因が考えられるが、恐らくは神の上質な気――『神気』によるものだ。
 ――と言うことは善神か悪神かは判らないが、神や神聖を持つ何者かの影響がこの地にあるのではないか? 俺には卜占の才がなく星を読むことが難しいため断言できないが、前世と紺瀬の経験から可能性が高いと思う。

「――お願いします。鬼の数が多すぎる……最低でも夜叉《やしゃ》やネームド級が居る可能性があります」

「……まさかと言えない頻度でですね」

 『夜叉』とは古代インド神話の鬼神族であり『羅刹』と共に、仏教では最下級に位置付けられている。
 上位には下から順に『天部』、『明王』、『菩薩』、『如来』と続き、一説では、最下級には『夜叉』や『羅刹』ではなく垂迹神《すいじくしん》や高僧、羅漢と言った聖者が相当するという考え方もある。

 階級=強さではないにしても、『夜叉』や『羅刹』なんて国でも指折りの戦力で対応するべき案件だ。
 救援を要請するのは当然と言える。

「判りました救難要請を出します。一度要救助者を連れて撤退をしましょう」

「……ってアレ? 幸徳井《かでい》珠世《たまよ》じゃない」

「調べたところ近所で仕事をしていたみたいですね……」

 運転手の女性が答えた。

 『幸徳井かでい』家は、安倍家支流の次男が旧賀茂家に養子入りしたことで始まった約600年の歴史を持つ陰陽道の名門である。
 『声聞師しょうもじ』と呼ばれる呪術芸能者(民間陰陽師)を監督し、土御門家の不祥事が起きた際には陰陽頭となるが盛り返した土御門家により奪還された歴史を持つ名門だ。

 そう言った歴史的背景から三大宗家論争には良く名前がでる。
 何度か彼女には会ったハズだが、女性というのは半年程度み見違えるほど綺麗になるので分からなかった。

「彼女を責めないでくださいオレ達を守ってこうなったんですから……」

「責めるつもりはない」

「んっ……んん~~」

 珠世《たまよ》は呻き声をあげるとのそりと起き上がった。

「少しだけ話を聞かせてもらってもいいか?」

「ここどこ……」

「君は任務の中仲間を庇って倒れたんだ」

 状況を説明しながら目に魔力を集め注意深く彼女を観察する。仲間を守った割には魔力が残っている。
 それなりの量の瘴気を吸い込んでいるハズなのに、熱や気分の悪さを訴えたり感じているようすは感じ取れない。

「何を聞きたいんですか?」

「俺達はここに鬼を討ちに来た。殺人犯に憑依している可能性が高いとのことで緊急性が高く高位の魔術師である俺達が呼ばれたんだ。何かしらないか?」

「特には……あ! みんな無事ですか!?」

「ああ君が守ったお陰で無事だ。しんぱいすることはない……」

 俺は珠世《たまよ》の言動に違和感を覚えた。

「一つだけ聞いてもいいか?」

「なんですか?」

?」

「そ、それは!!」

「名前は言えるよね?」

「――」

「実は前に君と会ったことがあるんだ。幸徳井《かでい》家は土御門家支流で賀茂家の養子の家系だ。そして俺は賀茂系と安倍系の三人と婚約している。名門である君の家を含めた何家かは何度か顔合わせをしてるんだ『婚約者にどうか?』って……でも君のことは特別印象に残っていないんだ。それはどうしてだと思う? 」

「……」

「魔力量もその他もあまり印象に残っていないなかった。それが今の君からは大きな魔力を感じる。仲間を守ったとは思えないぐらいの……」

「――――っ!?」

 ここからは運転手さん達も対応できるように大声で話す。

「霊力や姿容それに気配を偽る隠形《おんぎょう》は苦手みたいだな……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...