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第46話 転生陰陽師は天呪で抗う

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「神はその権能を持って神を屠る。そして半神でもない神の血を僅かに引く者が神の加護を得て化け物を倒すなんて話は珍しいものじゃない」

「……貴様まさか――」

違うか?」

 そう神の権能に近しい天呪は神殺しを可能とする。
 でなければ神話の中の英雄が神や天使と対等に渡り合う事などできる訳がない。

 現代の学者の中には、天呪を異教の神を弑逆し内教の教えを広めるための者ではないか? とする学者も存在しアブラハムの宗教の魔術師の多くがそう言った認識を持っている。

「わらわの眷属たる竜蛇よ! 奴を止めろ!」

 稲妻の如き速さで無数の竜蛇が這い寄る。

「『穢・伝播』」

 本来【皓刃銀シラハガネ】によって斬撃を付けるには直接触れる必要がある。
 そして最も威力を発揮できるのは多数の斬撃を放つことではなく、一刀に全力を注ぐことにあった。

 『穢・伝播』は刀越しとは言え地面に直接触れることで、斬撃を直接地面に浴びせ刀傷を広げる解釈を拡張し、「穢」を文字通り放射状に伝播させる広範囲破壊攻撃となる。
 呪いが伝播し連鎖するように地割れで生じた穴に落ちづとも触れた蛇は斬撃を浴びて絶命していく。
 真面な生き物ではない戸部天王が異界から召喚した式神のため塵一つ残すことなく消滅する。

「ほう……神殺しを口にするだけの能力《チカラ》はあるようだな……斬り裂く者、断ち切る何か――いな剣の象徴か……面白い面白いぞ人間! なればわらわも本気をだそうぞ。わらわの本質は龍蛇なれば汚らしい石の都とてこの程度の芸当はできる……」

「でっか……」

 鬼神の足元が隆起する。
 道路とコンクリートそれに大量の土砂が交じり合い変化した。
 それはまるで大蛇のように鎌首をもたげると、その鼻先には鬼神が立っていた。

全長何メートルあるんだ?

義祖母そぼ・伊邪那美命《イザナミノミコト》の体には八体の蛇神が巣くっておると言う。わらわも蛇――大地に関係する女神であるがゆえこのようなこと造作もない。聖書や中国など世界中の神話で神は泥から人間を作っておるのだ驚くこともあるまて……さあ不遜なる者よ。神をも殺す我が眷属の牙を受けよ!」

 鬼神が立った大蛇の頭は、低層ビルよりも遥かに高い位置にあった。

「もうめちゃくちゃだ……」

 大蛇を生み出した後の路面は、ひどい有様だった。
  アスファルトを根こそぎ剥がし取ったため、まるで川が流れたような深く長い溝ができている。
  あの路を再び車両が走れるようになるまで、どれだけの時間と費用がかかることか……震災の復興だって滞ってるんだぞこの国は……

「天呪で神は殺せる。しかしそれは、幼子が大人と殺し合うようなもの容易に成し得ると思うな!」

 蛇の噛み付き攻撃を刀で往なすと同時に天呪で斬撃を浴びせ頭部を破壊する。
 しかしものの数秒で蛇の頭部は再生し、今度は二つに首が増えた。

「洋の東西を問わず英雄とは龍蛇を討ちたし姫を得る。奇妙なものよな? 洋の東西を問わず多頭の蛇がいるとは……」

「くっ――!!」

 二倍に増えた手数に対して天呪を拡張し編み出した術を放つ。
 拡張術『大太刀』で刀身を伸ばし打ち払い。
 刀傷を広げる拡張術『蝕』の応用で空間に斬撃を残す拡張術「爪痕」で時間差の攻撃を行う。

「小賢しい。だが貴様がわが眷属たる蛇の首を落とす度に首は倍に増えるぞ?」

 鬼神の言葉に異論はないだが今は神を殺す条件が整っていないのだ。
 前世でも経験のない神殺しの法……失敗すれば東京は滅びる。
 言葉にできない緊張感が神経を研ぎ澄ませる。

 拡張術「飛刃」で斬撃を飛ばし数舜の隙を作り出すと、拡張術「小太刀」で短剣をまるで誘導兵器のように自由自在に操る。

「小賢しいぞ人間!」

 神は蛇に命令すると、俺は蛇に飲まれた。

「……」

「他愛もない……」

 しかし体の内側から発生させた斬撃は一瞬で蛇を殺すに至った。

「感謝するぜ戸部天王……お前を贄として俺の天呪は完成に至る……」

「まさか! 奴にこれ以上喋らせるな!!」

 何かに気が付いた鬼神は式に命令を下す。
 新たな蛇を差し向けるしかし、成った香犬が蛇を押しとどめる。

「く! 小癪な」

「水気と土気そして鏡、鬼、蛇……全てが繋がった。今までに呼び出した使いは全て“蛇”だ。戸部天王あなたは蛇に関わりの深い女神だ」

「わらわの出自を白日の元に晒すかそれで何になる? 陰陽術や真言に言霊の技はあれど、それらは神仏を害するには到るまい」

 背後では二頭の香犬が蛇と死闘を繰り広げている。
 そして俺達は互いの武器を手に機会を伺う。
 戸部天王の得物は、蝦夷の使う武器である柄が湾曲した手蕨刀《てわらびとう》が握られていた。恐らく魔力で生み出したのだろう。

 両刃の直剣でとても刀に見えないそれは、古墳時代末期から平安時代初期までの短い期間に使用された剣鉈のような刀剣で日本刀の原型になったと言われている。

 刃長は最大五〇センチと、中脇差程度の長さで小太刀に比べ一〇センチ以上も短い。
 俺が握る太刀と比べると二〇センチも差があるもののとてつもない脅威を感じる。
 恐らく彼女の手蕨刀は、自身を象徴する毒蛇の双牙そのものなのだ。

「日本で蛇と言えば代表的なのは『八岐大蛇《ヤマタノオロチ》』だ。あなたは『八岐大蛇』そのものと言っていい『戸部天王』と『八岐大蛇』は同一の存在だ。
蛇のことをカガチや蛟《ミズチ》と言うようにこれは、水の霊を指す古語に由来がある」

 加具土命カグツチや雷《イカヅチ》などのように、チと言うのは霊力など意味する語尾とされるように、水霊つまり水の神のこと指す言葉だ。

「不快だぞ陰陽師! わらわの秘する来歴を暴き立て忌まわしき過去を思い出させるとは! 無礼にもほどがあろう!」

 女神は不快感を露わにすると、手蕨刀の柄を強く握りしめた。
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