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第51話 転生陰陽師は幼馴染に心配される
しおりを挟む「……」
やっぱり、戸部天の外骨格を砕いたのは前世と同じ天呪『【黑刄銕《くろはがね》】』のようだ。
しかしどうして前世と同じ天呪『【黑刄銕《くろはがね》】』が使えるんだ?
古の女神を材料に天呪つまりを弄った結果だろうか?
それともその前に前世使役していた式神を体に取り込んだのが影響したのだろうか?
判らないだが今の俺は多分世界でただ一人二つの天呪が使える稀有な存在だ。
実に面倒だ。
天呪は遺伝しないと言われている。
しかし天呪の使い手は基本的に優秀で次世代以降にもその傾向は見られる。
俺がいい例だ。
そして最近発表された学説にこんなものがあった。
「現代の魔術は天呪を参考にしてダウンスケールして作られた」と言うものだ。
魔力量だけでも日本の種馬扱いされているのに、二つも天呪を持っているともなればより狙われることになる。
美女を抱くのは吝かではないが、そこに自分の意志がないことは苦痛以外なにものでもない。
前世の兄なんか政略結婚で嫁が五人も居たが結婚生活は悲惨そうだった。
神を倒したばかりだというに気が重い。
そんなことを考えていると、体長数メートルはあろうかという大きな怪鳥の群れが現れた。
「協会の式神だな……」
するとその中の一羽が加速し落ちるようにして迫り来る。
降りて来たのは和服のような服を身にまとった美女であった。
際立った美貌と優雅さを感じさせる容姿。
アーモンド型の瞳は大きく翡翠に美しい。
緩やかにウエーブした美しい黒の長髪は気品を感じさせ、服の上からでも分かるスレンダーな体つきはまるでモデルのようであった。
美女は俺の全身を舐めるように見回すと、ほっとしたようすで溜息を付くとこう言った。
「直毘人大丈夫? 鬼は?」
「ああ鳥羽に心配されるほど軟じゃないさ……」
「もう凛世《りんぜ》って呼んでよ。その剣と式神……」
凛世《りんぜ》は剣と式神――香犬を見ると顔色を青くする。
命を賭けて鬼神を倒したと思っているのだろうがそれは勘違いだ。
秘術・『護國護法景童子の術』を継承することに関してほぼリスクはない
むしろその後の神を贄とする天呪の作り替えの方がリスクは大きくあれができなければ、神を倒すのには至らなかった。
あと五年あればまだ話は違ったがな……
「そう……封印を破って使ったのね吉田家相伝の秘術・『護國護法景童子の術』を……」
「すまん。心配をかけてもらっているのにより心配させる事になってしまって……」
「いいの。直毘人がそう言う人だって私は知っているもの……それで珠世《たまよ》はなんでここにいるの?」
協会に所属する陰陽師として聞きたかったであろう。
「鬼に憑依されても自我を保った鬼神憑き……生成りの少女かな?」
俺の説明に凛世《りんぜ》は顔色を青くする。
「――――っ!? て言う事は、極めて優れた巫女……『神霊を降ろし依り憑かせる』玉依姫や玉櫛媛と同じ能力を持った巫覡……協会でいう媛巫女の才能を持っているって事じゃない!」
大国主の妻である『活玉依毘売《イクタマヨリビメ》』。
瓊瓊杵尊《ニニギノミコト》の母である栲幡千千姫命の別名が万幡姫《よろずはたひめ》の児・玉依姫命である。
他にも神武天皇の母などほぼ同年代の数多くの女性にこの名前が付けられている。
その多くが海神《ワタツミ》系の血族である。
恐らく男性が武力を持って現世を統治し、女性は神々の力で人民を纏めていた名残ではないだろうか? と言うのが俺の考察だ。
『神霊を降ろし依り憑かせる』ことは危険ではあるものの、人の身で人以上のことができる稀有な才能だ。
「俺の式神にした」
「はぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」
寂れた山間に驚愕した女の声が木霊した。
幸徳井《かでい》家に責任取れって言われたらどうしよう……俺は考えるのをやめた。
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