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第一章

第15話 商人は救われる

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 商人は焦っていた。
 この商品が捌けなければ破産してしまう。
 だかしかし護衛の冒険を雇う金も惜しく、商品だと言い訳し購入した。粗悪品のクロスボウがあるから大丈夫だと自分に言い聞かせ、ベネチアンの街に向かっていた。

 行商人と言えば聞こえがいいがその実態は、実家を継げなかった商人の次男坊以下か流民が行うような極めて賭けの要素が強い生業で、現代で言えば貯金せず転売に勤しむフリーターが近いだろう。

 そして運が悪いことに空腹で好戦的なオークが突如襲ってきた。

「なんだ! あのブタ面の巨体オークか!!」

 ここまでなら良くある不幸ですんだ。
 事実、自然の脅威を舐め大損をする商人は少なくない。

 不幸が連続したことによる事故だった。
 一つは護衛をつけなかったこと。
 二つ目はオークの足が遅く最悪逃げるとタカを括っていたこと。
 三つ目は武器をもっていて撃退出来るとかんがえてしまったことだ。

「オークの一体くらいなら、なんとかできる俺にはコイツがあるからな」

 そう言って荷馬車に積んでいたボウガンに手に取った。
 しかし、矢はハズレ。駆鳥の操舵を誤った事でオークとの距離が近づいていく……

 オークは体力の消耗を待っている。
 駆鳥は完全に怯えてしまい走るのやめてしまい役に立たない。

「動け! 動けってんだよ! このポンコツが!」

 怒号罵声を浴びせるが駆鳥は動くことはない。
 恐怖のあまり手がブレてしまいオークに矢が刺さることはない。

「ひっひぃ~」

「グモっグモっ」

 なんだか興奮した様子で鼻を鳴らし近づいて来るオークの表情は、笑っているように見える。

 まずい。

 獲物が逃げられないことをいいことに、こいつは一気に襲い掛かってこない。
 相手が弱るのを、じっくり待っている。
 いやもしかしたら恐怖していると言うことを楽しんでいるのかもしれない。

 頭の片隅で日死ぬのでは、という恐怖がよぎりと身体ががたがたと震え喉が渇き、クロスボウを持つ手がぐっしょりと濡れる。

「グモっグモっ」

 オークは興奮した様子で鼻を鳴らす。
 
 まずい、どうすれば。

 もはやこれまでか、と思ったその時オークの顔に何かが飛んできた。

「え?」

 何が起きた?

 予想外の出来事に唖然としてしまう。

「スラちゃん商人を守れ!」

「ピー」

 子供? 冒険者か!

 スライムを従え現れたのは少年だった。
 服装は軽装。武器は刀だけなんとも頼りない。

 大丈夫なのか?

 正直、自分より弱く見える。
 ゴブリン一体だって倒せるかどうか。
 少年の小さな体躯は思わず心配になる程だ。
 だが少年は魔物に襲われる俺を見捨てず勇気を振り絞って、助けに来てくれたのだ。

 例えどんな弱そうな冒険者でも、力を合わせるしかない。
 震える身体でクロスボウを押さえつけ、矢を装填しようと試みる。

「ブモモモォォオオっ!!」

「はあああっ!!」

 少年は剣を振り降ろすと即座に斬り返しオークは膝から崩れ落ちる。

「えっ?」

 俺は信じられないモノを目にした。
 オークを斬り殺した少年はロクな魔術を使っているようすはなく、少年の素の実力が高いことを示していた。

「以前やとった冒険者なんか目じゃねぇ」

 少年は返り血の一滴も浴びず一切攻撃を受けてもいない。
 一撃必殺。
 否、二撃必殺。
 とんでもない凄腕だ。

 行商人をしていると不思議なモノを目にするとは、聞いていたが男は初めて見た。
 そして人を見かけで判断してはいけないとの師の教えを身を持って実感した。

「大丈夫ですか?」

「助かったよ」

 そう、助かったのだ。
 極度の緊張から開放され、へなへなと商人は座り込んだ。

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昨日2024/05/29日アルファポリスHOTランキング第3位にランクインしました。

そのため本日も二話投稿したいと思います。

目指せHOTランキング1位!!
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