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第二章

第67話 遊戯と謹慎

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「なっ! ふ――」

「ふざけるな」と言いかけた。次兄の言葉を遮った次兄の乳兄弟は、

「委細承知しました。神殿への対処は我々が行いますのでナオスさまは不要不急の外出はせずに離れに居てください」

 と言われてしまった。
 次兄としては未だ後継者レースで優位に立ちたい気持ちがあるのだろう。
 だから自分のために治癒の力を使いたかったのだろうが、俺はこの家のことが大嫌いだ。

「いいだろう」

 基本的に金を積まれてもやりたくない。
 だから早々に俺を放置する判断をして、オマケに神殿の対処をしてくれると言った次兄の乳兄弟の判断は、これ以上嫌われないと言う観点から見れば正確と言っていい。

 と言う訳で屋敷に戻った俺は今回の騒ぎのほとぼりが冷めるまで、離れに引きこもることにした。
 オットー姉さんには神殿に行く必要はないと言われたものの、夫人や兄達には邪魔だから神殿に行けと言う空気を作られている。

 話し相手や遊び相手になる奴隷もいる。
 料理も以前にもまして質が良くなり、その質は本宅で出る料理と変わりないほどだ。
 それもこれも聖人級回復魔術師である俺に対する忖度と言っていい。

 勇者だった前世仲間達とこの世界に幾つもの遊びを広めたものだ。
 WEB小説では王道のリバーシ、将棋、チェス、囲碁、麻雀、トランプ。

 マイナーなモノだとルドー、チェッカー、チャイニーズチェッカー、ヘックス、ナインメンズモリス、マンカラ、ラストカード、花札。
 代わり種だとナンバープレース、数字魔法陣、ワードパズル、詰め将棋、詰めチェスと言った創作する楽しみのあるものなどだ。

 道具が必要な球技の類は当時受けが悪かったが、見世物として一定の地位を得ているようだ。
 中でも人気があるのは空手や柔道と言った格闘技や武道系で、見世物であると同時に兵士や冒険者、傭兵と言ったアウトローから高い支持を得ているのだとか。

 古代五輪でも格闘技は人気だったと聞く、処刑や剣闘士が娯楽どというぐらいだから人間と言う生き物は、血生臭いモノが好きなんだろう。
 そんなことを考えながら駒を動かした。

「王手」

「参りました」

 そう言って頭を下げたのはイオだった。
 イオの将棋の腕は悪くなくむしろ巧い。
 『一手損角換わり』という相手の行動を見てから指すことの出来る戦法を好んで使用している。

 一見すると最強角の一角駒を取られる作戦なのだが、柔軟な対応力を持ち合わせた受け型の戦法だが、反面高い棋力を求められる。
 俺は家族や親戚同士でゲームをする機会が多く、右玉で5五銀で銀交換の高い攻撃力で相手の判断ミスを誘うことで何とか勝利できた。

 俺は汗をハンカチで拭うとコップに並々と注がれたリンゴジュースに口を付けた。
 程よい酸味と甘みが真剣勝負で乾燥し粘ついた口内をさっぱりとさせてくれる。

「ご主人様はショーギもお強いんですね」

「ああ、詰将棋や詰チェスの本を読んだからある程度は何とかなるんだ」

 と予め考えておいた言い訳で説明する。

「本を読むだけでここまでお強くなれるなんて凄いです!」

 少し怪しんだようだが藪をつついて蛇を出すたくはないのだろう、空気を読んで俺を褒める。
 高級奴隷だけあってこう言った教養の知識は高く、まるで高級娼婦のようだ。

 古今東西、高級娼婦とはただ顔やスタイルが優れているだけではなく芸事や話術、教養にも優れたファッションリーダー件アイドル的な存在だった。
 簡単に言えば「会いに行けるアイドルではなく、ヤりに行けるアイドル」それが高級娼婦なのだ。

「少し前までずっと一人だったからな、暇を潰すのは詰将棋ぐらいしかなかったんだ」

「……お辛かったでしょうこれからは私達がいますので」

 そう言ってあざとく手を取る。
 男心が判っている。
 いい女って言うのはこういう人間なんだろう。
 
 窓辺に立ち視線を中庭に向ければ、奴隷達が武芸の稽古に勤しんでいる。
 剣や槍と言った思い思いの武器を振るって来る日に備えてさせている。
 フェンリルがいるとはいえ所詮は子犬。

 ある程度の力がなければ彼女達が、無残に殺されることは想像に難くない。
 ある程度は自衛力を付けさせるべきだ。
 丸腰だから警戒されず安全と言う訳ではない。ある程度武力を保持することで安全が保たれるのだ。

「そう言えばイオはどうして奴隷になったんだ?」

「私は元々裕福な家庭の産まれでした。しかしスタンピードによって領地は荒廃し私は家族を守るために自ら奴隷となりました」

 予想通り元々裕福な家庭の産まれのようだ。
 しかし没落の理由がスタンピードとは奇妙な縁があったものだ。
 イオのためにも情報を集めよう。
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