75 / 124
第二章

第74話 遅れた騎士

しおりを挟む
「なんですか? この状況は?」

 若い騎士が怒鳴り声を上げやってきた。

「見ての通りです。襲撃者に襲撃されたので反撃し撃滅しました」

「皆殺しじゃないか!」

「ええ、手加減をしている余裕がなかったもので……」

 平坦な声で答えた。
 実際は解呪に協力させられたりと面倒だからだ。

「よく言う……大怪我で弱っているとは言え翁の脚を斬り飛ばすほどの使い手が加減できないなどあり合えない」

「なら生かしたまま逃がした方がが良かったか?」

「あなたなら無力化出来たハズだ!」

「根拠の無い勝手な憶測で決めつけられても困る。それに彼らはプロの暗殺者ですよ? もし違法な術式が搭載されていればよくて自爆、悪ければ高濃度の瘴気によって汚染され呪殺されかねませんが」

「聖人なら解呪できるだろう!?」

「知りませんよそんなの?」

「へ?」

「俺の回復魔術は兄弟姉妹や騎士や兵士による暴行によって磨かれたものだ。従って怪我を治すことは得意だが、呪いを払うと言った神官的な能力は発展途上と言うわけだ。まあカエルや虫にも世話になったがな……」

「だったとしてもそれだけ回復魔術に精通しているのだから、解呪だって出来るハズだ!!」

「はぁ……」

 わざとらしく溜息を付くとこう言った。

「だったらあなたは竜を殺せますか?」

「出来る訳ないでしょ!」

「それと同じです。同じ術の体系にあるからと言って出来るとは限りません」

「屁理屈だ!」

「難癖を付けて来たのはあなたでしょう? 分かり易いようにたとえ話をすれば屁理屈になる……だったらあなたとは会話になりません」

「……」

「それに俺は貴方達の最大のミスに情けで言及していないということをお忘れなく……」

「それは我がオチョツコーイ家への侮辱だ!」

「おや? もしかしてわざと見逃したのですか?」

「――ッ! 巫山戯るな! 俺はそんなことはしない!! 撃退出来たからって調子に乗るなよ!?」

「侵入を許し撃退も出来ず挙句の果てには責任転嫁、これがオッチョコチョイ家の仕事と言う訳ですか」

「――っ! 家名を間違えるとは何事だ我が家の家名はオチョツコーイだこれだから平民の子は……」

「種はあなたの雇い主である公爵ですけどね。それに見逃したのは事実だし遅れたのも事実だ事実の指摘を侮辱と受け取り、護衛対象にごにょごにょと言い訳をするのは見苦しいと思わないか?」

「――くっ!? 覚えていろよッ?」

「では言葉を返そう卿。聖人級であり公爵家の血を引く俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやる。俺はこれから兄上に報告をしに行く処分されないことを祈るんだな」

 俺を引き止め懇願するおっちょこちょいの静止を振り切って本邸へ向かうため脚を早める。

「ナオスさま! 申しわけございません」

 俺の進行を邪魔するように回り込んで縋りつく、その姿はまるで聖者に縋る民のようだ。

 前世が勇者であり聖人級回復魔術師であろうとも、根っからの利己主義者エゴイストの俺にとって有益でない人間の生死や栄達など路傍の石程度のものだ。

 俺からの不興を恐れオッチョコチョイの首を刎ねようがどうでもいい。
 否、次兄が俺の事をどう思っているのか明確になるのだから死んでくれた方がいいかもしれない。

「石が邪魔だ」

 俺はそう言ってゴミを蹴っ飛ばす。
 爪先が鳩尾みぞおちに入ったのか殺虫剤をかけられた虫のようにもだえ苦しんでいる。

「そう言えば前に『訓練です』って言って俺に木剣振っただろ? その御返しだ」

「う゛っうう……」

 虫のように丸くなりうめき声を上げるだけで返事を返すことはない。
 子気味良い気持ちで跳ねるような足取りで離れに一度戻った。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...