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第二章

第73話 掃討

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 俺が魔術師だと言うことは知られている。
だが魔術の最大発動数はどうだろう? 俺はわざと【身体強化】を一度解除して【魔力探知】を使う姿を印象付けることで、一度に複数の魔術を使えないと誤認させた結果大きな油断を作ることに成功したと言う単純なものだ。

 そしてその質問に答えると言うことは情報を露呈するリスクだけを上げる。
 何の意味もない自己満足でしかない。

 頭目をころしたことで息を潜めこちらの様子を窺っていた暗殺者達は、互いの最大最強の武器を手に攻撃を開始する。

 立木の影や植え込み、塀などの影から飛び出して人影の手には剣や弓など武器の種類は多種多様で魔術を併用している者も多い。

「馬鹿だろこいつら、毒をくらい精神も体力、魔力も消費し一番の使い手が死んだ今、全員で攻撃したとして俺に勝てるとでも思ったか?」

 どこぞの魔王構文で返答すると俺は笑いを押し殺した。
 しかし我慢できなくなってゲラゲラと悪魔見たいな笑い声で哄笑する。

「雷光剣!」
「重戦斧!」

 バチバチとまるで、街灯によって昼夜逆転した鳥が囀るような爆音を立て雷を纏った剣が振り降ろされる。
 ヒラリと躱し鳩尾に拳を叩き込んだ。

「暗殺にしては派手過ぎないか? 光も音も!」

 雷光剣(笑)と同時に攻撃してきた斧使いは体捌きがなっていなさすぎて、斧の重さに振り回されている。
 だから受け流してやるだけで簡単に態勢を崩す。

「凍結矢!」

 女暗殺者が放った魔術は、鑑定スキル曰く着弾地点を凍結させる高価があるらしい。
 付与魔術にすることで術の難易度を下げているようだ。

 しかし来ると判っていれば幾らでも対処方法はある。
 斧使いを楯にした後、付与劣化版ではなく完全な術で全身を凍らせる。

「馬鹿な……ナオス・コッロスは聖人級回復術師のハズこんなに高度な氷魔術を扱える訳……」

 やがて彫像のように体表を氷が多いブロックを形成し、命の灯を消し去った。
 訓練された暗殺者と言えど戦乱の時代を生きた勇者の相手は荷が重い。

「「ひぃ!」」

 ガサガサと周囲から音がし逃走逃亡を図ったようだ。

「大人しく死ね。恨むなら己と雇い主の愚かさを呪うがいい」

 逃げる敵へ向けて魔術の弾丸を撃ち放つ。
 
タン。

 軽い射撃音のあと人が倒れる音が聞えた。
 悲鳴を上げさせることもない一撃だ。
 しかし念を入れて頭と心臓の何れかに、一発魔術弾を打ち込む。

 血が飛び散るが寝間着に付着することはない。
 風魔術によって生み出された気流が防ぐからだ。

 血は感染症の温床だ。
 半端な知識があると嫌悪の対象にしかならなず、『血の伯爵夫人』エリザベート・バートリの血の風呂に浸かるなんて逸話は、ゴキブリを見るような恐怖の対象でしかない。

 戦場なら我慢するが出来れば浴びたくないものだ。
 俺は潔癖症ではないと自任しているが、世界基準では勇者は全員潔癖症扱いだった。

「覚えて良かったな風之衣」

 この世界の暗殺者は有期契約の奴隷となっているモノが多く、情報を吐かせることは難しい。

 奴隷契約の強制破棄には、高度な魔導工学の知識と反呪いアンチカースの技術が求められ、国は対策として術式のパターン化を行っているものの貴族や神殿、反社会勢力は術式の暗号化を行い対抗しているのが現実だ。

 しかし勇者の多くは【鑑定スキル】と高い魔力によってそれが可能となる。
 【鑑定スキル】の分析能力は高く、神眼であり、大幅に解呪難易度を下げる。

「やっぱり一人ぐらい生かした方が良かったか?」

 ポリポリと頭を掻く。
 後悔しても仕方がない。
 一抹の不安を抱えながら交戦音を聞き付けた騎士が到着するのを待った。
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