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第二章

第72話 カクテル

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「卑怯だとは言うまいな? 俺は剣士でも騎士でもなく暗殺者なのだから……」

「しかし回復魔術師それも聖人級に毒を盛るなんて愚かだと思わないか?」

 仕留めたと確信したのか暗殺者は雄弁に毒の性能を語る。

「その毒は他頭毒蛇ヒュドラなど毒で有名なモンスターの生物毒を混ぜ合わせた秘伝の猛毒だ。例え聖人であろうとも毒の種類が判らなければ解毒は出来まい」

「複数の毒を混ぜれば症状から診断も難しいと言う訳か」

「その通りだ……」

 暗殺者とは常に日陰者でいることを強いられる。
 有名な暗殺者なんて人相の割れた潜入捜査官と同じだ。

 だから自己承認欲求に飢えているのだ。
 直ぐに死ぬ対象なら開示し毒の……それを調合できる自分の凄さを実感できるから。

 俺はこの暗殺者のことを超一流だと思っていたがどうやらそれは勘違いのようだ。

「お前のことを超一流だと思っていたが、どうやらそれは勘違いだったようだ。お前は超一流なんかじゃないド三流だ」

「――っ! 俺達は東方の暗殺集団『蛇』の流れを汲む『海蛇』頭目ファルド様だぞ!!」

似たような相手と戦ったことがあったな、確か前は『鷹』だったか? 『蛇』だの『鷹』だのNARUT〇かよ……

「自分の来歴をそんなにペラペラ喋っていいのかよ?」

「冥途の土産と言う奴だ」

「自身満々だな……だが解毒はできるぞ?」

「強がりはよせ。奴隷となり我が主に忠誠を尽くすのであれば、解毒薬をやろう」

 そう言ってポーションを取り出した。
 鑑定してみるとどうやら嘘は付いていないようだ。
 しかし本当のことも言っていない。
 完全な解毒ではなく症状を緩和する程度のもので、例え助かったとしても障害は残りそうな不完全なものだ。

「不完全な解毒薬を対価に奴隷になる道は選べないな……」

「……」

「図星か?」

 男は絞り出すようにこう言った。

「……だったとしてもお前が生き残る道はこれしかない!!」

「それがそれだけじゃないんだなあ……【ヒール】」

 俺は一瞬で毒を解毒した。

「ハッタリはよせ。もうすぐ内臓が毒に侵され使い物にならないくなるぞ?」

「それはどうかな?」

 会話の最中互いに一度も崩す事の無かった構えが崩れ、俺は中段の構えから上段の構えを取った。

 中段の構えは剣道や剣術で、攻防一体の基本中の基本であり、大半の選手が最初から中段の構えから試合を始める。

 理由は単純明快だ。
 そして俺は上から下へVの字に動かし続け “起こり” を誤認させてきた。

 五歩踏み込んだ瞬間。
 それこはまさに死地。
 それは剣先がわずかに交わる『一足一刀』の間合いだ。

 それも大人と子供の体格差を考えれば、有効射程《リーチ》の差は二倍近く当然ながら有効射程《リーチ》の長い方が有利とされる。

 だがこちらは完全に虚を付いている。
 一刀で全てを断ち切る剛剣を放った。

 バタリと音を立てて暗殺者は地面に倒れた。
 その躰は完全に二つに分かれている。
 それこそ聖人でもない限り治せない重症だ。

「馬鹿な……どうしてあんな速度で動ける?」

「そういうところがド三流なんだよ」

 俺が魔術師だと言うことは知られている。
だが魔術の最大発動数はどうだろう? 俺はわざと【身体強化】を一度解除して【魔力探知】を使う姿を印象付けることで、一度に複数の魔術を使えないと誤認させた結果大きな油断を作ることに成功したと言う単純なものだ。
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