84 / 124
第三章

第81話 連絡と出来ること

しおりを挟む
 離れに戻った俺は奴隷メイド達に報告する。

「予定を早めて遠征に向かうことになった」

 側仕えであるイオが皆を代表して質問する。

「ことは急を要すのですか?」

「兄上は民の不安を取り除きたいたらしい」

「危険はないのですか?」

「基本的に回復魔術師は騎士や冒険者の後方にいいて守られる存在だから、騎士や冒険者ほど危険な目には会わないそうだ」

 これは前世の経験からも判っていることで、少人数のパーティーでもなければ回復魔術師は、護衛を引き連れた状態でやや後方で控える。
 食料などの物資の次に重要な生命線だから安全には配慮されている。

「モンスターが魔術などを使ってきたら飛んでくると私は不安です」

 戦闘経験がないイオにとって安全な後方にいるとはいえ、心配は絶えないことだろう。

「そうだな。だがある程度前に居なければ治療は出来致し方がない」

「――!」

 アイナリーゼは、何かを言おうとするイオの肩を摑んで首を横に振るとイオに耳打ちをする。
 しかしイオは納得が行かないようで顔を背け下を見る。

 アイナリーゼは「はぁ」と短い溜息を付くと、筆頭奴隷であるイオの代わりに言葉を締めくくる。

「安全には気を付けて下さい」

「判った……」

 こうして俺は遠征までの数日間を奴隷達と楽しむことにした。







 楽しむとは言っても遊んでばかりは居られない。
 全力を出さない関係上俺が出来ることは少ない。
 神殿に出向いて魔術を習い使用できるフリをするとか、ポーションの生産と改良程度しか思いつかなかったからだ。

 コッロス公爵家やその配下である騎士や兵士は、基本的に嫌いだが領民に罪はない。
 領民を守る騎士や兵士、冒険者・傭兵には領民のために適切な場面でその命を散らして欲しい。
 そのためにポーションを改良することにした。

 転生とその後のドタバタで、この世界で普通に生活できるように頑張ろうと思った矢先に、兄にボコボコにされ屋敷から追い出された。
 逃げ出さなかった理由は単純で今世の母親が屋敷に居たからだ。

 彼女に迷惑をかけないために俺は彼らの仕打ちに耐えた。
 結局、産みの母親は金子を持って地元に帰り結果的に俺を捨てた。

 だから俺も自分らしく生きると決め、コッロス公爵家を壊滅することにした。
 前世の母親がいるせいで今世の母親には特別な感情は何もない。

 意識の差か共に過ごした時間の差かは判らない。
 きっと俺が薄情な人間だからなのだろう。
 転生してからずっと不遇な扱いを受けていた。

 例外は自分で関係を築いてきた人たちだけ、奴隷達や冒険者の皆、グレテル先生と触れ合ってる間にすっかりここベネチアンの街が好きになった。

 だからを彼らを守る人間を助けるものを作るんだ!
 俺は過去『万能者』と呼ばれたもののそれは、一流に遠く及ばないことを暗に示している。

 そんな自分だから判るのだ。
 一人では限界がくると、だから自分以外も回復させられるポーションを作るのだ。

 しかしポーションの改良と言っても瓶やレシピは既に改良を終えている。
 これ以上となると更なるレシピの改良や、素材の変更しか思いつかない。

 例えば煮込んだり原液を希釈する際に使う『水』を、『酒』や『聖水』などの他の液体に変更することが手っ取り早いだろう―――





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【あとがき】
感想欄で新しいコメント頂きましたありがとうございます。
一週間分はストックあるので今日からストーリーを毎日更新していきますのでよろしくお願いします。
愛用のピクセル7Aの背面パネルが捲れて来たのでスマホカバーを買いました。前の5A時代は付けていたのですがカバーなしに慣れると随分と重く感じます。
真・女神転生Ⅴ Vengeance購入予定代金が削れてしまったので読んでPVを回して応援頂くかカクヨム様から投げ銭で応援頂けると嬉しいです。目指せDLC約2000円込みの一万円!!
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...