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第三章

第99話

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 勇者時代の経験から野営時の娯楽は、食事か雑談か女ぐらいのものだと知っている。
 勇者時代も今も俺にとって一番の娯楽は食事だった。
 前世で使えたアイテムボックスの中身は、今だ使用不可だが、今世で手に入れたモノは別だ。

 アイテムボックスから魔道焜炉コンロを材料を取り出し料理を始める。
 俺専用の天幕側で料理を始めたものだから、警護の騎士の視線が刺さる。

 青魚の一夜干しや豚の腸詰めソーセージを火で炙る。
 心中の海〇雄山や山岡さんが「ガス火では表面に水分がついて……パリっとしない! 炭のかおりが――」などほざいている。

 まず魔力で生じた火なのでガスではない! などとツッコミを入れながら、炙る面を調節していくじくじくと水や油分が浮いてくるので、適当に取り出し温めたパンに生野菜と一緒に挟んで食べる。

 これが一番うまい。

 周囲が乾物や瓶詰めを食べている中で一人豪勢な食事を取る優越感は最高のスパイスとなる。
 人間、下を見る時が一番自分の今の立ち位置を実感でき、自尊心を満たすことができる。

 そして別のコンロで温めておいた作り置きのスープを飲むだけで体の芯から温まる。
 酒があれば完璧だ。
 まあ肉体年齢的に飲まないんだけどね。

「あの……」

 騎士の中でも上役の人物が声をかけてきた。

「なんでしょうか?」

 少し威圧的に答える。

「申し訳ございません。できれば兵と……騎士と同じものを食べていただけないでしょうか? ご存じないかもしれませんが遠征は娯楽が少なく、食事や酒、武勇伝などしかないのです。なので輪を乱されると士気に影響しますなのでご遠慮願えないでしょうか?」

 などと最もらしい理由を付けているが、話を要約すると『妾腹の七男風情が騎士である俺達より言いもの食うな、あとお前の食事は俺達上役が食べるから供出しろよ』といったところだろう。

「判りました。次から気を付けますね」

 返事を返し食事を続ける。

「ですから……」

 俺から良ければどうぞ? という言葉を引き出したいのだろう。だが俺は自分で言うのもなんだが性格が悪い。
 嫌いな人が不幸になるのなら俺も不幸になることはやぶさかではない。相手が-3になるために自分が-1になるぐらいは屁でもない。

「まだ何か?」

 パンを口に押し込んでスープを流し込む。

「そのスープを……」

 「分けていただけませんか?」という言葉が出る前に俺は、鍋を蹴飛ばした。

「ぎょえええええ!!」

 男は暖かくうまそうなスープにありつけると思っていたのにそれを台無しにされ、声にならない声を漏らした。

「欲しけりゃ犬みたいに這いつくばって舐めろよ。卑しい豚野郎!」
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