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第三章

第106話

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「盾構え!」

 号令で盾を構えモンスターの攻撃を防ぐと、その隙を突いて上空から魔術や弓矢が撃ち込まれる。
 傭兵や冒険者は隊列に参加せず側面からモンスターを責め立て乱戦状態だ。

 しかしプロである彼ら彼女らは殆どフレンドリーファイアをしていない。見事としか言いようがない。
 中には複数体の攻撃で押し込まれ体制を崩し大けがを負う兵士もいるが、タブレットポーションを傷口に入れると即座に戦線に復帰している。

(想定通りの結果になっているなこれで死者は出なさそうだ)

 冒険者や傭兵の負傷者はこれ幸いと、即座に後方に下がって神官や魔術師の治療を受けている。
 例え領民であっても騎士や兵士でない彼らには命を張る理由はないのだろう。
 彼らを責めるつもりはないが何だかこうもやっとする。

 そんなことを考えていると大きな声で現実に引き戻される。

「ツナーグ様!」

 前衛戦力の一端を務めている神殿騎士が声を上げ後方に近寄ってくる。

「呪いを振りまいているのは、勇者時代の遺物『呪怨瓶じゅおんへい』です!!」

「『呪怨瓶じゅおんへい』ですって! 呪いに充てられたサラマンダーが暴れるのもおかしくありませんね……」

「ビンセント殿、勇気ある撤退を進言いたします。『呪怨瓶じゅおんへい』を解呪し無力化するには神官二〇人では少なすぎます。最低でも六〇、いや四〇人は必要です」

(『呪怨瓶じゅおんへい』の解呪ってそんなに大変なものだったのか……聖剣や聖槍、『聖女』と呼ばれた勇者なら一発だったから実感ないけど……)

「しかし我々が引けば民に被害が出かねないそれだけは何としても避けなくては……」

 確かにビンセントの言う通りだと皆が理解した。
 ベネチアン産まれの者でなくとも自分たちが暮らし、知人が居る街に災いが迫ろうとしているのだ。
 それを見過ごすことが出来る人間は少ない。

 全員が黙る中で報告に来た騎士が呟いた。

「聖人であるナオス様は何人分になるのでしょうか?」

「それは……二〇否、それ以上よ」

(おっと風向きが変わって来た)

「であれば――」

「――ビンセントそれは契約にないことだ」

 俺は一刀両断した。

「なぜですか?」

「先ず第一に俺にとってはベネチアンすらどうでもいんだ。船を借りて奴隷たちと逃げれば問題ない」

「人の心はないんですか!?」

「出来る可能性がある人間に何の対価も支払わずに、助けてくださいじゃないと死んじゃうって命を盾にして、自分の要求を飲ませようとするやり方が気に入らないせめて空手形を切れよ」
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