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第2話冒険者ギルド
しおりを挟む家に縛られない自由な生き方が、俺はしたいんだ。
前世で読んだ小説では、冒険者は自由の象徴だった。
――――と言う訳で俺は学園に通いながら、冒険者として活動する事にした。
学校に行かなくていいのかよ! と言われそうだがそこは大丈夫。
幸いな事に学園は実力主義。
授業を受けていなくても試験に合格すれば卒業できる。
授業を受けていれば基礎得点や内申が良くなる程度だと聞いている。
――――とは言え貴族の家系それも家のようなゴリゴリの武闘派だと、他家に比べ騎士の腕も高く、高位の冒険者に頼る機会が少ないため見た事がないレベルだ。
武器を持って歩いている男女に話しかける事にした。
「すいません。冒険者ギルドの場所を教えて貰えますか?」
「あぁいいぜ。これからギルドのある方に取っている宿屋に行くところなんだ」
気のいい男性は二つ返事でそう答えてくれた。
冒険者ギルドはこの町のメインストリートからかなり外れた場所にあった。
衛兵に案内をしてもらった時に理由を聞くと、「冒険者は数が多く目に見えて武装しているので、ほぼ専用の町が必要」との事らしい。
「ありがとうございます」
そう言って、フルーツジュースが飲める程度の硬貨を女性に握らせる。
「案内程度でこんなに貰えないわ。それに王立学園の生徒なのに冒険者ギルドに来るって事は何かあるんでしょう? いいから取っておきなさい」
「ですが……」
「じゃぁ、君みたいに困っている子が居たら助けてあげなさい」
俺がどうやって恩を返すべきか頭を悩ませていると……
「だったら、初仕事の報酬で俺達と飯でも食おう。
案内した奴が死んじまったら目覚めが悪い無事に帰って来いよ。」
――――と二人とも俺を訳アリだと思って気を使ってくれる。
「ではお言葉に甘えさせて頂きます。」
俺はペコリと頭を下げて礼を言いい、二人が見守る中冒険者ギルドの前に歩いていく――――
冒険者ギルド――外観は重厚感溢れる煉瓦造りの三階建てで、中に入り先ず目に入るのは、いずれも年若く見目麗しい受付嬢らしき女性達が、丈夫そうな広めな造りのカウンターで冒険者の対応をしている。受付カウンターが目に入る。
一階部分は広く、依頼の受付と飲食を提供するレストランを兼ねているようで、昼間だというのにもう酒を飲んでいる者もいる。
まぁ古代ローマでは市民階級(現在で言えば会社経営者など資産を持っている富裕層)は、午前に仕事を終えていたと言う。
それに言い方は悪いが、冒険者は自分で仕事を決めて働く個人事業主やフリーターのような存在だ。個人の自由と言えばそれまでだ。
彼ら……いや、俺達がかけているのは自分の命なんだから……
学園の制服を着た俺は目立つようで、ギルド内の視線がこちらに向けられる。その視線は俺の体格や身体、得物である太刀を見てどの程度の実力があるのか? と値踏みしているのだろう。
まぁ彼らからしたら商売敵になる相手かもしれないし、学園の生徒は貴族かその庇護民でしかない。余計な面倒ごとは避けたいのだろう……
カウンター前の列に並び、俺の番が回ってきた。
「こんにちは! 本日はどのような御用件でしょうか?」
茶髪で笑顔の素敵な女性が、笑顔で冒険者たちの相手をしている。
冒険者ギルドの受付に求められる事は、見た目か技能である。
対応してくれるスタッフの見た目がよければ、男女共に冒険者はやる気を出すし、例えば人を見る目があったり元冒険者であればアドバイスを与え、より高難易度のクエストに挑戦する事ができる人材を育てることが出来る。
――――簡単に言えばギルドの顔である。
「冒険者の登録をしたいのですが……どうすればいいですか?」
「冒険者の新規ご登録ですね。かしこまりました。登録には銀貨5枚を戴いております。分割でお支払いも出来ますがどうされますか?」
「どうぞ」
俺は財布に入っていた銀貨を五枚渡す。
「確かに……それでは、こちらの用紙にご記入をお願いします。
代筆は必要ですか?」
「不要です」
「かしこまりました。お名前、年齢、得意武器をお書きください……」
ここは本名を書くわけにはいかないな……英語風の名前がいいかな? ジョンは縁起が悪いから、100年戦争の英雄エドワード黒太子から名前を頂いて……エドワード・アレクサンダーとしよう。年齢は15歳。得意武器は刀などと、まぁこんな所か。
「こちらが登録証明のカードになります。ご依頼を受けていきますか?」
「はい。先ずは手ごろなのをお願いします」
机の上の紙をペラペラとめくり、幾つかの依頼書を見せてくれる。
「そうですねぇ~この辺なんていかがでしょうか?」
そう言って差し出されたのは薬草の採集依頼だった。
「薬草の採集はどうしても歩き回るので、体力や注意力を鍛える事と地理を理解する事が出来るのでおすすめです」
確かに土地勘があるのとないのとでは大違いだ。
「ではそれとゴブリンなどの討伐も受けたいんですが……」
「かまいませんよ。しかし、常設依頼以外の依頼を失敗しますと違約金が発生するので注意してください。
また依頼の中にはギルドが認めた冒険者以外が、受けられないものもあります。先ずは地力を付けてください。同じ等級の1クエストを10回成功すると次のランクへ昇格できますので、くれぐれも一つ上のランクの依頼をを受けようなんて、無茶だけはしないように……」
そう言って渡してくれたのは、鎧狼の討伐依頼だった。
「これは常設依頼ですから失敗扱いにはなりません。鎧狼はパックと呼ばれる平均4~8頭の群れで行動しているの事が多いので無理だけはしないで下さい」
「分かりました。では行ってきます」
俺は冒険者ギルドを後にして薬草が生えていると言う森へ向かった。
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