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時価???

5-2

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「……」
「ジスラン……?」
「その……実は……」

 ジスランは気まずそうに視線を逸らした。心なしか小さくなっている。アオイは構わずジスランに詰め寄った。

「実は?」
「アオイのことはもう抱いていて……」

 ジスランは「契約の時にどうしても必要で」と蚊の鳴くような小さな声で続けた。
 アオイはジスランの胸の上で叫んだ。

「この腰の鈍痛そのせいか!!」

 ジスランはとうとう顔ごとそっぽを向いてしまった。

「僕初めてだったんだけど!」
「は?!」

 ジスランの驚いたような声。男は震える声でアオイに尋ねた。

「ほ、ほんとですか、それ」
「本当」
「嘘でしょう?」
「こんなのことで嘘ついてどうするのさ」
「それも、そうなんですが……」

 ジスランの視線が泳ぐ。アオイは「だって」と口を尖らせた。

「やっぱ抱くなら処女だろってって言ってたし」
「誰が?」

 ジスランの地を這うような低い声に、アオイはびくりと肩を揺らした。

「いや……その……昔の友達?」

 友達だと思っていたのは僕だけだったみたいだけど。ふっと視線を遠くにやったアオイを見て、ジスランはそれ以上何も言わなかった。アオイはパッと笑顔を作ると、ジスランの太腿に手を添えた。男の睫毛が僅かに震える。

「それで、抱くのか、抱かないのかだけど」
「それは……」

 言い淀むジスランを、アオイはじっと見つめた。ややあって、ジスランが諦めたように短く息を吐く。

「アオイは怖くない?」
「怖くなんか……」

 アオイはそこで口をつぐみ、目を伏せた。

「……いや、ちょっと怖いかも」

 どうやらもう抱かれているらしいが記憶はないし、未知のものは普通に怖い。取り繕える気は全くしないし。

「なら」

 ジスランの言葉を制するように、アオイは顔を上げた。ジスランが大きく目を見開く。

「でも、怖くてもいいからしたいんだよ」




「ふっ、ぁ、んぅ……! ッ……! ……ッッ!!!」

 押し倒していたのはアオイだったはずなのに、あっという間にマウントを取られたかと思えばそれから数分、もしかしたら数十分、ずっとナカを解されている。

「アオイ、声我慢しないで」
「でもっ……そんっあアッ! むり……っ!」

 いやいやと首を振り、手の甲を噛んで声を抑えようとするアオイを叱るように、ジスランがぐちゅぅ、と前立腺を潰した。強い快感にパチパチと目の前に星が飛ぶ。

「あああ゛ッ! だめっ、それ、きちゃっ…~~~ッッ! 」

 声もなく極めるアオイを見て、ジスランが愛おしそうに目を細めた。

「2回目だからそんなにキツくないでしょう?」
「キツくって……俺はっ……んあ゛ッ、はじめてなんだけど?!」
「気持ちいい? アオイ」
「きもちっ…ッ、あ゛あぁっ! ひっうあ、あんっ」

 ぐちゅぐちゅと執拗に前立腺を捏ね回され、アオイはただ喘ぐことしかできなかった。ジスランは口元に微笑を浮かべ、愛おしそうな目でアオイを見ているのに、その優しげな顔に反して指先は容赦なくアオイを追い詰めていく。

「うあ、んッ、あっ、あんっひッあ゛ああァッなでないで、ジスランッ、それ、だめっ、~~~~ッ゛!」
「アオイは潰す方が好き?」
「ちがっ、ぉ゛ッ、ああぁ゛ッ!」
「ふふ、可愛いね」
「あ、あ~~~~ッッ゛!!」

 強烈な快感に、アオイは体を弓形にしならせた。とっくの昔に性器からは水のような液体しか出ていない。ジスランが戯れに性器の先を擽って、アオイは悲鳴のような嬌声を上げた。

「もう何も出ませんね」
「ジスランの、せいだろ……っ!」

 肩で息をしながらジスランを睨みつけると、男は嬉しそうに「私のせいです」と頷いた。

「ふふ、真っ赤」

 そう言って、ジスランはアオイの鼻の頭にキスを落とした。

「んっ……」

 男の唇が、指が、触れるたびに泣きたくなるほど幸せな気持ちになる。アオイは潤んだ視界の中、ジスランの頬を掴み唇を合わせた。ぶつかるように舌を入れても、男はすぐに応えてくれる。キスを仕掛けたのはアオイのはずなのに、いつの間にか後頭部を抑えられ、厚みのある体が覆い被さっていた。ジスランの舌がまるで意思を持った生き物のようにアオイの口内を好き勝手蹂躙する。じゅう、と舌を吸われた時、パチンッと火花が散って、アオイの内腿が痙攣した。

「ぁっ、は、ん、んうぅ、ン~~~ッ!!」

 そっとジスランの体が離れていき、アオイはどさりとシーツに倒れ込んだ。

「……ン、今イきましたか?」
「はあっ……わか、わかんない……」

 ジスランの腕に頬を寄せると、宥めるように頬を、背中を撫でられる。アオイは気持ちよさそうに目を細めると、とろんと蕩けきった瞳でジスランを見上げた。

「ジスラン、挿れないの?」
「ッ……挿れていいんですか」

 経験の浅いアオイでも我慢に我慢を重ねていることが分かる掠れた声に、アオイは微笑を浮かべた。

「いいよ。僕だってまだ足りないし。でも服、脱いで」

 そう言って、アオイはジスランの着ているシャツを引っ張った。男の喉仏がゆっくりと上下する。ジスランはアオイから離れると些か乱雑な動作で服を脱いだ。
 男の裸体は美しかった。彫刻のようなそれに目を奪われていると、ある一点、脇腹にある違和感にアオイは眉を顰めた。

「ジスラン、それ……そこ、どうしたの?」

 右の脇腹、背中との境界にそれはあった。まるで火傷した後にできるピンク色の皮膚のような、皮が剥がれその下の肉が剥き出しになっているような。手のひら大のそれは目を背けたくなるほど痛々しい。アオイの視線の先に気づいたジスランはなんでもないように「ああ」と小さく頷いた。

「鱗を剥がしたとこですね」
「?!」

 アオイはギョッと目を見開いた。

「えっ……えっ?!」
「竜人ですから、私」
「いや知ってるけど!」

 そんなまさか!
 アオイは恐る恐る、小さな声でジスランに尋ねた。

「僕にくれたやつ……?」
「はい」

 アオイは絶句した。同時に、深い後悔に襲われる。考えてみれば当たり前である。竜人の鱗は、ジスランの体の一部なのだ。

「痛くなかったの……?」
「うん? さあ、あまり覚えてませんね」

 ジスランはどうでもよさそうに傷を一瞥すると、「それより」と熱のこもった目でアオイを見た。つう……と男の美しい指先が首筋を辿る。

「ん、ジスラン、待って」

 アオイはそう言ってジスランの手を押しのけ起き上がると、おもむろにその傷跡に唇を寄せた。

「ッ! アオイっ、こらっ、君……ッ!」

 剥き出しの肉に舌を這わせ、甘く歯を立てると男の腹筋が痙攣する。顔を上げたアオイは、傷跡を指先で撫でながら小さく首を傾げた。

「ジスラン、僕がもっと欲しいって言ったらどうするつもりだったんだよ」
「もちろん剥がしますけど。今からでも。ああでも、アオイを血塗れにするのは嫌だな」
「やっぱり痛いんじゃん!」

 そう言いながら、アオイはジスランの首に腕を回し、膝の腕に乗った。男の肩口に顔を埋めながら「もう2度としないで」と呟く。

「でも、嬉しかったんでしょう?」
「…………」
「甘えるアオイも可愛いけど、今抱きついてきたのは顔を隠すためでは?」
「…………」

 ジスランの言う通りだった。アオイは抗議するように頭をぐりぐりと押し付けた。アオイの頭を撫でながら、ジスランはくすくすと笑った。

「別に、私は怒ってませんよ」
「……じゃあ、引いた?」
「いいえ」

 ジスランの声は穏やかだった。

「君がこんなもので安心するなら、いくらでも欲しがっていいんですよ」

 ああきっと、いつもの優しい顔をしているんだろうなと、そう思った。鼻の奥がつんとして、視界がぼやける。額をジスランの首筋に押し付けながら腕に爪を立てると、男はあやすようにアオイの背中を撫でた。

「今日の君は泣き虫だね」
「ジスランのせいじゃん……!」
「それより、そろそろ辛いので挿れてもいい?」
「……これだから男ってのはさあ!」

 アオイは顔を上げジスランを睨みつけた。生殺しの辛さは分かるから文句も言いにくいのがまたちょっとムカつく。尻の間にあるジスランのソレが主張しているのは感じていたし。

「ふふ、やっと顔を上げてくれた」

 ジスランはそう言ってアオイの目尻を拭った。アオイの綺麗な顔は今、涙で濡れて真っ赤になっている。アオイはパクパクと口を開閉させた。ああっくそはめられた!

「う……待って、ジスラン、見ないで」
「どうして? どんな顔でもアオイは綺麗ですよ」

 咄嗟に顔を隠そうとすると、それより先に手を取られ、顔中にキスが落とされる。手首を掴んでいた手はいつの間にか指同士が絡んでおり、そっと押し倒された。

「アオイ、いい?」

 ジスランの熱っぽい声に、アオイは潔く負けを認めた。求めているのはアオイも同じだ。目を伏せ、小さく頷く。

「……ん、いいよ」

 はやく、と言うよりも早く、ずぷぷ……とゆっくり長大なそれが侵入してくる。

「あああ……っ!あぅ…ッあっ…ん、ん゛ぅう゛っ!」

 男の先端が優しく前立腺を押し潰し、きゅうぅ、と内壁が収縮した。パチパチと星屑が舞っている。ぐちゅんっと最奥を突かれ背中が弓なりにしなった。

「あ、う、んッあ、あ、あああッ!! ふか、あ゛ぁッふかいィッ……! うあ、ぁああっ」
「んっ……そういえば、さっきはここまでしなかったな、と」
「だから、ぼくっ初心者……っひッあ゛ああァッ! あ、あ、……っ!」

 とちゅんっ、と先端が最奥を潰す。ゆさゆさとナカを揺すられ、責め立てられ、視界が真っ白になった。

「アオイ、アオイ」

 ジスランの余裕のない声に、堪らない気持ちになる。

「あっあ゛ぁあッ!お゛……ッん! あぅ、あ」
「アオイ」

 耳元で名を呼ばれる度に内壁がきゅんと締まる。ジスランは堪えるように唇を噛み締めると、ゆっくりと息を吐いた。

「アオイ、かわいい」

 男の口が開き、かぷ、と耳を食まれる。そのまま舌先で擽られれば背筋をぞくぞくしたものが駆け上がった。
 気持ちいい。そして、それ以上に幸せだった。

「ん、あ、あ、じすらん、ジスラン」
「なあに、どうしたの」
「ぼく、僕、ジスランが好き」

 男の動きがピタリと止まる。

「だから、ずっとそばに居て」

 悪魔の瞳も天使の羽も、妖精の鱗粉も竜人の鱗だって要らない。ジスランがいればそれだけで満たされる。
 もう、寂しいとテレビの前で泣く子どもは居ないのだ。

「私もですよ、アオイ。愛してます」

 この先もずっと。ジスランはとびきり綺麗な顔で笑った。

「でも、こういう時に男を煽るとどうなるかくらい考えましょうね」
「えっ、ちょ、まっあっ、ん、あっあ゛ッ! いく、あぅ……ッイっちゃうからっ……! っぁああ!」
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