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第2章

第15話 ルーファス暗殺計画

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ーーーポイズンファング傭兵団の主城ザルツブルク

「キリオス、その後、斥候部隊からの情報はどうなっている?」

黒いレザーアーマーに身を包んだキリオスは、豪華絢爛に装飾で飾られたソファーに腰を下ろした。

「はっ! ルーファスは冒険者ギルドで部下たちの訓練を行ったあと、イシュタル公爵令嬢イングリット・イシュタルのサロンに参加しました。今からウォルドーフ公爵の屋敷に行くようです。ライダー様、奴は次々に大物と関係を持ちつつあるようです。何か手を打たないと大変なことになるかと……」

「イシュタル公爵令嬢にウォルドーフ公爵だと! そんな大物を味方につけているのか! ルーファスの野郎!」

『ガチャーン!』

ライダーは苛立ち、手に持っていたコップを壁に叩きつけた。コップは砕け散り周囲に散乱した。怒りが一瞬で沸点まで達したが、高レベルの上級職サムライであるライダーは、すぐに怒りのレジストに成功し、平静になる。そして、眉間に深いしわを寄せると、両腕を組み少し考え込んだ。

前回、オーディン傭兵団では要となっているニコルを狙ったが、冒険者セシルに邪魔をされ一瞬でファンザを肉塊にされた。ファンザは上級職ではないが決して弱いということはなく、死の報告を聞いたときはすぐには信じられない事であった。それにポイズンファング傭兵団にとってファンザという駒を失ったのは痛手である。

ファンザはポイズンファング傭兵団団長、ライダーの右腕キリオスの部下であり、ポイズンファング傭兵団の金庫番だった。ステュディオス王国では禁止されている奴隷の売買や武器の開発、麻薬の精製なども他国の闇組織と連携をしていたのだ。ファンザはライダーに納める上納金が配下で最も多く、稼ぎ頭でもあったのだった。
ファンザが死んだ事による傭兵団の損失を考えていると、また怒りが沸点を超え、ギリギリと歯ぎしりをしたライダーだった。だが突然、良いアイディアを思いついた。

「チョッチョッチョッチョッ! ウォルドーフ卿の所なら、帰りに必ずあそこを通過するだろう。
キリオス! ルーファスに奇襲をかけるぞ! 上級職はもちろん、下級職もレベル15以上の部下を集めておけ! ポイズンファング傭兵団一世一代の大勝負をかけるぞ。高レベルの部下だけ急いで集めろ!」

「はっ! ライダー様、承知いたしました! ルーファスを倒し、四大将軍におなりください」



ーーーイシュタル公爵邸

屋敷に戻ると、ちょうどルーファスたちはサロンが終わり、出てくるところだった。オレを視認すると、仲間たちが駆け寄ってきた。

「店長……お疲れさまです」

「セシル、監視者はどうなったの? 捕まえられたの? 誰の指示か分かったかしら?」

「もちろん尋問した。吐かなかったが、その者をいろいろ考察して分かった。フェロニア軍の関係者だった」

「……そうか。正規軍もポイズンファング傭兵団との戦いを警戒しているということだ」

「……………………………………」

「それなら問題ないわね。両傭兵団で何かあった時に、すぐに対応出来るように動く手はずなのでしょうね。次も上級貴族との会合に行くわよ。一緒に来て」

「分かった」

「承知~」

馬車に乗り込むと、貴族区域をさらに中央区方面に向かう。この辺りは一軒一軒が一般人が住む区域とは比べ物にならないほどの大きな屋敷となっている。庭には女神が筒を持ち、その筒から水が流れ出る像が備えてある噴水がある豪華絢爛な屋敷も多々ある。一般人や商人、下級貴族の住む家とはまるで違う。このラティアリア大陸でも、地球でも、権力者と金持ちのすることは同じようだ。無駄に豪華絢爛となっている。

「見てセシル、ホリー。女神様の持つ皿が噴水になっているよ! 高そ~」

「素敵な……噴水ね」

「芸術的にも素晴らしい出来だよな。製作者と話をしてみたいな」

イシュタル公爵邸と同様に、大きな屋敷の中に馬車は入っていく。入口で警備をしている二人に馬車は止められて、御者の男に色々と質問しているが、馬車の持ち主がルーファスと分かると、すんなりと通してくれた。やはりオーディン傭兵団団長はここでも顔が利くようだ。お屋敷の鉄扉の前にオレたちは降りると、執事が立っていて迎えてくれる。

「ルーファス様、本日はお越しいただきありがとうございます。旦那様が待っておりますので、こちらへどうぞ」

「うむ、ブルディ殿、案内を頼む」

執事ブルディが応接室に通し、豪華なソファーにルーファスが1人座り、オレたちはその後ろで立って待っている。ほどなくして執事ブルディと髭を顎下まで生やした中年男性と若い女の子が入ってきた。

「ルーファス様!」

若い女の子がルーファスに会えた嬉しさ一杯に抱きついた。それをルーファスは優しく微笑みながら、されるがままにしている。女の子の目はスーパーアイドルにでも会ったようにキラキラと輝いている。

「これはミリネラ嬢、ご機嫌よう」

「こらこらミリネラ、いきなり抱きつくなどルーファス君が困っているだろう。そのくらいにしておきなさい」

「ちぇっ、は~い」

ミリネラは一瞬ムッとして頬がふくれるが、ルーファスから離れ中年男性が座っている隣のソファーにチョコンと腰かけた。

「ん? ルーファス君、今日の護衛はガディ君がいないのだね」

「ええ、ウォルドーフ公爵閣下。今日はガディの代わりに粉砕のミョルニルという冒険者のパーティーに護衛を頼んでおります。まだ結成したばかりのパーティーなのですが、その強さは新人としては抜きん出ています」

「ほぉ、ルーファス君がそのように褒めることは珍しいことだ。武力にそれほどの信頼があるというわけか」

「はい、彼らには例の件も手伝って貰おうかと考えています。ウォルドーフ公爵閣下の許しがあれば、彼らにもすべてを話したいのですが」

ルーファスが例の件と言うと、ウォルドーフの眉間に深いしわが刻まれる。しばらくウォルドーフは沈黙していたが、険しい顔で頷いた。

「セシル、ウォルドーフ公爵婦人は数日前に急に倒れられた。その原因は医者に見せても全く分からなかったので、エロース神殿の司教殿に調べてもらったところ、呪術による呪いの類いだということが分かった」

呪いと聞いて、先程まで明るかったミリネラの表情がガラリと変わり、憂鬱な影が漂った。ウォルドーフもさらに眉間のしわが深くなる。妻の不調の原因が呪いをかけられたと分かったので心を痛めていて辛そうだ。

「高レベルの修道士が《リムーブカース/解呪》で呪いの解呪を試みたが、逆に呪いの精神攻撃をくらいレジストに失敗して死んでしまった。エロース神殿の者が出した結論が、パルミラ教皇国の聖女アリシア・クレスウェル、最高位クラスの神聖魔法の使い手でないと呪いの解呪が出来ないということだった」

「それではパルミラ教皇国、神都ベネベントまで行くしかないのか? 聖女が他国まで来るわけがないから、神都まで行くとなると馬車で片道一ヶ月以上はかかるな」

「奥方の呪いは高熱が出られるものなのだ。あまりお体を動かすとお命に関わるかもしれないので、とても神都ベネベントにまでお連れできない。だが、エロース神殿の書庫で一つの希望という光明がさしたのだ。地下迷宮深部にある浄化の宝珠をセシルは知っているか?」

「浄化の宝珠っていうと、確か神聖魔法の威力を高める効果があるっていう話を聞いたことがある」

VRMMOモンスターバスターで浄化の宝珠とは、敵の攻撃を受けてHPが減ったときに使うとHPが回復し、さらに自然回復力が増すという、長期戦になる対ボス戦では便利なものだ。また、モンスターから呪い攻撃を受け、レジストに失敗した場合にも用途はある。戦闘が終わっても全てのステータスが下がったままなで、それを解呪するときにもプレイヤーは使用していた。再ログインしても呪いの状態異常は解けないという厄介な代物だ。

「そうだ。浄化の宝珠は解呪の効果があるらしく、ウォルドーフ公爵婦人の呪いを解くことができるかもしれないとエロース神殿の司教殿がおっしゃったのだ。だが問題が1つある。浄化の宝珠は脅威度ランクBのモンスターが出る地下迷宮深部6階層まで行く必要がある」

地下迷宮深部6階層という話を聞いて、ここにいる者の顔が緊張で強張り青ざめる。通常、脅威度ランクBというと、最大レベル50のモンスターまでいる可能性があるのだ。しかもそれが最大10体まで一度に襲いかかってくる。

「6階層というと、レベル30以上の上級職6人が束になって突破できるかどうかという代物だな。オーディン傭兵団はガディとルーファスのみか」

「そうだ。このフェロニア市でレベル30以上の上級職というと三大将軍の団長クラスを集めなければ難しい。だが集めることは不可能だろう」

とても生きて帰れる保証はない。というより向かったパーティーは、ほぼ100%生きて戻れない。オーディン傭兵団の猛者でも1戦なら問題ないだろうが、玄室に入る度にランクBモンスターが出現するのでは突破不可能だろう。ステュディオス王国の剣闘士王クラウス・オルドリッジがいれば問題ないのだろうが、たかだか一個人のために国王が危険にさらすことはしない。しかも、今はその国王も、呪いで瀕死の状態だ。

「しかも、地下迷宮深部6階は巨人族の宝庫ということが、突破をさらに厄介なものにしている。昔、オルドリッジ王が若かりし頃、ステュディオス王国最強パーティーを結成して地下迷宮深部に潜った。だが世界最強のオルドリッジ王以外のメンバー5人には6階を突破する力はなく、国王陛下がお1人で突破されたのだ」

「つまりオルドリッジ王以外では、最高到達は地下迷宮5階ということか」

「そうだ。だから浄化の宝珠を得るためオーディン傭兵団の最強パーティーを組んだのだが、私のところはレベル3神聖魔法《ハイリカバリー/上位回復魔法》を使える団員がいないので困っていた。エロース神殿にもハイレベルのヒーラーの同行を相談したが、危険度が高すぎるためお断りされてしまった。
だから、《ハイリカバリー/上位回復魔法》を使えるセシルの力が必要だ。地図が制作されていない広大な地下迷宮6階層まで行くのだから、何日かかるか見当がつかない。セシル、ウォルドーフ公爵婦人を救う手伝いをしてくれないだろうか?」

ウォルドーフにルーファスは目配せを送っている。ウォルドーフはルーファスの意図にすぐに気がついて、机から羊皮紙とペンを出して契約書を書いた。

「このデュアル・ウォルドーフの名にかけて成功、失敗に関わらず、冒険者パーティー粉砕のミョルニルに一人白金貨ま10枚を報酬とすることを誓う。これで頼めるだろうか?」

「妾からもお願いする! お母様を助けてください! 優しく、聡明なお母様なの。本当よ」

公爵令嬢ミリネラも目に涙を浮かべて必死に頼み込んでくる。ウォルドーフは王族である公爵という身分であるのにも関わらず、命令ではなく頼んできた。1人白金貨10枚ということは、日本円で1千万円か、依頼料高っ!

これからオレは魔龍討伐のため、寵愛持ちを探し、神液吸収させ育てなければならない。正直言って忙しいのだ。話を聞く前は公爵なんかに構っている暇はないので、断ろうと思っていた。だがこれは弱った。ウォルドーフは謙虚だし、ミリネラの母を助けたいという真に純粋な涙には、オレは滅法弱いのだ。

「セシル、どうするの? お母さん良い人みたいだし、オイラ助けてあげて欲しいな!」

オレは目でホリーにどうするか合図するとホリーも頷いた。ホリーは自身最大の目標である神器ミョルニルが、地下迷宮地下6階にあるという話なので行ってみたいのだろう。ならば約束ごとを一つ決めて、それが受け入れられれば付き合ってもいいな。

「地下迷宮深部探索の依頼は、6階層を探索中に神器ミョルニルを発見した場合、オレたちが無条件でいただく。それさえ受け入れるなら了承する」

「そのようなことならば問題ない。よし! これでウォルドーフ公爵婦人をお救いする算段がつきました。オーディン傭兵団の精鋭とセシルであれば、必ずや目的を達成できるでしょう。長く地下迷宮に籠もるので準備に時間がかかる。3日後に向かうとしよう」

ウォルドーフの屋敷を出て、帰りの馬車の中で詳細な打ち合わせをルーファスとしている。地下迷宮に潜るメンツは、ルーファス、ガディ、ニコル、ティナ、ホリー、オレの6人になりそうだ。パックは眷属扱いだからいても問題ないそうだ。もともとモンスターと戦う気も一切ないしな。

ティナが、ホリーはレベルが低くて危険だから、代わりに私を連れてって! と、しつこく食い下がり意見を主張していたが、オレが却下した。なぜならオレは大事なオナドールと一日たりとも別れるわけには行かないのだ。ぐふふふ♪

『ガララッ、ガララッ、ガララッ、ガララッ』

馬車はフェロニア市の有力者たちが住んでいるお屋敷が多い居住区を抜けると、大きな公園の真ん中を走る。

「それでは三日後、早朝に冒険者ギルド内に集合してから地下迷宮へと出発するとしよう」

「承知~。セシルはアイテムボックス持ちだから、荷物は当日までにお店に持ってきてくれれば全部預かるよ」

「マジなのそれ! セシルってムチャクチャな人ね。とんでもなく強いわ、劇レアスキルのアイテムボックス持ちとか、本当に反則よ」

「まあ、自覚はあるがーーオレの場合は生まれ持ったものだからな……ん?」

《探査マップ/神愛》に攻撃を仕掛けてくることを示す赤いマーカーが多数見えたので、マーカーの場所を確認する。どうやら今、走っている大きな公園を少し進んだ先にある、公園の中心を円上に囲むように兵を配置している。確実にオレたちを狙って待ち伏せをしているようで、弓矢を構えている者、突入部隊らしき剣や槍を装備して待ち伏せしている者と、敵の兵力がおよそ百人はいる。ウインドウに写る公園内は敵対している者で真っ赤に染まっているのであった。

「?? セシル、急に緊張した顔をしてどうしたの?」

「ああ、どうやらこの公園内には百人ほどの兵が隠れていて、全員が高レベルな上、フル装備をしているようだ。ルーファス狙いだろうな」

百人以上も兵がいると聞き、全員が石のように表情が強張り、険しい表情になる。

「ど、どうしようルーファス。こっちは戦えるのは5人いるけど、状況はかなり厳しいわね」

「…………………………………」

ルーファスはこの圧倒的に不利な状況をどう切り抜けられるか、思考を巡らせている。ティナとダグラスは眼光鋭くルーファスを見ている。もう時間がないので考えがまとまらず少々焦っているようだ。仕方ない。また助けてやろうかな、友達だからな。

「オレたち粉砕のミョルニルが飛び出して囮になるから、ルーファスたちは御者と4人で撤退するがいい。いいか、オレは馬車を出てすぐに光量重視のレベル1神聖魔法の《ホーリーライト/聖なる光》を上空に放つから、後ろを見ずに真っ直ぐ駆け抜けろ。間違っても光を見るなよ、しばらく何も見えなくなるからな」

オレがそう言うと、ルーファスは心中穏やかではないというようにオレを睨む。穏やかな超絶美青年が睨むとより険しさが増すようだ。正直怖い。

「私は仲間を犠牲にしてまで自分だけが助かろうなどという卑しい考えは持っていない! オーディン傭兵団の仲間みんなで生きて栄光をつかみ、得た栄華を分かち合いたい!」

ルーファスの仲間を命がけで守ろうとする言葉に、険しい表情をしていたダグラスとティナは一瞬にこりと微笑むが、すぐに険しい表情に戻った。

仲間と共に栄光を分かち合う、という考えを持っているルーファスはいいやつだな。きっとルーファスのこういう所にオーディン傭兵団員は引かれて付いてきているのだろう。決して顔が良いとか、強さというわけではないのだろう。

「そうよ! セシルが強いことは知っているわ。だけど100対3じゃ無理よ! 死にに行くようなものよ」

「……………………………………」

「心配をしてくれるのは嬉しい。だがはっきり言うが、お前たち3人がいないほうが、戦いやすいのだよ。魔法の威力で巻き込んでしまわないか気をつけながら戦うのは面倒くさい。そうだな……。今日の仕事のお礼にもう一度ティナを抱かせてくれ。お前の体は男好きのするムチムチした良い体で、陰部の締まりも良かったしな」

オレの突然の発言に顔が耳まで真っ赤になるティナ。男好きのする良い体つきをしていると言われて恥ずかしくなったようだ。ティナの体は出るところがでて、ウエストはキュッと締まっている。男が好きなことは間違いないのだ!

『ゴンッ』

思いっきりティナに頭を叩かれると真っ赤な顔でオレを睨む。

「もう! 仲間の前でそんなことをと言うのやめてよ! 恥ずかしいったら……」

「そうか、ティナの体は良かったか。はははははっ!」

「もう、ルーファスまで。だけどそう言われると悪い気はしないわ。セシルの夜伽の相手をすることは了解したわ」

和やかな雰囲気だったが、急にルーファスは真顔になると、オレの両肩に手を添え、とても爽やかな澄んだ笑顔を向ける。

「3人とも絶対に生きるんだぞ」

「もちろんだ。誰にものを言っている。脱出する方も危険に代わりはないから気をつけてな。あとでアジトに行くから酒でもおごれよ」

「オイラが保証するよ! セシルが負けるわけないよ。安心して撤退してね。万一のときはオイラの魔法があるしね!」

オレの横に座っているホリーがカタカタ震えているので、肩を引き寄せて密着させる。顔色が悪く、ただでさえ色白なホリーが白さが増している。よほどこれから起こることに恐怖を感じているのだろう。オレは強くホリーを引き寄せた。

《烈風剣》

「ヒィヒィ~ン!」

『ドシャッ』

すると突然、周囲を切り裂く風切り音が聞こえ、馬車を引いていた馬が血を吹き出し、倒れて馬車は停止した。

「チョッチョッチョ、ルーファス! その馬車にいることは分かっている。出てきやがれ!」

ライダーの挑発に乗り、ルーファスは立ち上がり御者台に出た。周囲を見渡して大声の主を見つけるとその男を睨みつける。

「……ライダーか、お前は何をしたか分かっているのか? フェロニア市東側の戦争開始の狼煙をあげたのだぞ」

「チョ~チョッチョッチョッチョッ! この状況でなに寝言をほざいてやがる! ルゥ~ファス、お前はもう終わりなんだよ! ポイズンファング傭兵団最高レベルの精鋭だけをここに集めた。逃げられると思うなよ! ガディを連れてこなかったのが敗因だな。東側はオレがしっかりと管理するから安心して死ね!」

ルーファスの後ろからオレたち5人も馬車から出て行く。それを見たライダーの横にいる男が前に出てくると、オレを殺意のこもった鋭い眼光で睨みつけた。

「団長! あいつです。ルーファスの横にいる妖精族が肩に座っている男がファンザを殺ったやつです。あいつだけはオレに殺らせてください!」

ポイズンファング傭兵団長ライダーはオレを虫でも見るような冷たい視線を送ってくると、右手の親指で自分の首を横方向に切る。

「団長、お任せいただきありがとうございます!」

「うむ、それではルーファス、サヨナラの時間だ、チョッチョッチョッ」

ポイズンファング傭兵団長ライダーは右手を上方にあげると、周囲を囲んでいた傭兵が一斉に弓を構えて矢をセットする。

「今だ! ルーファス行け!」

《ホーリーライト/聖なる光×10》

『カァッ!』

「「「ぐあぁぁぁああああああ!」」」

公園上空に光の強さに特化した光玉が現れ、太陽のように力強く輝いた。ルーファスを弓矢で射ようと集中して見ていた傭兵の目は、電気性眼炎のような症状を起こし両目を覆った。

その隙を突いて馬車を飛び出し、あっという間にルーファス、ティナ、ダグラス、御者の4人は公園を駆け抜け、市街地に消えていった。さすが戦場で数多くの武勲をあげ、フェロニア市でのしあがってきた傭兵団だ。撤退も素早いものだな。名将は撤退が上手いと言われている。ルーファスは良い将軍になりそうだ。

少し時間をおいてポイズンファング傭兵団長ライダーの目が回復すると、ルーファスたちがいないことを確認し、まだ公園内にいるオレたち3人を睨む。

「クソ! ルーファスを追え! まだ遠くに行っていないはずだ」

「「「へい! 団長!」」」

公園にはライダーの護衛に10名ほど残し、残りはルーファスを追撃に向かう。《探査マップ/神愛》では、ルーファスたちはすでに遠くまで逃走して、捕まえるのは無理だろうがな、わっはっはっ!

「お前がルーファスを逃すためにここにいてくれて嬉しいぜ。俺はお前が虫を潰すように殺した、ファンザの兄貴分のキリウスだ」

「ねえ、こいつらセシルに勝てるつもりでいるみたいなのが痛々しいね。前に迷宮でファンザっていうやつがどんな死に方をしたか見ているのにね!」

「馬鹿か妖精族のチビが。団長もいるのにお前が勝てるわけねえだろう」

キリウスは剣を抜き、薄ら笑いを浮かべながら近づいてくる。
しかし、突然、《探査マップ/神愛》に20前後の赤いマーカーが公園に急接近をしてくる。足で走る速さとスピードが違うので騎兵部隊だな。そして公園内に突入してきて、オレたちを見つけるとポイズンファング傭兵団との間に割って入ってきた。

「お前たち動くな! 街中で何をしている!」

隊長らしき者はさっそうと武装馬から降りると、周囲の者を剣を頭上にかざし威圧する。

「このアマ、今からコイツをいたぶろうとしてたんだよ! 邪魔するんじゃねぇ」

いたぶる楽しみの邪魔をされたキリウスは、怒り心頭だった。騎兵部隊の隊長を剣で斬ろうと近づき、振り上げた。

「おいキリウス待て、そいつは……」

『ガガガガガガガガガガッ』

「グハァアアアアアア!」

隊長らしき者は剣を振り上げたキリウスに、剣で10発の斬撃をくらわすと、キリウスは10メートルほど吹っ飛び、公園の木にぶつかり停止する。刀身を逆刃にしていたため、キリオスは命に別状はなかった。

「私は動くなと言ったはずだ。私はステュディオス王国フェレール軍元帥ケイト・フェレールだ!」

●名前:ケイト・フェレール
●年齢:612歳
●種族:エルフ
●所属:ステュディオス王国、フェレール軍元帥
●身長/体重:168/48
●髪型:金髪で腰まであるウェーブヘア
●瞳の色:青色
●スリーサイズ:76/45/78
●カップ/形:C/皿型
●経験:あり
●状態:平常
●ベースレベル:66
●職業:レベル36サムライ
●HP:2560
●MP:2570
●腕力:1280
●体力:1280
●敏捷:1264
●知力:1306
●魔力:1264
●器用度:1284
●スキル
暗黒魔法4、剣術4、弓術4、盾術3、槍術3、斧術3、棒術3、棍術4、生活魔法
●通り名
殲滅天使
●装備
ミスリル製のロングソード+5、ミスリル製のヘルム+5、ミスリル製のビキニアーマー+5、ミスリル製のガントレット+5、ミスリル製のロングブーツ+5、ミスリル製のマント+5

なんとフェロニア軍の元帥は女だった。しかも、耳が切れ長の耳をしているということはエルフだ。初エルフとはテンションあがるぜ! 伝説の通り、凄まじい超絶美女で顔の黄金率が見ただけでそれと分かる完璧さだ! 肌も真っ白で艶がありペロペロ舐めたくなる。ぐふふふ♪

まさにエルフ美女伝説は本当だった。メチャメチャな超絶美女だ。超絶美女というか、そういったものは遥かに超越した存在、神の域に達している神々しいレベルの美しさだ。言うなれば神話級の超絶美女だ。

これがエルフだというのか!!

ん? パックがオレの後ろに隠れている? どうしたのだろう? あれほどの神話級超絶美女を見たら、いつものパックならどうやって、快感を与えて喜んでもらおうかなウッヒッヒとか言ってもいいはずだ。ま、いいか。人には好みがあるしな。

「ライダー、これはどういうことだ? 通報があって来てみたら、フェロニア市の中で戦闘でもするつもりなのか?」

「いえいえ、これはフェレール元帥閣下。そんなことはありませんぜ。用はもう終わったんで引き上げるつもりですぜ。おい、行くぞ」

ポイズンファング傭兵団の者たちは、フェレールに斬り飛ばされて失神しているキリウスを担いで去っていく。逆刃とはいえ、しばらくは動けないだろう。

エルフのケイトはオレたちの方に近づいてきて、心配そうな顔をしている。軍人なのに意外に優しいのか?

「お前たちも巻き込まれたようで災難だったな。あれ? パック……パックじゃないか? パックなのか! 貴様ぁぁぁああああああああああああ! 貴様のせいで私たち姉妹がどのような酷い目に遭ったのか知っているだろう! おい、その3人を捕まえろ!」

「はっ! 閣下!」

オレたちは大人しく捕まって詰所に連れて行かれたのだが、その道中、パックは顔面蒼白、全身をガタガタ震わせているようだ。珍しいが、どういうことだろう?



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