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第3章

第6話 滅亡した国家エディルネの王女

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白熱したオークションも公爵令嬢メアリーに白金貨10,000枚という奴隷オークション史上最高額で購入されて終了した。興奮した貴族たちの大声援を浴びながら舞台から降りていく。すると後ろから、オークションのもう1つの目玉である奴隷についての説明が聞こえてくる。

「それでは今夜、最後の目玉商品についてお話します! 最後の商品は、なななななななななななんとぉ! 魔龍に滅ぼされた国、今は亡きエディルネ王国の王女ガブリエラ・グリマルディの登場です! 女狐が出てこいやぁあああああああああああああ!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

オークション会場全体から打ち上げ花火のように歓喜の声が上がった。それもそのはず、千年の歴史を誇る一国の王女が奴隷として登場したのだ。

「……な、何だと!! ボルティモアが、元イシュタル王家と汚い取引までし、血眼になって探しているエディルネ王国の王族にこんなところで会えるとはな」

「えええええ! まさか奴隷になっていたとは驚いたね~! さすがに王女だけあってキリッとして王族の風格があるね! それにしっとりした潤いのある白い肌を見てよ!」

エディルネ王国はラティアリア大陸最北の国家である。環境的な面では1年の殆どが曇りや雨、そして雪国ということだ。日照時間が非常に少ないために紫外線に当たりにくいので、自然に美白となる。湿度も高いので肌と髪に潤いが生まれる。要はエディルネ王国は自然環境のおかげで美人が多いというわけだ。

「そうだな。それに彼女の内側から発するオーラを見ろよ。超絶美女確定だ」

「そうだね! 聖女アリシア、聖騎士カミラ、神話級美女ケイトに4人目の超絶美女だね!」

奴隷として登場したガブリエラだったが、王女らしく威風堂々としている。全然奴隷らしくないが、服従の首輪が、細長く白い首にはめられていた。その首輪が彼女の身分が奴隷であることを証明している。
舞台の中央まで歩いて来ると、彼女はお客側を向かされた。するとガブリエラの美しい横顔と横から見たボディラインが見えた。

「えっ? ええっ! ちょっ! セシル見てよ、あのおっぱい!」

「なっ! なな、なんという大きさだ! あそこまでのおっぱいは日本でもラティアリア大陸でも見たことがない。ボンッ! と前方に主張していて全く垂れていないし、素晴らしい爆乳に出会ってしまった」

早速、《探査マップ/神愛》で彼女のステータスを見てみよう。あそこまでの爆乳だとGカップとかHカップとかあるのだろうか。見たことのないレベルなので想像がつかないな。

●名前:ガブリエラ・グリマルディ
●年齢:18歳
●種族:ヒューマン
●所属:ヴァルビリス帝国ガイエスブルグ市ガルシア奴隷商会奴隷
●身長/体重:172/55
●髪型:青髪スーパーロング
●瞳の色:金色
●スリーサイズ:129/62/88
●カップ/形:M/半球型
●経験:なし
●性格:N
●状態:恥辱
●職業:サムライ
●レベル:18
●スキル
暗黒魔法2、戦闘技3、剣術4、生活魔法
●エキストラスキル
《プレジュディス/予知夢》

ガブリエラは青髪スーパーロングのむっちり系の超絶美女だ。なんと! 彼女はMカップの魔乳だった。オレは舞台の袖から見ている。つまり横からガブリエラを見ると、とても違和感を感じる。なぜなら胸のところが前方にボンッと丸く突き出していて、服の中にドッジボールで使うボールでも入れているかのように見えるからだ。

ちなみに個人的見解が一部入る話だが、胸の大きさについてまとめてみた。
無乳→AAAカップ。乳首のみ。
微乳→AAカップ
貧乳→Aカップ、Bカップ
普通→Cカップ、Dカップ
巨乳→Eカップ、Fカップ、Gカップ
爆乳→Hカップ、Iカップ
超乳→Jカップ、Kカップ、Lカップ
魔乳→Mカップ以上
といえると考える。寄せてあげるブラジャーを使用していなければ、谷間が発生するのは実はDカップからである。

「パパパ、パック! あの魔法を頼む! ほらっ、あれだよ。そうそう《パースパクティブ/透視》を頼む! 今すぐにだ……ん?」

『ヴォガァァァァァーーーン! ヴォガァァァァァーーーン!』

突然、会場内の2ケ所で爆発が起きた。奴隷を立たせる舞台から見て左右の入り口付近であった。そこで警備をしていた兵士が吹っ飛び、手足がちぎれて壁に叩きつけられている。

「「「きゃああああああああああああああああ!」」」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」

「爆発だと! 何が起きたんだ!」

「何何? オイラも訳がわからないよ!」

突然起きた爆発音に驚き、悲鳴が各所にあがる。この会場にいるのは貴族とその仕える執事、または貴族が連れてきたメイドだ。武器を携帯してはいないし、そもそも戦闘のできるものは、広い会場内で24名の警備兵がいるだけでほとんどいなかった。ただ、左右の警備をしていた4名は吹っ飛んでしまったから残りは20名となっている。
唯一爆発のなかった後方にある出入り口に、爆発から逃げようとする貴族たちがパニック状態に陥り我先へと殺到した。

「あっ! 見慣れない服を着た兵士が突入してくるよ! どうしよセシル!」

爆発が起きた混乱の最中、10人の武装した兵が爆発のあった左右の扉から5人ずつ乱入してきた。

「侵入者だ! 撃退せよ!」

「「「おおっ!」」」

『ギャリーン! ギィーン! ギャリーン! ギィーン!』

会場の警備をしていた隊長と思われる者が叫び、生き残った警備兵20人と侵入者たちの戦いがはじまった。乱闘になったが、その中を上手く切り抜け1人の侵入者がエディルネ王国の王女ガブリエラに近づいて来た。

「ガブリエラ! 無事か!」

「ああっ! 兄上ぇ~! 助けに来てくれたのじゃな! 妾は……妾は……ううううっ」

「よくぞ! よくぞ無事でいてくれた。あああああっ!」

緊張で張り詰めていた糸が切れたのか、ガブリエラは兄に抱きつき号泣した。兄である王子もガブリエラを強く抱きしめ泣いている。魔龍の侵攻から逃げる際に、混乱の最中、妹と生き別れになったのだろうな。ボルティモアもそのように地下迷宮で言っていた。
オレは2人のもとにスタスタ歩いて行くと、王子が接近に気がついて警戒し、剣の切っ先をオレに向けた。

「誰だ! それ以上近づくな! 斬るぞ!」

それに構わずに近づくと、オレは2人に話しかけた。

「安心しろ、オレはお前たちの味方だ。エディルネ王国の将軍ボルティモアが、ステュディオス王国首都フェロニアのエロース神殿にてエディルネ再興のために力をつけている。奴から王族を見つけることができたら、伝言して欲しいと頼まれていたのだ」

「「「!?」」」

「ボルティモア将軍がフェロニア市にいるのか?」

唐突な話に2人は相当驚いたようだ。

「そうだ。ボルティモアはパルミラ教皇国に降臨した神セシルの協力も得られるようになった。フェロニア市にあるエロース神殿に命がけで行くがいい。お前たちの国が再興するための準備をしている」

「そ、そなたは何者じゃ」

オレはそれには答えず王女に近づいた。そして手をかざす。

「な、何をする気じゃ」

「奴隷から開放してやろう。王女のような高貴な者が、奴隷の首輪などされて辛かったろうな」

《アンロック/解錠》

『カチャッ』

《クリエイトシリコン/創造×7》×4

氷のロングソード+7、シリコン製のティアラ+7、シリコン製のドレスアーマー+7/上下セット、シリコン製のハイヒール+7の5点をクリエイトシリコンで創造し、ガブリエラに渡した。ドレスアーマーなら、今、着ている服の上からでも装備できる。

「今使った魔法は……こ、これは! これほどの装備品を妾にくださるのか? どれもアーティファクト級ではないか」

「そうだ。ボルティモアからエディルネの王族を見つけたら、助けて欲しいと頼まれていたのだ。ほらっ、時間がないからすぐに行きなさい。おっと、もう1つ支援してやろう」

~~~戦闘開始

警備兵×20(20)

オレが警備兵に奇襲をかけ、成功した。そこでエディルネ王国の者たちを逃がすために魔法の詠唱をはじめる。今回は殺すこともないので、軽く動きを止めればそれでいいだろう。

《パラライズ/麻痺》×20

『フォン』

「「「ぎっ!」」」

「なっ、なんれひゅうにまひっはのら」

「おおっ! 一瞬で20人を戦闘不能状態にするとは、相当な強者ですな」

会場警備兵20人がレジストに失敗し、魔法で麻痺状態となり一斉に倒れた。エディルネ兵たちは痺れて動けなくなった警備兵を放置し、右側の扉に集結した。

~~~戦闘終了

「妾たちをお救いくださり、ありがとうございます。そなたのお名前を教えて下さいませんか」

汚れのない真っ直ぐな目で、ガブリエラはオレの名を聞いてきた。うわっ、カミラの時もそうだったが、その純粋な目におじさん弱いのよ。

「セシルだ。さぁ、早く行きなさい。兵が来るまで時間が少ないがうまく脱出するのだぞ」

「かたじけない! この御恩は必ず返す! 行くぞガブリエラ」

王族の2人は護衛兵たちに守られ、すぐに右側の出口に向かって行った。兄に手を引かれて走りながらも、ガブリエラは振り返って扉から出ていくまでオレの顔をずっと見ていた。

「ガブリエラのあの顔を見てよ! 目がハートになっているよ。あの目は完全にセシルに惚れたよね! また会えたら、あの魔乳をどうにか出来るかもよ。オイラ楽しみ~、うひひひっ♪」

「ぐふふふ♪ Mカップだから魔乳か。パックの言う通りだ。魔乳を下から見るとどんな光景があるのかを見てみたい……しかし、オレらいつもこうだよな♪」

「仕方ないよ! あんな魔乳を見たら誰だってモミモミしたくなるのはね。爆乳の乳房は柔らかいと決まっているから、オイラもあの谷間に挟まれてパフパフされてみたいよ! 気持ち良さそうだね、うひひひひひひっ」

「それもそうだな。ぐふふふふふふ♪ だが、パックが魔乳に挟まれたら、圧力で潰されちゃうのではないか?」

「オイラは……オイラは……あの爆乳に挟まれて死ぬなら本望だい!!」

生きることよりも爆乳による圧迫死を選ぶとは、さすが変態妖精パックだ。

「以前におっぱい専門の研究家と飲み屋で「最も柔らかいおっぱいとは!」というテーマで論じた事がある。彼曰く、20代後半で出産をして子供にちゅ~ちゅ~乳首を吸われたおっぱいが一番マシュマロみたいで柔らかいと断言していた」

「……ダラリ」

パックの目は妄想で虚ろになり、口からはよだれがタラリと落ちている。揉んでみたい! と分かりやすく額に書いてある。

「おい! パックよだれよだれ!」

「オイラ……そのおっぱい揉んでみたい。揉んでみたい揉んでみたい揉んでみたい揉んでみたぁ~い!」

「いずれチャンスがあったら存分に揉ませてやるよ! オレが孕ませた女たちが出産したあとのおっぱいをな」

「さすがセシル! オイラ楽しみに待っているよ! 絶対の絶対だよ!」

その後、奴隷オークション会場は侵入者の件で混乱していたので、買った奴隷の引き渡しは明日ということになった。再び、だだっ広い大広間に奴隷は全員が移される。広間で寝ながら《探査マップ/神愛》を使い、エディルネ兵たちを追っていたが、無事に市街地に紛れ込むことに成功したのを確認した。




ーーーステュディオス王国フェロニア市、フェレール軍駐屯地

『ブォン、ブォン、ブォン、ブォン、ブォン』

「はぁはぁはぁはぁ、ありがとう……ございました」

「はい、ホリーちゃんの今日の朝練は終了ね。この後、用事があるのでしょう?」

「はい……アマリア様の教会にクッキーを……持って行きます……それでは失礼します」

ケイトは配下である大将、女聖騎士メリー・ティアフォにセシルとの約束通り、ホリーとの朝練をさせていた。

「元帥閣下、指示された通りホリーと訓練していますが、あの子は何者なのですか? 戦闘技術はありませんが、腕力、敏捷、体力と、すでに私よりステータスがだいぶ高いのです。彼女と直接戦って指導しようと思いましたら、1ターンで失神KOされかけました。危ないので型からの素振りのみとしたのです。彼女は本当にレベル21戦士なのですか?」

「う~ん、あそこまで彼女が強い意味が私にも分からないわ。ただ、確実に言えるのは、真実の石でレベル判定したら、レベル21戦士だったということよ」

「そうなんですか。化物クラスの強さを持つセシル様のパートナーとなるだけあるという事ですね。私の方がレベル差30ちかく上なのに、模擬戦も危なくて出来ないなんて、私が自信なくなっちゃいますよ」

「あはははははっ、可笑しい! メリーったらホリーちゃんに教えている間、澄ました顔をしていたけど、内心必死だったのね。まっ、そう言わずに明日も頑張ってね」

「はっ! 承知いたしました。ちょっと辛いですが」

朝練の後、ホリーは昨日のうちに作成していたクッキーの入った魔法のカバンを持ち、アマリアの教会に向かった。教会に到着するとたくさんのホームレスであふれかえっていた。アマリアはクッキーの販売で大成功をおさめ、かなりのお金を得ることが出来たので、そのお金の一部を使い、貧しい人々への炊き出しを毎朝の日課としていた。
  
「あっ! ホリーさんだ!」

「本当だ。ホリーさんだ」

「みんな……おはよう」

「「「おはようございます!」」」

教会の子どもたちがホリーに気がついて周囲を囲むと、背中を押してアマリアのところに連れて行った。アマリアは炊き出しでご飯をよそっている最中であった。

「あら、ホリーいらっしゃい。いつも悪いわね」

「いえ……店長の指示ですから……当然です」

「ホリーが作ってくれたクッキーもセシル様の物とは区別がつかないほど美味しいわ。さぁ、炊き出し終わらせちゃいましょう。手伝って頂戴」

「はい……えっ?」

「はい! 次の人どうぞお椀をお出しになってください! 炊き出しは全員分ございますから、焦らないでくださいね!」

炊き出しの受取は2列になっており、アマリアの隣にはホリーがはじめて見る女性が、元気一杯でお椀にご飯をよそっていた。その女性は金髪ベリーロングのウェービーヘアをしていた。目はぱっちりと大きく若干目じりが下がっている可愛い系美少女であった。

「綺麗な人……アマリア様……あの人は?」

「えっ、ああ。ホリーはイングリッド様とは初めて会うのね。このお方はね、イングリッド・イシュタル様といってね。イシュタル公爵家ご令嬢という高貴な立場なのだけど、炊き出しのお手伝いがしたいとよく教会へいらっしゃるの。ここだけではなく、彼女の献身的な国民への奉仕活動のおかげで、旧イシュタル王家の人気は右肩上がりなの。とても気さくな方だから緊張しなくても大丈夫よ」

「そうなのですか……店長がいる時は……会わせないで下さい」

ホリーが若いといっても、セシルが相当な女好きという事は気がついている。今はセシルの6番目の女だが、これ以上順位を下げたくはない。自分の普通レベルである容姿を1番理解しているのはホリーであった。

「そうね。ただでさえ超絶美男子のセシル様だものね。これ以上ホリーのライバルを作りたくないわよね。でも彼女は元王族の公爵令嬢だから心配いらないわよ。セシル様とは身分が全く合わないもの」

「………………………………」

ステュディオス王国の第二王女ナディアが自分を一気に追い越して順位をあげていったのだと言いたかったホリーだが、それは固くセシルから口止めされていたので言う事ができない。

「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。イングリッド様は貴族たちの間で取り合いになるほどの美少女だからね」

「アマリア様……男性が……悲しい顔をしてます」

アマリアがホリーと話しはじめたので、炊き出しの手が止まり、お椀を前に突き出したままの男性が空腹を我慢して立っている。その後ろの者たちも同様だった。

「ああ! ごめんなさいね! うっかり話が長くなってしまったわ。すぐにご飯をよそいますね」

「私も……手伝います」

「ありがとうホリー。それじゃあ、汁物を頼むわね」

その後、炊き出しが全員に行き渡り一段落つき、教会の中で休憩に入る。朝の礼拝も終了し、ゆったりとした空気が流れた。

「妾はイングリッドと申します。よろしくね」

「私は……パーティー名、粉砕のミョルニルのメンバーホリーと言います……よろしくお願いいたします」

「今、粉砕のミョルニル……と言いましたか?」

イングリッドの眉がピクッと動き、目がスッと細くなった。最近、首都フェロニアで流星の如く現れ、Gランクパーティーとしては異常な数々の実績を上げ、上級貴族たちの間でも噂されるようになったパーティーだからだ。先日、四代将軍に任命されたルーファス率いるオーディン傭兵団を救い、懇意であるという。彼女もそのパーティーの事は気になっていた。

「イングリッド様、まだホリーと所属パーティーである粉砕のミョルニルは、冒険者デビューしたばかりですのよ。そこのリーダーのセシル様はデザートの腕前が超一流ですの」

「はい……店長は……凄腕の……パティシエです」

情報通の貴族と違い、情報弱者の一般人アマリアにとって粉砕のミョルニルは、デビューしたばかりの将来有望な若手パーティーの1つ程度にしか認識していない。隠蔽をしていた事もあり、一般的にはセシルの名前は知られてはいない。

「そういえば今日は新作の試食があると言ってたわよね。どんなデザートか楽しみね、ゴクリッ」

魔法のカバンからコーヒーとクッキーをホリーが出した。今日は進化したホリーが開発した自信作のクッキーだった。なんとミアフラウラクッキーである。生地を練る際、濃い目のミアフラウラをジャムのようにして一緒に練り込んだ物だ。日本では当然あるが、ホリーは自力で創造力を働かせて発案した新作クッキーであった。セシルの愛を少しでも自分に向けて欲しい、という執念が実ったのであった。

「ミアフラウラクッキーです……感想をお聞かせ……ください」

「まぁ~、楽しみね。焼き加減はセシル様と変わらないし、少し赤が入っているクッキー本体の色合いが素敵ね。女子向きよ」

「妾も色合いは好みですわ。それに……とても良い香りがするわ。ああ、エリュシオンにでもいるような気分ね。早速いただくとしましょう、我慢できないわ」

エリュシオンとは死後の世界にある楽園のことである。ラティアリア大陸では人間は死ぬとエリュシオンに行くと信仰で信じられている。そこは平和で皆が仲良く暮らしており、衣食住は満ち足りているという理想郷でもある。

『『『ポリッ、ポリッ、ポリッ、ポリッ』』』

「はぁああああ! こ、これは! 美味しすぎるわ! これは凄いわホリー」

「これほどの物は貴族のシェフでも作ることは出来ないわ。ミアフラウラの甘酸っぱい香りがクッキーの中にギュッと詰め込まれた素晴らしい逸品ね! 見た目も今までの薄く平べったい物と違い、クッキー全体が花柄で美的センスも良いわ」

「はい、これなら貴族の晩餐会でもデザートとして、問題なくお出しできますね」

「いえ、それどころか美味しい物に目がない貴族たちから、料理人としてホリーの争奪戦がはじまるわよ。神の奇跡のようなデザートだわ!」

「え? そう……ですか……うふふっ♪」

イングリットとアマリアの尊敬の眼差しに、ホリーは照れくさそうに頬をかいた。自身のオリジナル作品ミアフラウラクッキーが絶賛され、とても嬉しかった。だが称賛される耐性のないホリーは、恥ずかしくてこの場から逃げ出したくなった。

「そ、そそ、それではケイト様の……護衛があるので、これで……失礼します」

「じゃあ、ホリー、明日もお願いね。貴族からクッキーの大口が多数受注したので、クッキーの枚数は多ければ多いほどいいわ。ミアフラウラクッキーは売れそうだから、そっちもたくさん作ってね」

「はい……承知いたしました……ふふっ♪」




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